結局こういうものには勝てないわけですよ。もうね、勝てる気がはじめからしない。なにしろこういうので育った昭和の真ん中世代ですから。
カレーですよ。
千葉香取市の佐原駅南口に昔からある団子と弁当のお店でね、お弁当を買うことにしたんです。
茨城空港のはしっこにあるファントムを眺めながら食べようって思ってね。
このお弁当店、
「松月堂」
が、どうにも心惹かれるいい雰囲気でした。おばちゃんたちやさしいしね。鶏のお弁当がよさそうで、それは買うことにして。で、カレーも発見。こちらはご飯なしのお惣菜を購入したんです。後で食べることにしました。お土産です。
近隣で色々と楽しんで、お弁当は茨城空港/百里基地でファントムを眺めながら食べました。
さて翌日、自宅でカレー。
まあなんというか、たまらぬものでありました。やっぱりね。
ぽったりとした重たい、昔からあるスタイルの、間違いのないニッポンのカレーライス。
そのルウ、言葉としては間違っていますが、そこは専門家でもあるのでかなりこだわりを持って言葉を使うわたしではあるんですが、このカレーに関しては、あえてルウと申し上げたい。そういうカレーです。(せめてもとルーって言わなかったぞ)
そしてこういうタイプのカレーライスの中にも、わたしがカレーばかりを日々長いこと食べてきたから気がつくことができるおもしろさや気づきがありました。
焦げではない苦味みのニュアンス、ふくよかさ、香りなどがいろいろと見えてきます。こういうのって何気なく、一気にガーっと食べちゃうでしょ。たまにはちゃんと口に含んでゆっくり咀嚼して考えてみるのはいいと思う。
渾然一体、一体にならねば完成を見ないのが料理であると思っていますが、それと同時にそうやって一体感を作ってもなお、頭をもたげてくる構成要素の色々、スパイスや肉の旨みや、そういうものが個性になってその表面から少し出っぱってくるわけです。これがもうとてもおもしろい。
そしてそれを一歩引いて俯瞰しながら味わうと、やっぱり抵抗のできない、昔の記憶をそのまま2022年まで持ったままやってきたような美味しさがあるんです。
これはちょっとしたタイムマシーン、カレーのタイムカプセルです。
偉大なり、松月堂のカレーライス。