カレーですよ5350(レトルト 雪月花)デリーの「ペリペリソース」でパワーアップ。

たまにレトルトパウチの在庫の整理をするのです。しないといけない。とんでもない期限切れとか、大事にしすぎてしまって忘れていたすごいやつとかがひょっこりと出てくる。こわいなあ。

 

 

カレーですよ。

 

 

これはそのどちらにも当てはまるやつ。以前ブログ記事にもしましたが、「文春マルシェ」のご縁で知ったレトルトカレーです。

カレーですよ4744(銀座 雪月花)明らかに高級。明らかに銘柄牛。

「文春マルシェ」の案件でいただいて出会った、すごいものなんだけどね。

残念なことに「文春マルシェ」のサービス終了とともにわたしの連載「美味随筆」の記事も消えてしまったので、ここに再録いたします。

【メディア】文春マルシェの「美味随筆」に寄稿しました。(2本目)

当時の文章を読むとまさにその通り、と頷きながら目の前のカレーを食べている自分がいました。おもしろいな。

 

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カレーの食べ歩きなどしていると、どうあってもハードルが高くなかなか簡単にお目当てのカレーを食べることができないことなど、しばしばある。それというのもただ人気店である、ただ物理的に遠い場所にある、そういうことではない苦労を負わねばならぬ時がある。

公共交通機関が使えずアクセスの方法がごく限られている店、ウルドゥー語やシンハラ語がわからないと注文ができない店、営業日数が極端に少なく、営業時間も非常に短い店、外国人コミュニティーのためにやっており日本人が入れない店、登山を強いられる店。

そんな食べることが困難なカレーの中で、コース料理の最後に出てくる締めとしてのカレーというものがある。実はそういうカレー、「カレーだけ食べたい」というのはナンセンスな場合も多い。それはつまりコース料理の最後に出るからこそ生きてくるというような味のチューニングをほどこされていることがあるから。コースを食べなければやはり本来のパフォーマンスを発揮することができないカレーだ。そんなことを言いながら、でも、どうにもこうにもやはり食べてみたいカレーがあった。

東京銀座の高級焼肉割烹「雪月花 銀座」。料理人自身が競り落としてきた極上の和牛を同じく料理人自身が炭火で焼き上げてくれる。焼肉の「果て」にあるような店なのだ。ここの料理コースの締めにカレーが出るという話を聞いた。確か友人の音楽家で肉マイスターの田辺真太郎くんが言っていた記憶がある。

なかなかハードル、高いのだ。「雪月花カレー」は料理の〆として出しているカレーがあるのだが、それがどうにも評判のようで、はじめは常連客用にと製品にしたのだそう。ありがたくも常連ではないわたしにもチャンスが巡ってきた。

箱を手に取って凝視する。箱の脇にはこんな表記が。「使用銘柄牛 個体識別番号 松坂牛A5」このあとに10桁の個体識別番号が7頭分、表記されていた。試しに(独)家畜改良センター個体識別部のwebで個体識別番号を入力、確認をしてみた。

ひとりの子は黒毛和種、2019年3月7日、宮崎県西都市生まれの雌。出生から松阪牛の里オーシャンファーム への転入から三重県松阪食肉公社でのと畜までの履歴が出てきた。母牛の個体識別番号まで出ている。もうひとりのこは宮崎県児湯郡高鍋町の長谷部牧場からやってきてやはり松阪牛の里オーシャンファームで育ったこだった。

ほかにもロットによって「神戸ビーフ」「松阪牛」「近江牛」などのA5銘柄和牛が使われるようで、なんとも凄まじい。

さて、食べてみなければ始まらない。

一番初めに袋から皿にこぼれるのは美しい琥珀の色の透き通った脂。結構な量が流れ出る。これは間違いなく高品質な牛肉由来のものであろう。スパイスから出る色で染まった脂とは趣が違うのが見るだけでわかる。あきらかに、あきらかに高級。手を尽くした色合いと照りに期待感が大きくなる。

焙煎の果てのタマネギと煮込みの極みにある牛肉が、その二つの結果としてとろけ、融合し、ねっとりとした質感になっている。乱暴にまとめれば高級の極みともいえそうな味、体験。

カレーの強さは色々な要素がある。主に辛さかスパイスの強さかが取り沙汰されるのが多かろう。これはちがう。そういう場所での論争などどこ吹く風のもっと高度の高いところでカレーというよりもシチュー、シチューというよりも肉料理として存在する。これはたまらない。

実はこういう味、食べ進めるとどこかで破綻したりする。そういう経験が多かった。ほんの少しえぐみが出たり、飽きがきたり。それがやってこない。なんという不思議。動かし難い実力を持っていた。

魅惑の時間はわずかなものだ。美味しくて、もったいなくもわずかな時間で食べ切ってしまう。そして後ろ髪引かれつつ食事を終えるのだが、箱にはまだ一袋、これと同じものが入っている。この喜びとそれを隠しておきたい気持ちがないまぜになって、狂おしい。

これはもう「雪月花 銀座」のカウンターに座って焼肉割烹の終わりに待つこのカレーを食べたいという誘惑に屈するのも時間の問題、と楽しい気分になった。

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いやはや、やはりすごいものだったよ。煮込まれ具合と粘度の高さでパンや洋麺類などにもよく絡みそうな感じ。贅沢なことだねえ。

そして贅沢ついでにこの高級カレーに冷蔵庫にストックしている銀座デリーの「ペリペリソース」を追加。辛さと酸味がほどよいペーストで、これがどうにもうまいんです。わりと何に合わせても上手にその料理のポテンシャルを引き出してくれるやつ。おきにいりなんですよ。

ああ、成功。まろやかさと深みの雪月花のカレーが辛さと酸味で進化しました。やっぱりおいしい。