やはりこの店は特別だ。帰りのクルマの中で、味や、ウルミラさんの顔を思い出しながらしみじみそう思います。特別の味と体験が待っているんです。
カレーですよ。
この日再び強く確信したのがそれでした。ランチのメニューを食べただけなのに、確信してしまうんだよね。いつもそう。
小岩、フラワーロードの奥に昔からあるこのネパールレストランは間違いなく特別です。
「サンサール」
は、店主のウルミラさんが手を止めないかぎり、ずっと日本のネパール料理のトップランナーのままだと、そう感じています。
ちょうど良い時間にクルマで通りかかり、ランチにおじゃますることにしました。あいにくの雨ですがサンサールの向かい側にコインパーキングがあるんだよね。フラワーロード商店街、アーケードだしね。
ウルミラさん、久しぶりだなあ。マスクをちょっとずらして挨拶すると目を見開いてにっこりしてくれました。「雨の中わざわざありがとうございます」と嬉しそうにしてくれます。こちらも嬉しくなります。
「ネパールランチセット」
をホールの男性にお願いしました。
そのあとすぐにウルミラさんがやってきて「何か食べたい料理はありますか?」と気遣ってくれます。いえいえ、ごく普通にランチのダールパートでいいんですよ、と笑い返します。ところがやっぱり「ちょっといいもの」が出てきてしまうのだよ。困っちゃうなあ。嬉しいなあ。
ウルミラさんはちょっと色っぽいな、と昔から思うんです。なんというのかなあ、人懐こくてちょっと気を引かれてしまうところがあるんです。昔からずっと、魅力的な人だなあと思っています。
さて、まずはネパールランチセット。実質ダールパートですね。
この日のメインはたまねぎを真ん中に丸ごと据えた愛嬌のあるカレー。豆や野菜がたくさんの種類で入っています。
これは楽しいし、とてもおいしいんです。味の様々なミックスで食べ進むごとに変化が出てとても楽しいと感じさせてくれます。
タルカリなんか、ちょっと西洋料理のニュアンスまで感じる洗練があるすごいものでした。
単調な味にしないで途中途中で変化が出る面白さをちゃんと意図として入れてきてあるんですよ。そして変化の落差のチューニングが上手いんだね、これは。
まったくもって圧倒されるなあ。
どの料理もしゃんとしたいい料理なのです。手がかかっていてちゃんと味見をしていると感じます。
いつものやつをいつも通り、じゃないんだよ。そういうふうに真面目さを感じさせる料理たちです。
トマトのアツァールなど、とてもいいんです。ちょっと硬質な感覚を覚えるおもしろいスパイス使い。それとこれはこれはミントからかな、清涼感が追加されています。味変なんていう軽々しい言葉で言いたくない面白さと奥行きがあります。
アルタマ
サービスで出してくださったのがこれ。ウルミラさんのアルタマ、特徴あるのに優しい味です。発酵筍のクセがちゃんと残るのにイヤミにならないこのバランスはすごいものだなあ。
乱暴に作ってないことが窺えます。
しかしなんでこういう味になるのだろう。筍、なかなか手強い味で難しいはずなのだけどなあ。
気になって聞いてみると、これ、筍を発酵させたものを乾燥したもの。それをもどして使うのです。ああ、つまりそれはあれだよ。グンドゥルックの筍版なわけだね。なるほどなるほど、そりゃあ面白い。あの強いクセが可憐な個性に変容しているんです。これはすごいなあ。おもしろいなあ。
後頭部がピクピクするような刺激をもらえて脳みそが喜んでいます。面白い食べ物の知識はいくら提示されてもお腹いっぱいになりません。
食堂ではなくレストランとして長くやってきている経験と矜持。そこから醸し出される風格さえ感じさせる味の方向やチョイス。ネパール料理を食べるのではなく、サンサールの、ウルミラさんの料理を食べる。そういうことなのだと気がつかされます。
たとえばわたしがカトマンドゥに住んでいたとしても、彼の地から小岩のこのテーブルの上に乗る料理の味を恋しく思うはずです。そういう味が、サンザールにはあります。
奥の席の壁にかかる絵がとても気になったんですよね。ちょっと気がついていなかった。キルトを作っているのだろうか、刺繍をしているのであろうか。男性と女性が布を手に何かしている絵でした。
絵の前の席にはお客さんがいたので、こんど、もう少し良く見に来よう。
ごちそうさまでした、ウルミラさん。
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