片側1車線ずつの、細い細い街道走っていました。カントリーサイド、そんな言葉が頭に浮かぶのどかな風景。ぽつりぽつりと倉庫や小規模の工場のようなものがあってそのあいだあいだは原っぱや畑になっています。典型的な、千葉の都市部を抜ければ珍しくない風景。
カレーですよ。
そんな道中のさなか、目に飛び込んできたそのお店は、ちょっとプレハブ風の平屋の箱型でした。派手な看板がどんと出ていてすぐにアジアのどこかの国のレストランだ、とピンときます。
左手には増設した、こちらは明らかにプレハブの小さな小屋があって、そこはどうやらマーケットになっている様子。そんな諸々を一瞬で見てとれる能力がこういうことを20年続けてきて自分の中に醸成されました。いいんだ悪いんだか(笑)
とはいえ「これは!」といい予感を感じるスタイルです。
そんなことを偉そうに言いながら、わたしはちょいと勘違いをしていました。お店の名前は、
「ムファー ハラールフード&レストラン」
ムファーという響きの店名、ハラールを大きく打ち出した店頭は白とグリーンでデザインされていて、てっきりパキスタンレストランだと思って入ったんですよね。ちがった、スリランカンレストランでした。ロッティコッツ(コットゥロティ)、アーバー(エッグホッパー)、ピットゥ、メニューを眺めていて気がつきました。
でね、メニューが面白いんです。興味深いんだよ。
ナーンとバターチキンはやはりここは日本なので必携ですな。ハラール、ムスリムということでビーフカレーなどもあるみたいです。マサラトーセイ、ペッパートーセイ(トーセイ=ドーサイ=ドーサ)などあるとスリランカでもシンハラじゃなくてタミルの人かなあなどいろいろと想像します。
店のおっちゃんとは英語でやりとり。日本語はできないっぽいなあ。とはいえふたりとももう単語、片言の世界で、それで十分なのがこれまた楽しいね。レモンはつけるか、とかチキンとマトンがあるけどどっちにする?とかをお互い手足打ち震わせてやり取りするわけです。ああ、これこれ、こういうのがいい。
ビリヤニじゃなくてちゃんとブリヤニと書いてあったので、
「マトンブリヤニ」
を注文しました。
スリランカではみんなブリヤニって発音してたっけな。
店内、ちょっとよさそげなイスとテーブルが並びます。おや、カーテンルームじゃないの。これはムスリムのお店だね、やっぱり。ここはファミリールームです。女性連れのお客さんは基本このカーテンの中にあるテーブルに案内されるはずです。女性連れの男性、つまりそれは奥さんだろ、ということでファミリールームと呼ばれているわけですが、コアなムスリムの人々のスタイルでレストランなどで女性と家族用、男性用の入り口を別に設ける義務がある国もあるんですよ。それに沿っているというわけだね。
やってきたブリヤニ、うむむ、すごい。わかってはいたんですけどすごい量。すごい量だよ。驚いて2回言ってしまったよ。
そしてえらい旨いんです。マトンは当然骨つきで、じぶんはいま大きな四つ足の生き物を食べてるなあという感覚をくれます。しかし度を超えたケダモノくささなどないのでご安心くだされ。卵も、デカ肉も全てご飯の中に射込まれているんだよね、ビリヤニって。
これはどうにも独特で、日本人ならごはんのうえに自慢の具材食材を上手に並べたりする盛り付けになると思うんですが。けど彼らはとにかくごはんの中にもぐらせるんだよね。おもしろいよなあ。レーズンやナッツなんかも入っていてリッチな感じを受けます。
おそらくラーメンどんぶり級のうつわを型にしたのだと思われます。出てきてひと目見て「この量は無理!」と判断、食べ始める前に素早く半分にしてかえりしなにドギーバッグ(プラパック)をもらって自分で詰め込みました。そのパックしたビリヤニをぶら下げてお店を出ました。
帰り際におっちゃんに日本語で「おいしかった!ごちそうさま!」と伝えると、日本語はできないっぽいおっちゃんの仏頂面だった顔に稲妻のような白いものが走ります。真っ白な歯、だね。にっこりしているんだよ。
いつもどこでもそうなのですが、うまかったよ、ご馳走さん、は日本語で伝えています。なんか、そういうのが一番伝わるんじゃないか、と思っているんですよ。