その日はスタジオで少し用事があったのでさっと済ませて神田岩本町のデジタルキッチンを出ました。そのあと夏カレーの試食にお邪魔をしたんです。
カレーですよ。
金沢カレーのあのお店が主催です。神保町のキッチンスタジオで行われました。暑いので2駅ではありますが、電車移動。
このお店、東京にはたくさんあるわけではないのですが、やはり存在感を感じます。
で、カレー。これがえらく面白かったんですよ。
ぼちぼち夏前の試食会や雑誌などの夏カレー企画の打診などある季節ですが、カレー細胞松さんからメッセージが来ました。おや、チャンカレか!
「チャンピオンカレー」
はご存知の金沢カレー。
北陸、金沢のイメージも強いんですが、長野、新潟、札幌、神戸、京都、愛知一宮、博多など全国展開もしています。都内だと麹町と九段の坂上、靖国神社の向かい、大妻女子大のそばにお店が2店あります。
定期的に期間限定カレーなど出しているそうで、今回夏に向けて「冷やしカレー」を展開することに。お、なるほど、
「冷やしカレー」
か!実はわたし、冷やしカレー否定派なんであります(笑)。熱っつくって辛くってもりもりしたカレーライスが大好きで、まあ、言ってしまえば古臭いわけであります。ところがこの「チャンピオンカレー」の冷やしカレー、驚きの新機軸。事前知識なしでいったら楽しくて仕方がなかったんです。
冷やしカレーは色々な意味でなかなか難しいものだと思います。普通のカレーをただ冷たくすると脂分の問題やキレが悪くなる味わい、香りの広がりが弱くなるなど苦労が多いでしょう。なのでしゃばしゃばの、いわゆるスパイスカレー仕立てにするものが多いです。そのなかにけっこうイケちゃううまいもんもあったりします。でもちょっとカレーライスっぽくないのよね。
そういう中でかなり面白いアプローチをしているのがチャンピオンカレーの冷やしカレーです。
まずね、冷やしカレーのPOPを見て驚いたんです。おいおい、酢飯って書いてあるぞ、、、
酢飯、だよ。カレーに酢飯。うむむ、想像がつかない。まずその酢飯を口に入れます。あ、旨い。酢飯自体の具合が実にいい。おいしいです。すっぱすぎずごはんの甘みを程よく引き立てる上手な調整。ああ、これいいね。単体で美味しい良いものです。
とはいえカレーにどうなのよ。では、とカレーと酢飯を合わせてみます。カレーソースと一緒に食べるとスーッとその存在感を消す酢飯なんですが、たぶんこれ、酢飯の甘みと膨らみが確実にカレーソースを下支えしているんだとおもう。それがわかります。これはこの酢飯でなくてはダメなんだね。ちゃんと理由がある。食べるとそれがよくわかります。
上に飾られるヤングコーンの味が意外と濃く感じるのが面白いな。青ネギ、トマト、共に実によく合うのも良いですね。フレッシュ系の野菜もの、合うね。
冷たいカレーソース、本来ならちょっと躊躇するところなんですが、カレーソースの辛さはちょいと辛めに調整されていて、その辛さでうまくバランスを支えてあるね、と感じます。そこからなのかな「冷たいカレーを食べている」感が薄れる感覚があるのが興味深いんです。
一番驚いたのが「きちんとチャンピオンカレーのいつもの味」になっているところ。冷やしだとレギュラーメニューと同じ食体験にならないことが多いと思うんですが、それを覆す味で驚かされました。大したものですこれ。
いやだってさ、ほかのサラサラ系冷やしカレーならわかるんだけど、チャンカレはチャンカレだからどろっとしてないとダメだしちゃんと金沢カレースタイルに徹しないとダメだから、という意志を感じます。色々聞いたら粘度を上げるためにコーンスターチを使ったりクラシックな洋食のカレーではラードを多用したりしますがそれを控えて他の要素で置き換えたり味をどっしりさせるために(冷たいと奥行きが浅くなるよね)出汁をチューニングしたりとにかく工夫がすごい。
そして、その完成度にも驚いたのですが、これ、お店での手間という話しですけど単純に通常の営業よりごはんの種類が1種増えちゃうわけで、これをオペレーションで吸収しなければならないわけです。これ全部やっての各店展開、すごいことだよねえ。
そうそう、冷やしカレーのPOPにもう一つ書いてあった「山椒」も秀逸。あとがけで用意されるエスビーのミル付きの山椒がね、かなりよく出来。ミルで挽きたて、香りが強く上がってその苦味と共に大変良いアクセントとなるんです。これがあるとないとではかなり体験が違ってくるとおもいます。
聞けばエスビーのミル付きの山椒が一番このカレーに合うという選定になったそうで、冷やしカレーの提供店では必ず同ブランドの同製品で揃えるそう。こだわってるなあ。
そしてもうひとつ。完食して結構な満腹感があったんですが、じつはPOPに「通常のカレーライスよりごはんが少なくなっています」とあるのに気がついたんです。冷たいものでの満腹感、ということで、やはりカラダが、胃袋が、口が、感覚の捉え方が違ってくるんだろうねえ。そこまでのチューニングをしての完結、完成なんだね。
冷たいカレーはコンシューマーが「面白い、珍しい、驚きある食体験を得る」というところでニーズがあると思っていますが、まさにこのカレーライスはそういう部分の要素が今までの冷やしカレーよりも強くあって「わざわざ飲食店に行って食べるきっかけ」を作ってくれる良いアイテムだと思います。
発売は本日7月3日スタート。都内は九段三番町店のみ。
お忘れなきよう。
しかしよくここまで追い詰めたチューニングをやったなあ。やるなあ、チャンカレ。