いろいろと要素があって、どこから話そうか、という感じなんですが、聞きしに勝るというのは本当だったなあ。
カレーですよ。
横浜福富町にある美しいカレーを出しているあのお店、あそこはなかなかに手強い。そう思っていました。
人気店でみなさんから噂を聞いています。それで知るイメージは、先ずはInstagramのあの美しい写真。真上からの写真は皆さん真似をしてひとまわり、落ち着いたという感があるんですが、こと丸祇羅についてはアレをやらずに居れない!という気持ちはとてもよくわかります。とにかく美しさが段違いなので。
その店は
「Spice Curry 丸祇羅」
といいます。
そしてその美しいひと皿を実際に目にするには皆さんこれも話題にする「外観のこわさ、入りにくさ」を乗り越えねばならぬのです(笑)たしかにいまも昔も福富町、なかなかの剛の者闊歩するメンズタウンであるわけです。が、それは夜の話しなわけで。昼間は閑散として静かなものなのですよ。
ビルの前に目立たず看板が立てかけてあります。階段は薄暗く、3階までストレートに続いていますが見る人が見るとやっぱりこわい2階にあるステッカーとフライヤーだらけのドア。バーなのかライブハウスなのか。そこを通り抜けて。
で、そういう感じを通りぬけて扉を開けた時の落差がいいんですこれが醍醐味と言えるもの。店内、オリジナリティ高いセンスで意図強くインテリアを作り込んであります。雰囲気、ある。いい。
丁寧なその日のメニューのインストラクションを受けて注文を決定します。わたしは
「本日の丸祇羅」
にエビカレーを追加、ベンガル式マッシュポテトもつけてみました。
さて、やってきた薄くて大きなターリの上の美しい盛り付けに気を許してはいけないのです。
その美しいパーツパーツはどれもひとつづつ、厳然としてインドやスリランカの遺伝子を持ち、リアルな味と香りを放っています。現地スタイルを踏襲、ガッチリとスパイシーながら洗練も感じさせ、なかなかに感銘深い味なのです。
メインはメティフィッシュカリー。これ、いくらでもいつまででも食べられるふくよかでいいお味。きちんとスパイシーなのですが舌への当たりがやわらかい。魚、ふわりとしていて不思議な食感で、頭が「おや?ホントにさかな?」なんで信号を返してきておもしろい。フルーツチャトニとヨーグルトかな、そんな感じのものが落としてあってこれを混ぜると実に、幸せ。おいしいです。
面積狭いけど強い主張があるフェンネルキーマは旨味強いジャパニーズそぼろといった風情。これはどうにも旨い。好みです。つまみ的な力強いパンチを感じますし、そういう感じでお弁当の数にも良さそうな。他の穏やか系カレーと混ぜると良いアクセントとなりました。和の食卓でも違和感ないでしょう。
パリップは上品薄味。本当に儚い感じの味付けでスリランカ、こういうのあるよなあ、なぞ懐かしんだり。これも混ぜてその実力を発揮するバイプレイヤー。
エビカリーはちょっとこれ、ベリースペシャルなものでした。トマトクリームソースないしアメリケーヌソース的で特旨と言っていい超御馳走。いや〜おいしい。
カレーというよりもエビ料理な感じです。カレーの一言で済ませちゃうのは勿体無い。エビが「なぜ器にこの小さなカトリを使った?」と思わせるくらい大きなもので驚かされます。良い具合にローストの焦げ目がついていたのでよし!と頭から噛みついてみました。うわあ、パリパリと香ばしく、ちゃんとエビの旨みと幸せが強くあり、思わず無言で貪り食べます。これ、サイコーです。
うーん、価値があるひと皿でありました。
印象としてちょっとしたコースを食したなあ、という感が残りました。すごいなこれ。
それというのも食べ進めるほどに、変化や深さが大きくあってその振れ幅も楽しいとても良い食事であったから。ちょっとこれ素晴らしいぞ。それとね、お店の名前に「Spice Curry」とありましたが、きちんとインド料理屋スリランカ料理の素養があってこそ「Spice Curry」の名前をサラリと冠に持ってこられるんだな、ということ。
スパイスカレーという呼び名は未だ喧々囂々で、正解が見えない。その中でスパイスの効能や理由というものの側に立った正しい使い方をせずに適当をやってしまっている店もあります。それと混同されてしまうからスパイスカレーを否定する流れも当然出てくるなあ、そう感じています。
「Spice Curry 丸祇羅」はちゃんと正しい側にあるひと皿なのだと、食べればすぐにわかります。
いつも思うのですが、こういう食事は「カレーを食べた」ということとは違う体験だ、ということ。カレーで片付けちゃダメです。
例によってそっと食べてスーッと帰ろうと思ってたんですけど、帰り際にお店の小野瀬さんに見つかって捕獲されました。うはは、照れくさい。
楽しかったなあ。また食べに来たいです。