熱海で食べるカレーライス。浮かぶのは一択、「宝亭」なのであるんですが。が。が。
カレーですよ。
青春18きっぷの旅でありました。自転車もカバンに入れてぶら下げてきました。そんな感じの熱海なんですが、当然坂道の町なのであります。港に降りたらもう2度と駅には戻れない。そう思います。あの坂道は登れないぞ(自転車引っ張って登るのは必須にしても、ね)。
それもそうなんですが電車の接続もあるしね。まだこの先に進みますから。駅前で済ませようと考え、カレーはまあいいか、と思ったんですが。
レトロ喫茶にカレーライスあり、なんであるよ。
「レストラン フルヤ」
その佇まいで入ることを即決定なんであります。入り口の蝋細工の料理見本もたまらないなあ。そのたまらない見本の中にカレーもあったよ。よしよし。まったくよしよしなわけです。
2階含めて全面ガラス張りの店頭に付くパラソル型のテント3張りの連続性の楽しさ。しかもオレンジとベージュというトーンの洒落ていることときたら!
そこに白い陳列ケース、蝋細工のメニュー見本と隙がないといったらありゃあしない。隣のマクドナルドの意匠がバカみたいに見える(失礼)完成度です。いやまったく素晴らしい。
さて、一択の、
「チキンカレー」
を注文しました。
店内を眺めるのもすごく楽しい。
圧巻はなんといっても店内中央に鎮座する螺旋階段!なんなのこれ、どういうこと?ものすごいぞ!素晴らしいぞ!!
席が2階にもあるようでそこに向かう階段が螺旋階段なのであるよ。すんげえなおい。手すりを支える柱は中程からカーブを描いており螺旋階段に独特のファンシーな表情を作り出しています。それに続く2階の床部分(1階天井部分)のカーブと呼応するようなデザイン。天井の青色と壁の白、そこに螺旋階段裏のオレンジ。圧倒的な空間です。いい、すごくいい。
そうやって興奮してると程なくカレーがやってきました。
この時点でもう嬉しくなるんだよ、カレーライス。いや、店頭のサンプルからして、でありましょうか。それはね、お皿にお店の名前が入っていたから。
他のお店の記事でも度々書くのですが、名入れの食器というのは店の矜持だと思います。この場所でこの名前でやるという決意がお皿に店の名前を刻ませるのです。太い客、谷町の寄贈であることもあります。それはそれで、ますます責任が重くなるのです。100円ショップの皿でやってる店とは尻の座りが違うんだよ。引くに引けない勝負ってやつです。
カレー、いいぞ。ちゃんと焙煎の香ばしさ感じる正しいカレーライス。昔のカレーライスです。昔の、といっても2種類あるよね。黄色くて家庭寄りのものともう少し茶色い洋食店的なもの。これは後者。うまい。これでいい。こういうのがいいんだよ。
こういう空気の店でこういうカレーライスが出てきてくれると深い納得が得られます。嬉しさが込み上げます。
うーん、なんというか、いいものがちゃんとあるべき場所にあるという嬉しさ、でしょうか。
いいんだか悪いんだか、モダンになってしまった熱海駅の向かい側に、地域の文化遺産とも言える「レストラン フルヤ」の素敵な佇まい。
うれしいなあ。いいなあ。
変わってほしくないものというのは世の中には確実にあると強く感じます。