生前、小野員裕さんと話をした時、このシリーズ、小野さんが開発監修を務めた「鳥肌の立つカレー」のチキンカレーが美味しかったよ、と直接伝えたことがあったのです。喜んでくださってたな。
カレーですよ。
小野さんから何度かレトルトカレーが送られてきたことがありました。これ食べて何か書いてよ、ということだよな、と理解。小野さんからも直接「書いてくれると嬉しい」などいわれたこともあり、逆にこっちが嬉しいかったよ。それはつまり小野員裕という人に認めてもらっている証しであり、わたしの気持ちの支えになっていたから。
彼の背中を見ながら、というのは大袈裟かもしれないけど小野員裕という人が前を歩いていてカレーの文章でメシ食ってる。それを側から見ているだけで気持ちの支えになっていました。
それで、件の「鳥肌が立つカレー」のチキンのこと。「あれはもう一度味に手を入れたいんだよね。キーマカレーは完成。旨いよ、あれでいいと思う」というような言葉が小野さんから返ってきました。そんなことを思い出す、盆休み。神戸のMCCが手がける
「小野員裕の鳥肌の立つカレー キーマカレー」
は発売から随分経つんですが依然、製造販売が継続されています。ありがたいことです。
もちろん完成度は高く、きちんと売れているからこその継続であると認識しているのですが、それでも嬉しいものは嬉しい。スーパーマーケットの棚に小野員裕の名前がある、それだけで胸がいっぱいになります。そしてうちに買って帰ってカレーを食べれば胸以上にお腹もいっぱいになるのです。
封を切って盛り付けて。推奨は別皿に盛ってごはんに少しずつかけて食べろと箱にありました。箱の説明書きを読んだんですが、小野さんの声で脳内に聞こえてきたよ。
食べてみるとカルダモンの香りが出たと思ったら引っ込んで、引っ込んだと思ったらまた香る、という体験。大変楽しい仕上がり。口の周りがちょっと熱くなるような辛さもちょうどいいよねえ。旨味と一緒に苦味が少しきて後味に印象を残します。大人っぽい、大変に旨いレトルトカレー。確かにこれはいいもの。爆発的にうまいとかではなく、じわっと記憶に残ってまた食べたくなる感じ。そういうのが小野さんっぽいし大人っぽい。
「鳥肌が立つ」ってのはなんというか、ケレン味というやつだよね。いささかクスリと笑いもこぼれるタイトルなんですが、でもやっぱりこれは本当に旨い。
今年の夏は今のことや先のこと。わりと内向きになっており色々考える感じなんですが、度々「小野さんならどうするかなあ」と考えることがあります。そういう夏。