
道の駅「山北」にいたのです。この道の駅にはたまにやってくるんですよ。
国道246号線、お馴染みの青山通りです。国連大学とか青学のイメージでしょうか。あれがどこにどういうふうにつながっているか、意識する人は多くないみたいですね。実は246、皇居のお濠端、三宅坂交差点を起点として青山から渋谷、駒沢、二子玉川で多摩川を渡り、溝の口。そこから大きく端折って海老名で相模川を通過、伊勢原、御殿場を越えて沼津まで続いています。クルマを使わない都内在住の人は驚く人も多いみたいですね。
カレーですよ。
246なのに山んなか!みたいな場所もあるわけです。秦野の郊外などちょっとした山道のような場所も。御殿場線と並行して走る山北界隈もかなりの「山んなか」感。その山北には道の駅があります。

道の駅「山北」は小さな道の駅。駐車場もそれほど多くなく、たまに国道沿いで見かける「ロードパーク」に近いサイズ感のかわいらしい道の駅です。246から外れて川沿いを入っていくと突然巨大建造物の建設現場が目に飛び込みます。巨大な橋の建設現場、これが見応えたっぷりでね。その工事の進捗具合をたまに見に来たりするんです。道の駅「山北」からよく見えます。橋といっても本当にスケール感が狂うようなサイズで山間の谷部分をかなり高い位置で橋が跨いでいます。すごいんだこれが。

何年も観察をしていますが、右と左から伸びてきて真ん中で繋がったくらいのタイミングでも見ています。あの橋には最近になって名前もついたようです。名前は「山北天空大橋」。うなずける名前だと思う。なんでも、日本最大級のバランスドアーチタイプの大型橋らしいです。新東名の一部になるそうですよ。
そんな建設中の橋を眺めたり、手洗いを使わせてもらったりしているうちに、もういい時間。夕食のカレーを考えなければいけない時間です。山北はその名の如く、山の中。それもあって、簡単にカレーというわけにはいかないわけです。さて、どうするか。とりあえず、近くの町に出ようかな。

一番近いのが御殿場(ごてんば)ということになります。ちょいとリサーチに間が空いているんですが、御殿場はどうもカレーの良店がない印象を持ってしまっているんです。とはいえ御殿場まずは御殿場に出なくっちゃな。駅前に蒸気機関車置いてあるよね。
相変わらずどんな地方都市の小さな町でもインドレストランだけは豊富に見つかるんだけどね。そういうなかにきらりと光るいい店も多々あります。しかしそれで済ますわけにはいかないのよ。インドレストランもまったくもって結構なんですが、その町に何代にも渡って根付き、町と歩んだ歴史を持つような老舗のレストランはないものか。そこにカレーライスがないものか。最近はいつもそんな感じです。

こういう時は洋食店を探すといいんですよ。洋食のレストランはそんな条件に合うお店も多いしね。昭和の時代を引っ張っていたりして快適なんです。雰囲気のあるお店など見つかることがけっこうあります。地方で積極的にそういうものを探すというのもなかなか楽しいもんですよ。案の定、今言っていたようなお店が見つかりました。
「洋食喫茶 カツイチ」
という名前。

名前の印象だけで「とんかつ店なんだろうか?」と思ったんですが、そうではないみたい。よし、ここに行ってみよう。カレーがありそうだもんね。お店にたどり着くと、割と新しめの、綺麗でこじゃれた外見でした。店頭のメニューを見ると、案の定カレーライスを発見。よしよし、これで今夜は助かったよ。

メニューのラインナップがまた良いのであるよ。カレーライス、ナポリタン、ミートソースにピザ(ピッツァではけっしてない)、ピラフなど。なるほど「洋食喫茶」なのだなあ。そこから、
「エビフライカレー」
と洒落込みました。サラダも追加。
エビフライ、わたしとしては珍しいチョイスなんであるよ。これが大当たりを引いたのであります。

カレー、期待以上のものがやって来たよ。うむ、セパレートでやって来たね。
クラシックなソースポットに入ったカレーソースは見るからに濃厚。レードルですくいあげるとぽったりとした粘度高め、いや、粘度高めというよりも半固形と言ってしまってもよさそうなすごいのがやってきました。ははあ、これはこれは。カレーソースには具材が入らず溶けかかったタマネギがちらりと見てとれます。期待が高まります。


そうそう、それとね、うれしさ込み上げる「揚げ物セパレート」。正確にはカレーソースセパレートなんですが結果としてが揚げ物にカレーをかけるかけないをお客がコントロールすることができるわけです。ありがたいなあ。わたしはカツカレーなどでもじゃぶじゃぶとカツにカレーソースをかけてしまうのをよしとしない男。もったいないと感じちゃうんです。


だってさ、せっかくパリリと仕上がったカツが可哀想ではないですか。そう思ってしまうのよ。それと、よくばりなわたしはたとえばカツライスとカレーライスを両方食べたいから。カツカレーだけではイヤなんであるぞ。
そんなこんなでありがたい盛り付け。そしてエビフライが期待を越えてきました。うわあ、太くてしっかりした重厚感感じさせるエビフライだよ。カットされて「ほら、ちゃんとしてるだろ」と言わんばかりの見た目。よしよし、これは間違いがなさそうだな。

さてカレー。ひと口含むとこれが素晴らしいんですよ。正しき高級洋食の味。バターの香りが強く上がり、食欲を奮い立たせてきます。もったりとしたカレーソースは小麦粉とカレー粉を炒めるクラシックな調理の果ての良いもの。あまく、深く、厚い旨みの層が舌をくすぐってきます。ああ〜これはたまらないぞ。ボンディを筆頭とするあのタイプの欧風カレーと庶民の味方の洋食屋のカレーライスの中間に立つ味わい、とでもいいましょうか。こんなの好きに決まってるわよ。
そしてこれ、高粘度であるが故、カレーソースの位置と量、自在なのであるよ。どこにどういうふうにかけても自分の思い通りにカレーソースがぴたりと止まるんです。かけすぎてあらぬ方向に流れたりしないんだよ。だからエビフライと美しく共生できるのです、ひとつの皿の上で。うむう、なんとありたいことか。色々すごいカレーだなあ。

エビフライ、見た目通りに素晴らしいです。しっかりとしたエビの味、ぶるんとした食感、衣のきめ細かさ。こりゃあまったく美味しい、素晴らしいやつだなあ。もちろんカレーとセパレートでソースをかけて食べます。エビフライライスももちろんやるです。ああ、エクスタシー。

最後にもしやと思ってエビフライをカレーソースに浸してみれば、なんたる良マッチング。そうかあ、いけるのかあ、いけるんだな。素晴らしいな。ちゃんと「エビフライカレー」として完成されているなあ。まったくまいった。

至福の時間はあっというま。少し落ち着いてメニューを眺めると、こんな一文が。
>>
洋食喫茶カツイチが出来る前、この土地には「レストラン酸茶かついち」がありました。
先々代が、昭和23年に氷要を、そして昭和50年に「レストラン喫茶かついち」を開店いたしました。
父が丁寧に時間と手間をかけて仕込んだものに、母のひと手間加えた仕上げ調理によって、オリジナルの味が作り出されました。
お客様に喜んでいただく為に、長年試行錯誤を重ね、手作りにこだわった先代夫婦の味を、この度「洋食喫茶カツイチ」
として、より身近に感じていただける形でリニューアルいたしました。
<<

なるほどなるほど。それで少し他も調べてみたら、創業1975年、氷屋さんが兼業でやってた喫茶店「レストラン喫茶かついち」というのが先代のお店の名前だそう。インスタグラムを見たら素敵な旧店舗の写真を見ることができました。市の道路拡張計画により2021年に閉業。そののち敷地規模を小さくして「洋食喫茶カツイチ」としてリニューアルオープン。なるほどなあ。

氷の卸売で取引先に米軍基地があったそう。その関係でアメリカンスタイルの専用窓口を作ってハンバーガーとピザのテイクアウト販売などもやっていたそうです。新しい店舗でもそのヘリテイジを受け継いでロードスルースタイルのテイクアウトコーナーが入り口ドア脇に設えてあります。いいなあ、そういうの。

お店の方に満面の笑顔で美味しかった旨を伝えました。女性お二人のキッチンと厨房。お二人とも感じが良かったなあ。心から、他のメニューも食べたくなった旨を伝えてお店を出ました。
偶然出会ったお店でとてもよい食事が出てくると、ちょっと得した気分になるよね。
