
ちょっと期待をして行ったインドレストラン。年末に入り用があって佃煮を買いに出かけたついでに立ち寄ったのです。
カレーですよ。
どちらのお店にも鳥越のおかず横丁にあります。「入舟や水上商店」は佃煮を中心に煮物、惣菜などを扱うお店。昔から続く大釜炊き上げのうまい佃煮を買うことができる貴重なお店なのです。いつでも「わたしの大事なお店リスト」の上位にあります。

それで、ちょこちょこと買いに出るんですが、商店街にはインド料理店もあったりします。「サクラダイニング」という名のごちゃっとした店構えのところで「そのうち縁があれば寄るかなあ」、程度に思っていました。そこと別に持ち帰り専門のちょいとハードル高いインド料理店も近隣にあるらしいんだよね。そちらも行ってみたい。そこはちょっと期待しています。
それで、今回そことは別に「これは!」と思えるお店を見つけたんです。見つけたのはGoogleマップの上。

鳥越界隈、佃煮買いに行くんだけど楽してクルマでいくかあ、駐車場はどこにあるかなあ、など思いながらGoogleマップを眺めていました。「入舟や水上商店」と駐車場の位置関係を見ていると、見かけないインドレストランの名前に気がつきました。「入舟や」の至近です。そうか、おかず横丁から1本入るから気がつかずにいたか。その名前、
「マサラバイツ」
といいます。ほおほお、「マサラをもぐもぐ」、か。いいじゃんいいじゃん。いい感じ。店名がいまっぽくモダンを感じて好きな感じです。それで見るともなく口コミを見て引き込まれたんですが、なんのことはない。その口コミ、田嶋章博さんではないか。あはは!

ライター仲間でわたしとおなじくカレーライターを名乗ってみたり猛烈にダールバートを推して「東京ダールバートMAP」なるものを展開したりの信頼できる男です。彼の文章では「西インドのリアルなベジタリアン料理をヒンドゥ寺院脇で出していた鳥越・シュリージが、2/15「マサラバイツ」として蔵前で実店舗化!」とのこと。オーケー。担保が取れました。これで疑うことなく出かけていけるな。佃煮とセットでランチに向かったよ。

モダンなレストランです。センスのいい店内外。白い壁、濃いめのブラウンの柱風の塗り分けはシックでモダン。頭上の屋号は間接照明的に裏からネオンサインふうに光るかっこいいやつがついており、悪目立ちせずしかし目線を集めるセンス良さ。うーん、こりゃあカッコいいねえ。インドレストランと気付かずにカフェ所望の女子が入ってきそう。店内もいいですね。けっこう奥行きがある広いホールには余裕のある席間の距離。快適そう。ベタなインドレストランなんかよりインテリアや控えめのデコレーションに洗練があります。


メニューも楽しいんだこれが。
スナック類があるのは特筆。ダヒプリ、ベルプリ、ダヒバラにパウバジ、カチョリにティッキチョレーと大いに充実。これは楽しいよなあ。選び放題だなあ。ご飯類もビリヤニ、プラオ、ジーラライスにレモンライスとまたまた選び放題。ドーサ、イドゥリ、ワダもありました。カレーは言わずもがなでセレクト、チョイスにセンスが光るもの。こりゃすごいな。

パン類も充実。ナーン、パラタ、ローティ、ジャイナスタイルのクルチャなぞ間違いなく頼んでみたいものです。ペリペリクルチャ、なんてのがあって面白い。デリーの瓶詰めのペリペリソースは愛用しているんですが他のお店でペリペリソースの名前を聞いたのは初めて。スウィーツはアイスクリームでバリエーションを作っていて工夫が見られます。バタースコッチとかカスタードアップルとか気を引いてくるメニューが多いなあ。シュリカンドやラスマライの名前も。
うむうむ、メニュー眺めてるだけで興奮してしまったよ。まずは、とランチセットのスタンダードなものを頼んでみることにします。
「set 2」
というやつ。
カレーを2種とサラダ、小ごはん、ナーンかローティ、パパドという内容です。

サラダがとても興味深かったんですよ。ぱっと見コールスローなんです。
東京のインドレストランでよくあるのがキャベツ刻みに謎ドレッシング(オレンジのニンジンドレッシングのことだ)。続いてスタンダードな葉物野菜と少々のお店もあるよね。ここは面白いの。おっつけでよくあるサラダにしていません。手間をかけてあるんです。

「カチュンバル」というインディアンスタイルサラダがあります。きゅうり、玉ねぎ、トマトなどが使われチャットマサラという硫黄系の匂いのするスパイスミックスパウダーであえてレモンやライムがかけてあることが多い、インドらしさのあるサラダ。カットは大きめの賽の目で、冷凍のミックスベジタブルとかもう少し大きいか、くらいのサイズ感。

そんな「カチュンバル」をキャベツ、ニンジン、きゅうり、玉ねぎに置き換えてコールスローサイズに細かく刻んで調味はカチュンバル的にして、再構築。ざっくりいうとカチュンバルをみじんにしてコールスローとの間に着地させた感じ、かな。これは面白いしセンスがあるってもんです。モダンというのはこういうことではないかしら。いや、コック氏のセンスとチャレンジに敬服しました。たいしたものです。


ダールはダールフライかな。香ばしさが前に出る手応えある味です。何度も繰り返し言っているんですが、インド料理の楽しい部分、驚くべき部分ってのは「肉なんぞいらない」というところ。スパイス、調理法、食感などの色々な要素によりベジオンリーでも驚くべき満足感が得られるのです。インド亜大陸周辺に散らばる豆の煮込み料理は本当に奥が深いものです。

バターチキンはお決まりの甘いやつではなく酸っぱさが前に出るチューニングで好感が持てるなあ、、、じゃないぞ。うっかりそんなこと言っちゃってますが、違うってば。だってここ、ベジレストランだから。具材にチキンじゃなくてフライドポテトかなこれは、じゃがいもが入っていました。トマトグレイヴィにじゃがいもです。

チキンが入るより好きかもしれない、、、ではない。もういっかい「ではない!」です。ここはベジタリアンレストランだってば。鶏がでるわけないじゃない。そりゃあそうだ。そして満足感が強い深い味わい。これが植物由来の材料で構築されているわけですよ。圧巻です。

大変な満足感を感じました。これで会計が1100円、恐れ入ったぞ。いろいろ書きましたがベジタリアン、ヴィーガンの人はインド料理に助けられている人が多いのではないか、なぞ想像してます。外食でベジオンリーを選ぶのが困難なシーンは多いと感じますが、そんな時にこういうお店を覚えておくときっと楽しい外食になるでしょう。

外に出て隣の建物を見ると。おや、ここは、、寺院かしら。ヒンドゥ教の教会があります。一見、小洒落た民家に見えるんですが看板が出ており、そこに「Om Satnam Sakhi (オム・サットナム・サキー)」とマントラが書かれています。なるほどなるほど。
この場所にもコミュニティがあって、そのハブたり得るレストランと寺院があるということ。だから店内はインド人家族ばかりが何組もいたのだろうねえ。大いに納得です。

それはつまり、間違えのないインドの食事ができるということ。また来ないとね。グランドメニューからも頼んでみたいです。
