松屋ホールディングスがあの名前のカレーを出してきたんです。たしか去年もやっていたよね。マイカリー食堂での展開です。「マイカリー食堂の」カシミールカレーです。
カレーですよ。
去年も食べたんで、メモを見返し。去年のわたしの感想は「デリーからではなくロイヤルホストを源流としてやってきたもの」というのがありました。
今年の感想はそれとはまた違っててね。これは黒くて酸っぱくてちょいと辛いがカシミールカレーではない。何か大切なニュアンスがないと感じたのが結論。
「マイカリー食堂」
のこのカレー自体、カレーとしてはなかなか悪くないと思うんですよ。辛さがちょっと良くない意地悪さがある程度で、全体としては悪くない範囲にあります。
気がついたのは、たぶん香りだな。あの香りのニュアンスがまったくないんです。ロイヤルホストのカシミールカレーにはデリーのカシミールカレーの香りのニュアンスがちゃんと残してあって感心します。その上でロイヤルホストチューニングが施されていて唸らされます。
「カシミールは辛さ」皆さんそう思っているらしいけど、それは違うのです。あの香りがあるからこそ強い辛さが生きてくるし、カシミールカレーという個性になるのだから。香りなんですよ、大事なの。
松屋ホールディングスのリリースだったかな、ほかのニュースサイトだったか。なにか違和感を感じる表記を読みました。
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「カシミールカレー」の黒さはイカ墨とカラメル。様々な食材の旨味を感じられる、辛口のカレーで、後引く味がたまりません。
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え、イカ墨、、これはもう成り立ちが全く違うものらしい。名前だけがカシミールカレー、本質カシミールカレーではないものなのかもしれない。ええ〜、、、
なにかが崩れてしまったようです。
きっとはじめは「自分たちのカシミールカレーを作ろう」とはじまったはず。カレーにはこだわる松屋フーズのことですから。しかし「黒くてサラサラで強く辛い」というところだけがピックアップされ、残念、本末転倒的に着地してしまったのではないのかな。本来なら辛さと同じかそれ以上に大切にしなければいけないのは香りのはず。だって、カレーなんだからね。
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刺激的な辛さの中にもやみつきになる旨味を感じる、黒くてサラサラの“ごはんに合う”カレー
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「ごはんに合う」が松屋の最大のテーマであることはほかの料理のニンニクの使用量でみなさんもご存じのところ。ごはんに合う、というよりごはんを大量に食べさせる、のほうがしっくりくるでしょう。
ごはんに合う、はとても大事だがそちらに寄せすぎたのかもしれないね。サラサラという表記もあるけれど、カシミールという名前の元では粘度は比較的高いと思うよ。これも「ごはんに合う」の解釈からだと思われます。でもさ、本家のものはあんなにちゃんとごはんに絡む。あんなにサラサラなのに。
今回選んだのは
「彩り野菜のカシミールカレー」
黒いカレーソースなわけですが、せっかくの彩り良い野菜が真っ黒になってちょっと台無しだなあ。特にナスはもうなんだかわからなくてちょっとこれこわい。ほうれん草も見た目がまったくもって良くないです。カボチャの甘味はこの味にかなり合うね。これはとても良かった。
オペレーションを少し調整、カレーソースをかけた上にあと乗せするだけで済むはずで、ここは改善ができるのではないかしら。
いつもの松屋フーズの福神漬け、これはやはりちょっと必要ないと感じました。うまいしいいものなんですがカレーの種類によって合う合わないは確実にあるよね。ただつければいいというものではないのです。すまないけどほんというに珍しく残しました。
この日はタマネギのピクルスがカウンターになかったのもなあ。残念に思っていると厨房のコールドテーブルの上に置いてあります。とても残念。補充だったのか、それとも食べすぎる客がいたので引き上げたか。どうやら浅草橋南店とは相性が悪いみたい。相性ってのはやっぱりついて回ると思っています。前も深夜に通信不良でキャッシュレス決済使えなかったりなんかあるんだよなあ。
そしてマイカリー食堂、毎度なかなか悪くないものを出してきてくれてありがたいのですし、信頼も置いてるんですけど「カシミール」という看板の意味と本質を捉えられなかった感があるね、今回は。もったいないなあ。
簡単なマーケティングであれば「トータルの数字で考えれば全国区でブランドを多く持つ我が社には微々たること」と片付けられます。しかし松屋フーズは市場でカレーの評価が高い。評価をしているのはマジョリティかもしれないけれど声の大きい人たち。その下にたくさんの潜在的なファンがいます。カレーに関わる「声の大きな客」が評価している。その声どこから発せられたかを忘れてはいけないと思うんです。
その名前、カシミールでなければ、など思いました。あれはね、ジャンルではないの。デリーという店のオリジナルなの。それを毀損してはいけないよ。