カレーですよ4995(上野広小路 アトリエデリー)田中社長と源専務の実験室。

土曜日であった、そうだった。うっかりしていたなあ。そして今いるのは上野広小路。

 

 

カレーですよ。

 

 

バスは御徒町を過ぎて上野広小路に辿り着きました。デリーの目の前のバス停。そういう場所にあります。そんな流れできょうはシャーヒーかベンガルを、など珍しい選択肢を考えていたんですが。そこではたと気付いたのよ、今日が土曜日であったこと。

そうか、土曜日かあ。ちょっと覗くだけ覗くかな。そんな気分で広小路のスナック街に入ります。

あれ、席がひとつだけ空いているしゃない!こんなチャンスは滅多にないよ。

 

「アトリエデリー」

 

ご存知デリーの田中社長肝煎りのお店。いや、お店、レストランというよりも都市型フードファクトリー兼デリーのラボという言い方が正しいですね。取材でもお邪魔をして都市部での食品製造の可能性を思い知りました。食事をするにはなかなかハードルが高い気がしています。それというのもレストラン営業が週末、金曜土曜のみでランチタイムのみ。しかも整理券が出て、という狭き扉。なかなかに大変だよ。

 

15時までのはずです15時半、5席のうち4席が埋まり、1席だけ空いています。まるでスポットライトが当たっているように見えたんだよ。それで、ご迷惑承知で恐る恐る「まだいいですか?」と伺うと快諾をいただけてしまった!なんという嬉しさ。すみません。お邪魔します。

メニューは毎週1種のみ予め決まっています。迷うことはないわけです。今週は、

 

「ガーリックチキンビリヤニ」

 

でした。スタイルはワンプレート完結となっていますが、内容はこれ、コース料理に匹敵する量と味の幅があるぞ。すごいんじゃないか、これ。

ガーリックチキンビリヤニにセットでライタとグレービーソースがつきます。グレービーソースが付くビリヤニは日本では意外と少ない気がします。

それに副菜でチキンカバーブ、チキン65、チキンレバーパコラとチキン3兄弟セット。そこにキャベツのサブジとナガイモのアチャールまでついているという盛りだくさんプレート。セットのドリンクもお願いすることにしました。これで1人前2180円。いやこれ大盤振る舞いもいいところだよ。

さてビリヤニ。ドライカレーじゃなくデリーのビリヤニ、です。長粒米を使い、ぱらりとした仕上がりで食感がいいのです。フライドガーリック、ナッツ、にコリアンダーリーフが乗っていて食感の変化が出してあって楽しいね。黒く細長いのはフライドオニオンかしら。少しの甘味と苦味、粘りを感じます。これも良いアクセント。黒胡椒とニンニクでパンチの効いた切れ味のいいビリヤニです。パンチあるものの変にしつこくなく飽きさせないのがゔまいなあ。

グレービーソースもいいんです。いいカレーなんだよ。ビリヤニの調理に使うカレーから流用して作っているので相性の良さは当然としても、強過ぎないさらりとしたもので、これ単独でも十分な存在感がありすね。ライタを混ぜるとますますいい。いいねえ、これ。

それで、ライタをビリヤニにかけてやって味変なわけです。ゆで卵はいらないんじゃないかなあ、などと思いきや。意外に良いリセットアイテム、マイルド化アイテムでね、確かにお皿の端にあって然るべきでおりうれしいやつでありました。

甘みがうれしいキャベツのサブジを合わせてやるのも楽しいし、組み合わせでどんどん味を変化させて自分の舌でベストを探る楽しみというものがあるのです。

なるほど、という言葉が口からこぼれます。

チキンカバーブ、すごい。骨付きのごっついやつが丸ごと1本だよねこれ。しかもすごくおいしい。ぷりぷりとした食感、マリネのパンチ、大きさに腰が引けて持ち帰りとしたんですが、結果ペロリと食べられる軽やかなものだったのです。

チキン65は色々な解釈がある料理です。デリーのこれはシナモンやスターアニス的なオリエンタルな香りがほんのり前に出るのがいい感じ。

レバーパコラ、これは特筆モノ。ものすごく美味しいんですよ。それもそのはず、フォアグラに近づきつつある脂の乗った鶏の白レバーを贅沢にも使用、フリッターに仕立ててあるのです。うやわーこれすごいなあ。レバーの甘みとコクが強く引き出されていてシラフで食べるのがバカみたいに思える味です。ああ、勿体無い。いや、シラフでまず味わって、然るのちビールを用意すべきもの、かな。素晴らしい。

長芋のアチャールもいいな。酸味が程よく効いていて、そら豆hが入るのも気が効いてます。これまたちょいと酒のつまみにでもしたくなるものでね。食事に副菜でつくのにちょうどいい調整ですが、塩であとほんの少しエッヂを立ててやるとウィスキーなどのスピリッツにも合いそうなお味。多分化けます。化けさせたいわ。

取材の時も感じたし、その後の推移もたなか社長のブログなどで追っかけているんですけど、ここは今やデリーの頭脳となっていると感じます。この場所で新しい試みが行われ、多種多様な料理が生まれて週末2日間の営業に供されたり、そのフィードバックでECサイトの製品が生まれたり。重要な場所なのです。

かつて「デリーのカレーはどう作ってもデリーの味」という名言があったのです。いや、わたしが勝手に言っていただけなんですが(スイマセン/笑)デリーで出てくるものはレギュラーメニューじゃないものでも必ずどこかにデリーのクセ、カラーを持って生まれるもので、それがわたしのようなオールドファンを喜ばせるわけです。嬉しいのよね、そういうの。

が、ここアトリエデリーで生まれるのものの中に少しずつそこから脱却するようなものが出てきているのではないか、と感じています。新しいデリーが見える気がします。

静と動。伝統をがっちり守る部分とダイナミックに新しいものを生み出すこと。両輪あっての 2020年代のデリーだと感じています。それを司るキッチンの横で食事ができるこの僥倖。代え難いものがあります。