パトワール新宿店でなぜC弁当ばかり買うのか。なぜ夜中に買い行くのか。なぜイートインではないのか。理由があるんです。
カレーですよ。
C弁当、ドライカレーはここだけの味です。ここ、というよりもうカーンさんの味。なんというか、独特なのですよ。いい悪いではなくて他のコックさんが作るとニュアンスが違ってくるんです。もうこれは仕方がない。
ドライカレーの名前なんですが、セミドライというイメージかな。添えられたキャベツスライスとタマネギアチャール、甘いドレッシング。ドライカレーとそれらを合わせて口に含んで初めて完成となる味だと認識しています。クセになるんです。
クセになる味、それ以上にこれをカーンさんに作ってもらうというのが好きなんだよ。決まった手際、大袈裟ではない穏やかな所作、いつも通りの動きで深夜、自分の注文した料理が出来上がってゆく様をすぐそばで見るのはなかなかにいいものなんです。もしかするとそういう部分に安らぎや普遍を求めているのかもしれない。
夏はアイスチャイかラッシー、冬場はチャイ。何度かスープを出してくれたこともあったなあ。注文の品を作るのでちょいとまっててね、と飲み物を振る舞ってくれるあの感じ。とても好きなんです。飲み物をくれてありがとう、ではないんです。気持ちが伝わることに対してのありがとうなんだよ。それだけでもうsyくじが倍美味しくなる、そうおもってます。
そしてC弁当の店内展開は無いんだよな。なので弁当に頼らざるを得ないのです。C弁当は戦略的な価格で人寄せというy所もあると思うんだけど、そればっかり頼むのは申し訳ないなあ、という気持ちも十分あるんです。でもやめられない。おいしいから。その手際が好きだから。カーンさんとわたしだけの時間だから。
ごくたまに、別メニューのイートインでとても幸福感を感じるんだけどね。それもまた好きなんですが、深夜に弁当を買って帰るという行為自体になんとなく面白さを感じているところもあります。
なによりも、パトワール新宿店に深夜、行ったことがあるひとならわかるはず。あの深夜の佇まい。甲州街道沿いの暗く殺伐とした通りにぽつりとあるあの歩道橋の袂に、突然花が咲いたようなオレンジとピンクの光。なんというのかなあ。心を打つ光景という言い方でもいいかもしれない。
カラチやハイダラバードあたりの深夜帯のの雰囲気を知るよしもないわたしでありますが、こういうビジュアルのお店が現地にあってもまったくおかしくないと思うよ。というよりもあるべきだ、と感じさせるんです。
深夜の新宿副都心、その街道沿いの殺伐とした空気の中で、その殺伐さの海に灯台のように灯りを投げているのがここ、
「パトワール新宿店」
であると思っています。パキスタンの客、欧米人、深夜仕事の若い日本人、ごった煮のような客の様々な層をカーンさんが穏やかに捌いてゆき、柔らかい空気が店内に満たされます。
わたしもしばし、弁当ができる間の短い時間、そこに身を置いて心をあたためるんです。