先日、とある料理教室のお手伝いの役を賜って東陽町に出かけて行った。行き先は薬局。一体全体どういうことか。
カレーですよ。
少し前からお手伝いをすることとなり、板橋、ときわ台のアトリエチャチャという素敵なハウススタジオでインド家庭料理の料理教室に数回おじゃましている。
先生は東新宿のサンラサー店主、有澤まりこ先生。有澤先生は武蔵境のキッチンスタジオペイズリーでインストラクターのお仕事もされている腕の持ち主。料理教室を開催すればあっという間に席が埋まる。
そんな先生なのだが今回初の試みとして開催スペースがなんと薬局なのだ。東陽町にある、
**「三木青雲堂薬局」 **
実は少し前から地元の友人に聞いている薬局で、なんでも壁面にインド食器が展示されており、購入もできると言う。
なんのことやらわからずいたが、行ってみればなるほどの素敵なスペース。
モダンでクリーンな店内。コンクリート打ちっぱなしのスタイリッシュな雰囲気の中にワークショップスペースが設けられている。大きなガラスの窓がとってあり光がたくさん入る開放的なスペース。外からもよく見えてカッコいい。
ダクトや水回り含めたモダンなキッチン設備と自在にポジションを変えられるオリジナルの椅子、テーブルがセンスいい。
シンク側の壁にはインド製のステンレス棚が取り付けてあり銀色に輝くターリが縦に収納され、照明や壁の雰囲気からインドの少しお金持ちの現代風なキッチンを思わせる。
別の壁の棚には結構なボリュームのインド食器が飾られ、販売もされる。これらはご存知アジアハンターの息がかかるもの。小林社長の著書も抜かりなく販売されていた。
薬局にワークショップスペースというだけでもかなり尖っていると感じるが、その上壁面にインド食器棚、そして奥にはアジアハンター食器コーナーという面白さ。ここは一体どうなってるんだろう、と思わず呟いてしまう。
どうやらこちらの薬剤師の一ノ瀬さんが趣味人らしい。もちろんインド料理の教室を開くためだけのものではなく、それ以外のワークショップを考えていらっしゃるようだ。
10名ほどの生徒さんが集まり、料理教室の開始。デモンストレーションがメインとなる教室となったが、が有澤先生が上手に生徒さんを引き込んでいって一体感が出るという見事なお教室。はじめは固かった生徒さんたちも半ばですでにリラックスしており、所々で小さな歓声など上がるようになってくる。完成、手は食べましょうの有澤先生の声に生徒さんが拍手を送る。
帰り際、皆さんの表情を見ると生徒さん全員がきちんと満足している顔が窺えて、大変に感心。なるほどプロの仕事であった。
さてわたしも役得の試食。
今回のメニューは「カブとチキンのカレー」、「カリフラワーのサブジ」、「クミンライス」のレクチャー。
ほかに「簡単玉ねぎのアチャール」、「ダール(豆のカレー)」のデモンストレーションも。ほかにサプライズで「菜葉(アレッタ)の炒め」と東新宿のサンラサーで出している「芽キャベツアチャール」を有澤先生が持参、ターリに盛り付けるときに添えてくれるというもの。
さあ、どんなものだろう。
カブとチキンのカレー
トマトとタマネギの味が素直に出た良い味。インド家庭料理の基本のキ、のようなスタイルでアレンジメントも自在にできそうな使い出よいレシピ。これはいい。辛さもきちんと必要分乗せてあり、この強さがおそらく「習いに行って覚えたもの」という印象を強くするのに効いてくるだろう。
ダール
豆本来の香りがグッと上がる、優しいのに豆のパフォーマンス感じさせるよい味。辛さ要素はなく、それが他の料理と混ぜたり食べ合わせたりするバランスの中で生きてくる。この面白さもこの日皆さんが持って帰るものの中で大切になってくる要素のはずだ。ポタージュ的な感覚があった。
カリフラワーのサブジ
これまたシンプルなカリフラワーの味を引き出すためのスパイス使いという感残る、よい蒸し煮料理。わたしもこれは好みで大変おいしい。カリフラワー単体でおいしい、おもしろい、はインド料理ならではだろう。
タマネギアチャール
うまい。これは好きな味。定番のあれであるが、赤色少なめで生姜を入れるというアレンジ、これがとても好み。アジャンタ、デリーなどの例のやつとははまた違う世界がある。これは今回のレクチャーに入っていなかったが生徒さんが熱心に作り方を聞いていた。
芽キャベツアチャール
酸っぱめに決めて、芽キャベツ自体の苦味とバランスさせている。思うより強くなく、これ単体でも美味しく食べられる。他の料理とのバランスと対比はとても楽しい。これは東新宿のサンラサーで食べられるもの。ただし定番ではないので注意。
菜葉(アレッタ)の炒め
マスタードシードの香ばしさが幸せを連れてくる仕上がり。ほろりとくずれる火加減で、食感や印象はブロッコリーに似るのがとてもおもしろい。食べると1本なのにけっこうボリュームが出て、なおかつ緑の差し色になって、ターリの上でよい要素となる。使った菜葉はアレッタ。出来立てが大変おいしい。
それぞれ色々と混ぜながら食べるのだが、意外や辛さ強かったカブとチキンのカレーをダールの穏やか味が助けてくれてバランスする楽しさ。タマネギアチャールでもう一度汗をかかされて、アレッタの蒸し煮でまたホッと一息。変化をつけて食べ進めるのがとても楽しい。
試食をして10人の生徒さんの満足の理由がよく理解できた。これを自宅で作れるようになるのは嬉しいことだろう。
それにもまして今回ステージとなった東西線東陽町駅そばの「三木青雲堂薬局」がすごかった。このすごいスペースはちょっと見過ごすわけにはいかない。インド食器がいつでも購入できるという点だけでも価値がある。
次回の開催を望む声がすでに聞こえてきているそうだ。
なるほど、さもありなん。