懐かしいカレーチェーンが後楽園駅ビルの地下にあって、驚いたんです。
運営が昔と違ってしまっているのも味が別のものになってしまったことも分かっていますけど、やはり入ってしまう。
カレーですよ。
後楽園、ドームシティにいました。なんとなく、なんですが。用事も特にあるわけでもないし。
でも街歩きはわたしにとって重要な定期ミッションです。歩かないと見えないものがいっぱいあります。本当に、街を歩く度に思い知らされます。
テナントビルの中、エスカレーター脇の洒落たスペースでスパイスとカレーの展示のような催しをやっていました。
知ってて行ったんじゃなくて、たまたまね。
小綺麗でいまっぽくて、什器を見たり誰が監修してるのか考えたりちょっと面白かったな。
2フロアに分けての展示でした。
それで、移動しようと丸の内線の後楽園駅に向かいます。地上駅でテナントビル、駅ビルがあるんだよね、この駅。地下鉄駅では珍しいです。
そこで発見、
「カレーの王様」
なんとも懐かしい。もちろん迷わず入ることにします。
小さな小さなカウンターだけの店で6〜7人くらいでいっぱいのその店は、あの店でした。
チェーンが小さくなり、S&Bの運営ではなくなって。それでも市ヶ谷の店にはあの王様のキャラクターがながらくあったよな。いまは看板に王様、いなんだねえ。
「カレーの王様」
は思い出の店です。
焼き鳥屋さん時代の初めの頃、まだアルバイトでお試しでやっていた頃です。そのアルバイトの経験が面白くて流れで社員の登用されて。そんな頃。大手町の古いビルの地階にある焼き鳥屋さんの向かいにカレーの王様があって、随分通いました。
そしてここは2022年の後楽園駅。現代のカレーの王様の券売機にうれしい
「復刻版王様カレー」
の表記を見つけました。それはもう迷わずそのボタンを選ぶよね。
小鍋調理を経て出てきたカレーがこれ。
そうそう、肉団子が入っているんだった、王様カレー。出てくるまでそれも忘れていました。食べてみると肉団子のシッカリ感が当時のくんにゃりした肉団子をかえって思い出させてくれます。こんなに揚げていなかったし粒ももっと小さかった記憶があります。
カレー自体の味というよりあの頃の思い出の方が強くて、今となっては正確に「こうであった」というのはわたしの舌にはないのです。
が、それでいい。あの頃、大手町の地下の王様カレーには味よりも「カレーを食べた。だからこの後も頑張れる」というモチベーションを吸い込みに行っていたのです。だからこれでいい。
思い出というものはなかなかに厄介なもので、いまここにあるものを捻じ曲げて感じさせたりしてきます。そういうものをなんとか突破しようと頑張るんですが、なかなかそのフィルターを外すことは難しい。だから、感じたままを感じる。それでいいのではないかと思うのです。
同じ皿のメシを食っていても味はそれぞれの舌と頭の中だけにあります。
あなたとわたしの「おいしい」は似ているけど別物なのです。