
ベトナムはわりと麺カルチャーの国だと認識しているのでです。あくまで本国に行ったことがない日本人の感想なわだけどね。
カレーですよ。
それでついつい無意識のうちに避けてしまいがち。なぜかというと麺と揚げ物がメインになるっぽくて煮込み料理があまりない気がしてしまうから。そう、煮込み料理とはつまりカレーです(笑)


とはいえベトナムには黄色いカレーがあるのだよね。日本でベトナム料理店に入ると割と高確率でメニューにあります。最近では昔は見かけなかったバインミーもメニューに載ることが多くなった様子。本来バインミーはストリートフードであまりレストランでは出さないんじゃないかな、と思っていたんですが、昨今のバインミーの小ブームでそんなふうになったと考えているのです。

さて,ここは京成八幡駅。わたしは都営新宿線本八幡駅からの乗り換えでたまに使います。そのひらけていない側の駅前、というより線路沿いの細い道。電車から何回かインド料理とベトナム料理店の看板を見かけていました。時間がある今日、チャンスがやってきたよ。しかも本日カレー不毛の月曜日(カレー店の定休日が集中するのだよ)でありますがやっているようです。ちょうど昼時、よし、途中下車だな。立ち寄ってみることにしましょう。

そんな流れでわりと確かめもせずにベトナム料理店の
「サンフラワー」
に入ったというわけです。うん、ベトナム料理、カレーがメニューになくとも旨いものは他にいくらでもあるからね。全然オーケー。が、やっぱりカレーを見つけてしまうわたしでありました。ランチメニューを見てああ〜カレーないなあと思いきや、グランドメニューの方に
「ベトナムカレーセット」
があったよ。

なんの迷いもなくそれを注文。ランチメニューよりちょいと高くつくのですがそんなもん誤差の範囲といってよいぞ。カレー優先ですから。それで腰を落ち着けると気が付きました。店内、ベビーカーが3台もいます。おお〜赤ちゃん連れのお母さんが3人もいるじゃない。へえ、赤ちゃんに優しいお店かあ。いいじゃない、印象がいいぞ。

お店のマダムが一人で回しているようす。料理を仕上げて厨房からホールに配膳に出てきた時に必ずあかちゃん席に寄ってお母さんたちとおしゃべりをしていきます。うーん、なんかいい。とてもいい。気分が柔らかくなるよね。赤ちゃんたちもご機嫌のようです。わたしもです。あとから来るお客さんたちも全員女性だなあ。月曜日はレディスデイか?男子禁制に間違えて入り込んだか?の感。そんなことはないのだけどね。
さて、カレーです。

出てきたカレーは。あら、黄色くない。へえ、イメージするベトナミーズスタイルカレーと印象が違います。これは楽しみになってきたよ。
どうやらこれはココナッツミルク仕立てではないようです。本国ベトナムのカレー事情は良くわからないのですが、日本のベトナム料理店においては珍しいのではないかしら。カレーの大きな器とどんぶりサイズごはんに春巻きという構成です。シンプルで質実剛健だな。よし!(指差し確認)。

カレーはチキンカレーという体で、ぶつ切りの大きなチキンがざぶんざぶんとたくさん入っていて期待をそそります。そこにネギ。白ネギがぱらりと来るんだよ。いや、どっさりめかこりゃ。カレーに白ネギ?と思うわけですがこれがめっぽう良く合うのであるよ。いやあ,これはいいな。
チキン、こりゃうまい。こういうのを食べたかった、という絶妙な煮込み具合でね。柔らかでふっくらした食感にまいりました。ははあ、これだけでこの料理の価値が倍になるなあ。

カレーソース、というよりシチューという風情なんでありますが、これがまたなかなかに珍しく実においしい。ちょっと欧風を思わせるんですが食べ進むとピンとくる。これ、中華咖喱的なものだ、そういう味だ、ね。旨い旨いこりゃあ旨い。中華的旨みと欧風仕立ての家庭風を行ったり来たりさせられるこの楽しさよ。ちょっとこれはたまらないなあ。

カレーの量は多いです。いや本当に。大皿にたっぷりもいいところ。そうなんだけど優しい味で後を引くからぺろりと進んでしまうのですよ。
あっ!春巻き、これ生春巻きだ。揚げじゃないのか。ありゃー。大きめハーフサイズというか小ぶりのフルサイズというか、全力ですよこれ。しかもちゃんと旨いの。皮がきちんとしっとりぷりりしており挽肉、エビまでしっかり入ってなんかすみません、こんなにしてもらって、みたいな気分になります。


ナッツを散らしてヌクマムを使った甘酢がまた上出来でねえ。あまりにおいしいタレ・お汁だもんでそっとスプーンですくってカレーにかけました。ああ、ますます旨あじブーストが高まった。


テーブルにあった調味料も良かったなあ。唐辛子を酢で漬けたものでした。これかなりご機嫌。辛いんだけどクセになるたまらないやつです。
飲み物もついてきます。なんかお得だなあ、これもすごく良かったの。ジュースとコーヒー、どちらにする?とマダムに聞かれてなんにも考えずにコーヒーを選んだんですが。出てきたのはアイスのベトナムコーヒー。いやこれ当たり!正解。

これも大変な美味しさなのであるぞ。濃くて甘くてなんとなくココアなどのニュアンスも少しあって。そこに焼き栗的香ばしさが重なるというね。食後までしっかりと堪らぬ幸せがやってくるのです。
料理、隅々まで手を抜かない仕事を感じました。いい。真面目で素晴らしい。

最近は何もかも値上げの嵐の中、外食も同じくの様相を呈しています。そういうなかで、この味、この価格というのは上々だし、こういうきちんと腕ある理由ある調理がなされたものを出してもらえると「外食、絞ってちゃダメだ。価値ある仕事をしているレストランにはちゃんと行かねばいけない」と沸るものがこみあげます。頭がシャンとしてくる。そのために稼がねばね。

ちょいと尻を叩かれた気分です。明日もメシを食べに外へ出よう。
