カレーですよ5612(甲府 武田通り カレーの店 ナイル)体験。

久しぶりとなりました。このまえ来たのはいつだろう。10年ぶりどころではないかもしれないなあ。10年ぶりどころでは、、、ということは。

 

 

カレーですよ。

 

 

人の舌は経験値で作られるものです。わたしも散々カレーを食べて、その周辺も食べて、お仕事でフレンチや本国系中華など色々なジャンルを食べて、とにかく有り難くも経験値を積ませてもらってきました。そういう舌には、たまにでいいので経験を積む前に食べたものをもういちど味あわせてやるのが面白いんです。それがまた積み上げになります。

甲府のレジェンド店、「ナイル」にやってきました。甲府あたりにいる時が比較的多いわたしですが、そんなだから食事の選択肢に入れればいいものを、なんとなく避けていたようです。避けるってのも言い方がおかしいかあ。数回食べて記憶したので次に進もう、と考えたというのが正解だね。

それで今回食べて思ったのが乱暴にざっくりとまとめると、つまり約15年前のわたしの舌では掴みきれていないものがまだまだいろいろあった、ということ。いや、舌の話しではないのかもしれないな。

 

「カレーの店 ナイル」

 

は武田信玄ゆかりの武田神社の門前にあります。たしかあと1〜2年で50年目を迎える甲府きっての老舗カレー専門店。飲食店の50年は客にとっては親子三代、という計算になりましょう。そういうお店が昔からの佇まいをそのままにずっと続いてきているのには訳があるはずです。当然ながら地元からの支持がなければ長くは続かないからね。

店内も味わい深いのです。手作りのメニューボードは実に雰囲気があるなあ。カウンター内の古い食器棚、磨かれたガス周りのフード、カウンターの照明の傘などとても雰囲気があります。長くそこにあるものたちが持ち得る落ち着きと居心地の良さが確実にあると感じます。隅から隅まで愛おしいよ。

 

さあ、カレー。

 

「ナイルカレー 赤」

 

セットをお願いしました。カレーソースは1種のみで赤、白、みどりと選べるのは付け合わせのセットの内容。スタンダードは赤でゆで卵とピクルスがつきます。うむ、それでオーケー。

やってきたカレー、これだよこの感じ。粘り気などいう言葉を使いたくなるほどの高粘度で、カレー粉のハッとするようないい匂いが食欲をぐいっと押してきます。きちんと必要な分、ちゃんと辛くてメリハリあるのがまた魅力的でね。まったくもってこの店の空気雰囲気とこれしかないというくらいぴたりと合っています。

コク、旨みのようなものが濃厚で、カレーライスというものの代表選手になってもらっていいのではないか、など思ってしまいます。

スタンダードですが誰もが膝を打つ「これだよね」感があるねえ。

冒頭に「舌は経験値」など生意気そうに書きましたが、しかし、やはり10数年ぶりで訪れたここでの食体験は素晴らしいものだったんです。味が素晴らしかった、とか解像度が上がって、などいう言い方は意味がないと思う。そういうんじゃないんです。そういう表層的なものじゃない。

あの頃以上に情緒、味以外の入力が大事になっていて、そういうもの含めて受け取れるようになりました。それこそが大事な部分で、もちろん味という要素抜きには意味をなさないわけですが、店の空気、そこまで来る間の道のり、そういうもの全て含めて、だと思います。

もちろん舌の経験値も大切な要素ではあります。多数の経験を積む前に食べて感じたものと今の体験を比べてみるとそれがよくわかるしね。それも大事。でも、その上で。レストランは味だけでできているのではない。それを思い知らされます。そしてその体験はたとえ一緒に行った人が行ったとしても個別個別の感覚、体験になるんです。

会計の時、キャンディーをもらえるのもなんともうれしいんですよ。お店のお二人がにっこり笑って送り出してくれます。ああ、すごくうれしい。

だから、甲府のナイルはこのままで1000年続いてほしいのです。