ある日、ポストに晋遊舎さんから届け物が入っていました。はて、晋遊舎さんとはお仕事はしていなかったよなあ。したいけど。
それで、封を切ると、出てきたのはレシピ本。おや、これは。齊藤絵理ちゃんの本じゃないですか。
タイトルは
「魯珈のスパイスカレー本」
シンプルな名前にしたなあ、と思いました。
最近ではお茶の間のみなさんもご存知だという彼女の名前。ご存知大久保「魯珈」の店主です。「情熱大陸に出たあの、、」というと思い出す人も多いのではないでしょうか。
ちょっと懐かしく思い出したことがありました。旭屋出版で、最終的にはわたしは降りた仕事があったのです。レシピ本の取材等の仕事でした。その顛末は色々あったのですが、その中で齋藤店主にお願いをして叶わなかったことがありました。それがレシピの提供。
「わたしはまだまだそれができる準備ができていないのです。それと独立の前にお世話になったお店のレシピが関わるものもあるからそのまま右左、というわけにはいかないのです。」
と彼女は言っていました。仁義を知る生真面目な人なのです。
それはとても大切なことで、そういうものを大事にせず修行先から破門、などいう事例も別の場所でいくつも聞いています。お客には関係がないことかもしれません。しかし仁義を欠いては渡世は成りません。商売とはそういうものだと思います。
そしてこのレシピブックが刊行されたということは、そういう部分を大切にしながらついに彼女は次のステージへ進んだのだということなのでしょう。それがとても嬉しかったんです。
週替わりメニューである「限定メニュー」が「魯珈」に通う楽しみであることは皆さんもご存知だと思います。この本の中に5年間で200種ほどの限定メニューが生まれたという記述がありました。それこそが「魯珈」の、齊藤シェフの価値であり原動力であり、それが多分彼女の中でなにかまとまった手応えとなっての本書の出版につながったのであるまいか、そう想像しています。
写真がきれいでね。どのカットもちょっと露出抑え気味でコントラスト強めでカッコいい。かっこいい、というのは齊藤シェフのイメージと重なるところがあって良い感じにチューニングが成された価値ある本に仕上がったのではないでしょうか。
ちっとも店に足を運ばない行列嫌いのわたしですけれど、齋藤店主が何をやっているのかがちょっと見えるような本で、なんだか楽しい気持ちになりました。
そうだ、並ぶのが苦手なわたしに「お弁当という手があります」というサジェストをもらっていたのだったよ。たまには行かねばいけません。
あの味はレシピ本が出ようと誰かが真似ようと、あのキッチンの奥からしか出てこない唯一無二のものだからね。