小野員裕さんから「ちょっとこれ、食べてみない?」というお話をいただいて送っていただいたレトルトカレーがあるんですが。まあこれがなかなかにとんでもない代物でね。
カレーですよ。
前情報が少なくなぜ話題にならないのかなあ、と思っていたんですよ。なにしろ破壊力抜群のキーワードを持っているんです。
それは値段。まずはやはりこの値段が話題になるだろうねえ。だってさ、16,200円だよ。この
「GREAT塊CURRY」
と言う名前のこれ。
おいおいちょっと。宮崎都城の高価格レトルトカレーもありましたが、いい悪いはさておき「高いレトルトカレー」というのがジャンル化するんじゃないだろうかという兆しを感じます。
下世話な話になるけどお値段高いともうそれだけで圧倒されるよねえ。
ストーリーを知りたくて色々調べたんですが追っかけきれなかったのです。情報、少ないな。
どうやら目取眞興明さんというレトルトカレー研究家の方がCAMPFIREというクラウドファンディングプラットフォームを使って開発販売したレトルトカレー。「カレーで世界を救うプロジェクト第1弾」というのがあって豆腐屋さんから廃棄されるおからを使ったカレーを作るためのクラウドファンディングで、成功をしたそうです。その第二弾となるのかな。
食べてみたが、なるほど確かにすごかった。
とにかくお肉を推しているカレーで、レトルトパウチのパックがまずは大きいんだよ。このヒートパックは業務用以外ではなかなかお目にかかれないサイズです。むかし、焼鳥やいてたころ確か3リットルだか4リットルのヒートパックの業務用レトルトカレーを扱っていたけどあの手応えを思い出すなあ。
まず温めで往生するわけです。
いつものフライパンに湯を沸かしていてはこの大きなレトルトパウチのパックがはいらないんですよ。だもんで深鍋だな。ル・クルーゼの鍋に移し替えて、じっくりと温めます。説明書き等がなくて、どれくらい加熱すればいいのかわからなかったんですが、沸騰12分というところかなあ。そうしてみました。
なにしろ中身のお肉も内容量も大きいので基準がない(笑)小さくてもいいから何か説明が気があれば良かったねえ。リーフレットに1枚も入ってなかったのよ。高級品なのに。
さて、次はお肉が出しづらい(笑)
まあこれはなんというか、楽しい苦労です。レトルトパウチのパックの底にドスンと鎮座する「武蔵野Z豚」の500gのかたまり。いつも通りに袋を斜めにして滑り入れれば絶対にカレーソースの方が先に皿に落ちて、そのカレーの池に500gの肉塊がダイブすれば大惨事まちがいなし。
トングが見つからないので菜箸を使ってなんとかお肉を皿に着地させました。それでも被害は出たよ(笑)机、カレーまみれだな。わたしの場合は珍しくはないので大丈夫(笑)
そのうえでカレーソースを注ぎ、それで、まだ余る。すごい余る。
お肉、まずは脂身がうまい。ああ〜これは脂身をすすりたくなる旨さ。実際すすれるくらいの柔らかさで、ぷるとろになっています。このすごいお肉をカレーに仕立ててあるわけですが、カレーソースは肉を殺さないよい味の調整がなされているのに感心しました。
しかしお肉、なんだこの断面は。肉の断面、いや、違う。これは地層だな。違うの、馳走ではないの。いや、御馳走なんだけどね、これは堆積層です。地層です。地層じゃんこれ。物凄いなこれは。写真を撮ってるんですが、料理の写真を撮っている感がだんだん薄れてきて海沿いの断崖を望遠レンズで撮っている気持ちになってくるんです、ほんとうに。
これはもう、なんというか千葉の館山あたりにいる気分というか、分野が違ってきているぞ。地理とか地形とか趣味の人になってしまった気分です。なんだこりゃ(笑)
お肉、旨味強く、繊維が美しくばらけておりさすがの品質。
これはうまいなあ。ひとりで食べるのはもったいない味だねえ。
カレーソースはとにかく豚の旨味出過ぎで本体の豚肉ブロック大丈夫か、と心配になるレベル。全部流れ出てないよな、と不安になりながらどでかい豚肉に噛み付くとその濃厚な、カレーソースの旨味を軽々超える旨さが口中で大爆発。なんだこれは。なんだこれすごいな。
フォークとナイフを用意しましたが全然必要ないくらい繊維がほぐれていました。スプーンで押せばそれで済みます。
カレーソースの味の方向は、ずっとルーツを辿ってゆけば喫茶店カレーの味の決め方に近似点を感じました。塩味で決めるあれ。が、武蔵野Z豚500g、旨味の迫力と厚みによってそんなものと比較してはいけないと危険信号が頭に灯るような、なんというのかなになにと似ているとかなになにの方向性とかいう評論をはねつけ、少し離れた場所で静かに佇んでいるような、そういうカレーソースと肉なのです。凄みってもんがある。
この手のアイテムは値段や材料単価などで目がくらみ、ついつい余計なことをしがちなんですが(色々みてる/笑)このカレーソースはそういうガチャガチャしたことをやらずにスーッとよいバランスに決めているのが好感をもてますね。
あまりにすごいので、悪いことを考え始めるのですよ。ここを起点としてこの肉やソースを素材として別の料理に作り替えられるのではないかなあ。できそうだねえ。
なぜそんなことを思ったかというと、カレーソースがうまいし迫力があるのですが、おかしなギミックを伴う味にしていないわけで。極々自然な感じで味の調整をしてあり、塩のエッヂをガチッと決めてあります。そういう自然体の味付けが上手に作用してよいものになっているので、その素直さを逆手に取ってみたくなるんです。素材にできるんじゃないかなあとか。
そういう挑戦心も喚起してくれます。まあ、とんでもない量だからだけど。
野菜、ヨーグルト、追加のおかわりご飯など、リセットアイテムは必須でしょう。いいお肉なので脂は体に楽なんですが、それでもいかんせん、全体量がちょっとおかしいくらいに多いので、ぜひさっぱりとする副菜を用意するといいですよ。味変に粒マスタードを用意したが効果的でありました。
というか、ひとりで食べるものではないよこれは。ハレの日やパーティーなどでメインディッシュとしてセンターに出して、みんなで取り分けて食べるなど良さそうです。きっと盛り上がるよ。
惜しむらくはコンセプトに「もったいない」や「カレーを購入することで、より多くの方に知ってもらい、美味しい武蔵野z豚の生産量が向上されます。」と言うキーワードが入っているのに、一次産業の生産者さんの声などが入っていないこと。顔が見えてこないこと。これはダメだよ。食品業界もレストラン業界もモノを売る時代からコトを売る時代にシフトしてもう久しいことは皆さんも感じているでしょう。値段の面白さををマーケティングに使うのは未だアリではありますが、それと相い対する製品への想いや誰のためになるのかと言う部分が弱いのが「もったいない」。そういうリーフレットが1枚箱の中に入るだけで価値が変わってくると思うんですよ。(カラーコピーのペライチじゃダメ。逆に価値を毀損します。きちんとした文章ときちんとした品質の紙と印刷のものが必須)
あと、細かい部分ですがパッケージのデザインや造作にも工夫が欲しかった。
16,200円という価格に見合わないというか、どこかチープさを感じてしまうんです。カレー自体は美味しいんですよ。いいものでしょう。ただ、レトルトパウチに1枚ラベルを貼るだけで、箱の掛け紙の質感をもう1段アップするだけで、すごく価値観が変わると思う。S&Bさんが数年前に出した美しい紙箱パッケージの缶入りカレーとシチューのセットなんか見るとわかりやすいと思います。世界観を作るということですよね。この製品に引きずり込まれるような価値観。
クラウドファンディングが終わりましたが、その後これをいま買えるのかどうか、どこで買えるのかなどの情報も必要でしょう。(まだ販売在庫があればですけれど)インフルエンサーなんかではないわたしではありますが、仕事柄一次情報がないとそれを使って次に伝えるということがむずかしくなります。そういうのも含めて頑張ってほしいと感じました。
カレーは美味しかった。世界観の構築とブレのない目的、強く打ち出すといいんじゃないでしょうか。
次回を期待しています。