ちょいと前にお邪魔をして雷に打たれたくらいにシビレた店が千葉鴨川の江見吉浦にあります。
太平洋の波打ちつける外房、海岸線にたたずむお店。
カレーですよ。
例によって仕事の撮影等の案件関係で房総方面にやってきていました。
仕事を終えて、少し車で走って月と海を眺めて。
ちょうど満月の夜で、大きめのうねりのある海は月の光で波頭が輝いて、寄せては返す波においでおいでをされているような気分になって妖しい気持ちになってきます。
そしてこのお店、海、目の前で180度パノラマですごいロケーションなわけですが、そんなことはさておきと言いたくなるようなカレーが待っているんです。
店の名を、
「ライバック」
といいます。
国道128号線沿い、ちょうど海を見下ろす崖の上といった場所にあります。
店内でちょっと窓の方に背伸びをすれば太平洋が見えるんじゃないかしら。前回も今回も夜来たのでお店の窓から海は見ていません。
お店に入るとすぐに黄色いタンクのハーレーデヴィッドスンが置いてあります。モデルはなんだったっけな。リアホイールがディスクのローライダータイプ。ハーレーデヴィッドスンはどうもよく知らないのよね。
カウンター席について気取らない手書きのメニュー表を端から順に見ていきます。
少々迷ったんですが、前回食事をした時にご店主が内臓の下処理を丁寧にしていたのを思い出して、
「ハチノスカレー」
を頼んでみました。
前回同様、まずサラダとスープが出てきます。これがね、とてもいいものなんです。シンプルなのですがどちらもえらくおいしいんです。
スープはミネストローネ。洒落ているしすごくいいんだよ。サラダも木訥に見えてきちんとドレッシングも自家製で拘りがあるのがわかります。いいねえ。
カレーもきました。
やはり前回同様ひと舐めすると衝撃が走ります。うーん、素晴らしいカレーソースだ。
甘くしない欧風の仕立てで手がかけられているのが一瞬で理解できるもの。タマネギ焙煎の素晴らしさが伝わってきます。おかしなでこぼこのないバランスあるスパイス使いにも驚かされます。カレーと呼ぶにははばかられるよこれは。
これはね、レストラン料理の「ソース」なのでありましょう。辛く、香り高く、奥行き深い味。
見逃してはいけない大事なところはお皿の上に「ごはんにかけられている」のではなく「皿に敷いてある」というところ。
それはつまり西洋料理のソースの使い方、お作法ということです。
カレーソースに具材は一切なし。カレーをソースとして考える西洋料理的立ち位置からのアプローチが垣間見えますね。そして滑らかなのに溶け込んだ素材の粒子感が感じられるのも心地よい。手の掛かった艶やかな滑らかさにうっとりさせられます。ああ、すごい。
ハチノス、丁寧な下処理がなされてイヤなクセは取り除いてあるのですが、内臓が持つワイルドなテイストはちゃんと残してある。それがうれしいです。食感良く、その食感とリンクするキノコを合わせてあるのも小気味よいねえ。
ひと皿での満足感が大変に大きい素晴らしいカレーです。
実はこのお店のシェフ、ホテルニューオータニに40年もいらっしゃった方なのだそうです。だから、ああなる。だからあんなふうに感じる。なるほどなあ。それが1000円札1枚で釣りが来てしまう。そりゃまずいよ。あんな値段で出してはいけないよ。尊いなあ。
なかなか頻繁に、とは言い難い距離なんですがそのうちまた寄って、笑い話としてわたしもニューオータニの展望レストランのブッフェメニューを一品監修したことがあるんですよ、なんて軽口を叩いてみたいです。きっと笑ってくれるでしょう。
この晩はわたしが食べ終わったタイミングでお客さんが入ったのでおしゃべりができませんでした。
早くまたいきたいな。