中華屋。中華料理屋のカレーライスが好きです。なんの変哲もない地方の中華食堂で食べる、なんの変哲もないカレーライス。ところがこれがどうにも心とからだが欲しがるヤツなんだよ。
カレーですよ。
地方に行くと中華料理屋に入ること、多いです。定食屋や中華料理店に行って、本当は回鍋肉定食とかニラレバ炒めとかを食べたいのにカレーがあるとついついそっちを我慢してカレーライスを注文してしまうんだよね。それで当たりを引いちゃったりするんだよ。
桃を買い出しにやってきた山梨、勝沼、塩山界隈。ブツはたっぷりと確保できたので、さて昼飯にでもするかとクルマを走らせます。東京暮らしの人には物珍しいかもしれない、地方都市のロードサイドにはよくあるスタイルなんですが、数軒の飲食店やその他の商店が集まったアパートのような、雑居ビル、ではなく長屋的な建物をよく見かけます。そんな建物の奥まった場所にあったここ、
「桃光」
桃を買いに来て「桃光」という名の店でメシを食う。そういうのちょっといいなと思って入ってみることに決めました。
案の定カレーライスが壁の短冊に書いてあるぞ。よしよし。他のメニューを見ると迷いが出るので素早く
「カレーライス」
ください、と注文をしました。
地元の年寄りがぼんやりテレビを見ていたりぼそぼそしゃべったりしているのんびりした空気。トイレに行くと花火の工場のカレンダーが貼ってあったり、なんだか田舎に来たなあ、という気分で心地がいいです。
さて、カレーの時間だよ。
久しぶりに食べるこういうヤツ。ぺっとぺとで、でろでろで、サイコーなヤツ。へたをすればコップにスプーンが入って出てきそうだったけどそれはなかったよ。水は先に出てきて、真っ当。でもあれも好きなんだよね。
そしてこのカレーがうまいんだ。たまんないんだ。熱くて熱くてちっとも食べられないのもいい。食べ始めてもちっとも減らないのもいい。量が多いんだよ。
食べていると炒め物の鍋をガチャガチャやる音と香ばしい匂いがやってきます。やっぱりレバニラにすればよかったかなあ、と後悔したりもします。そしてスプーンを口に運ぶとやっぱりカレーライスでよかったなあ、と心から思うんです。
すごいものではないんだけど、逃れられない何かを持っているこの味。ひと目みただけでちょいとうんざりする感じの昔のカレーライス。そう言いながら結局食べるとすごく好きなのを思い知らされるんです、こういう奴は。
カレーラーメンがメニューにあり、むしろこのカレーはそちらに合うのでは、と思いながら手も口も止まらなくなっている自分がいます。
そしてお馴染み、中華屋ならどんなメニューにも必ずついてくる中華スープのふくよかさ。特に難しくもすごくもない、そこが愛おしい中華そばの汁。これがつくのがたまらない。ああ、たまらないなあ。
最後まで相反する気持ちを行ったり来たりしながらたっぷりと楽しませてもらいました。
カレーライスというもののど真ん中にあるモニュメントのようなひと皿、そう感じました。
なんというか、偉大なものだなあと感じたよ。
山梨、塩山で偉大なカレーライスに出会いました。