
神田紺屋町で地下カレーとくればあそこです。うれしいことにわたしのヘッドクォーターから10分ほどでたどり着くんだよね。
カレーですよ。
地上に扉と看板があって、扉を開けるとすぐに階段があります。くれぐれも注意しないと階下に落下するぞ。同僚と喋ったりよそ見をしたりせずに気をつけて階段を降りられたし。いや本当に。

カウンターだけのお店で店内、本当に1970年あたりで時間が止まっているんですよ。そういう場所を上から俯瞰しつつ階段を降りるのがこのお店の最大の見せ場といってもいいでしょう。すごいんだよ、本当にすごい。

大阪万博(こんにちは〜こんにちは〜の方)帰りにふと立ち寄った店がここでもまったく違和感がないと思う。「傷だらけの天使」とか「Gメン’75」とかに出て来ても全然おかしくない。カウンターでメンズビギの白スーツのショーケンがカレー食ってても驚かないぞ。いやほんとに。そんな、
「インデラ」
会計は先会計です。
あいだが空くとすぐに忘れちゃうんだよね。壁面にしっかりと「代金前払いでお願いします」と大きく出ているのにさ。いかんいかん。

さて、メニューは2種のみ。「カレー」と「ハード」です。あとそれぞれに普通盛りと大盛り。「ハード」は通称で辛口カレーのこと。お客たちは「ハードください」という連中ばかりですね。わたしはきょうはスタンダードメニューの、
「カレー」
にしました。カレーはそうかからずにやってきます。前払いのことを思い出してカウンターに1000円札を置いたよ。さて、カレーの時間。


カレーの時間、と書いたわけですが、まずは小鉢が集まってくるんです。おびただしい種類の箸休め、副菜がカウンターにずらりと並び、お客のそばにマダムがそれらを寄せてくれるんだよね。通常10種は必ずあると思う。福神漬け、らっきょうなど定番はもちろん、紅生姜、たくわん、青かっぱにたまり漬けなどの漬物類。搾菜もあります。大好きなのはこんにゃくの煮物。これが甘くてピリ辛でね、どうにも旨い、止まらない。

カレーはシンプルに陶器の白いオーバル皿に盛り付けられます。ごはんもしっかりと量があっていいねえ。シンプルですがなにしろ付け合わせが多いのでけっきょく華やかな感じになるよね。ただもう、うれしいわけです。
カレーソースは黒く、粘度高く、苦味が強いもの。焙煎とコゲの狭間にある立ち位置で、個人的に思っているのがその味の根底に神田神保町の共栄堂などと通ずるものも感じさせます。これを「焦げっぽい」とかいう輩は残念、経験が足りないんじゃないかな。こういう仕上がりのカレーをどう楽しむかの知恵や積み重ねが試されるんです。

甘さが足りなければ福神漬けやこんにゃくにの煮物、キレが欲しければ紅しょうが、と自分で即興的にチューニングを施してスプーンを運ぶのです。これができてここでは一人前。お店の価値、味の価値は変わらないんです。あなたの価値と経験値が問われるということ。心して取り掛かるといいと思う。

かえりしな、マダムと少しおしゃべりをしました。この日はかなり耳の調子が悪くてね、でもおしゃべりしたかった。去年の55周年記念で頂いたノベルティの爪切りのお礼を伝えると「次は60周年記念でね。」とおっしゃる。まったく素晴らしいし、期待をしてしまうよねえ。

記念品を期待しているのではないよ。60年目を迎えるクラシックな味がその時代にどういう形で受け入れられているのか。それを知りたいし、そこを期待をしてしまうんです。

未来永劫、この場所がこのままでありますように。
