とにかく色々とえらいことであったのですよ。本当にえらいこっちゃです。ことの発端はもう2年以上前のこと。
カレーですよ。
2020年2月「カレーは日本を救う」というテーマで開催された「カレーの街よこすか20周年シンポジウム」。ブログにも以前書きました。
ヴェルクよこすかでのシンポジウムは大勢の方々が集まってくださり、大きな反響があったと聞いています。発足前でしたが現在「日本カレー協議会」に参画する横須賀、武蔵小杉、神田、下北沢、柏のカレーで地域おこしを旨とする団体の代表が集まってのセッション。わたしはファシリテーターとして皆さんの意見を引き出す役割をいただきました。そもそも「日本カレー協議会」発足のきっかけはこの場所であったかもしれません。
この会で、恐れ多くも当時の横須賀地方総監(昔でいえば横須賀鎮守府の大将、司令官)47代、杉本孝幸総監が登壇してくださったのですよ。大変おおらかな方で、わたしたち登壇者の楽屋にも遊びに来てくださりひとしきりおしゃべりという驚きの僥倖がありました。
その時にわたし、こんな状況生涯最初にして最後であろう。ならば、恥も辞さずで突撃!とばかり失礼承知で杉本総監に「護衛艦の艦内でカレーを食べる体験をしたのです!」と直訴。総監は笑ってその願いに応えてくださったのでありました。たまたま「いずも」が改修に入る前のことで「準備を急げば横須賀の専用バースに停泊中の「いずも」に乗艦できますよ。手配しましょう」と快諾いただきました。
膝から力が抜けました。あの時のこと、杉本孝幸総監の笑顔は多分生涯忘れられないと思います。
ところが。
その直後の新型コロナウィルスの蔓延。そうやって残念ながら検討をいただきつつ延期、話しは消えていきました。そういう中で「カレーの街よこすか事業者部会部会長」であり「横須賀市観光協会理事」でもある「よこすかカレーフェスティバル」の要、鈴木孝博さんが「なんとしても実現しましょうね!」と仰り続けてくださって。
なんと鈴木さんが今秋、杉本元総監と乾現総監にお話をつないでいただいた様子。鈴木さんからメッセージ飛んできました。なんでそんなことできたんだ?!すごいなあ。
「先般、退任された杉本元総監・乾現総監と食事をする機会があり、あの話のOKが出ました。」
正直また腰が抜けました。変な汗も出たよ。まさかの大逆転、ですよ。
シンポジウムで杉本元総監がお約束下さった話しが杉本元総監の退任の後で、鈴木さんのお力とご縁で乾現総監のご理解も頂き、動いてくださったのです。なんということか。
そんなことがあっての晴れ晴れした気持ちで横須賀港、自衛艦隊司令部。
アテンドいただいたもう一人の横須賀の立て役者である鈴木潤さんのクルマで移動、桟橋に停泊するDD-110、護衛艦「たかなみ」に乗艦となったのです。タラップを上る時の高揚感ときた日には筆舌に尽くし難いものがありました。
実は、「たかなみ」に直接乗艦したのではなくてね。
当日、係留が3艦船腹を横に連ねての形となっていたため、真ん中に位置する「たかなみ」に乗艦するにあたり、DD-116、護衛艦「てるづき」を通していただいての乗艦となったのでした。これもまた、大いに光栄です。外側には異形のステルス艦、FFM-1「もがみ」の勇姿。見惚れてしまうねえ。
甲板で隊員の皆さんに歓迎をいただき、艦内へ。狭い通路と急なラッタル、厳つい各種装備や作りに護衛艦、戦闘艦であるという実感を得ます。
あっという間に隊員食堂へ到着。決して広くはないのですが快適な食堂なんです。
隊員食堂入口の厨房とつながるにあるディシャップ(ディッシュアップの意味。調理仕上がり品を提供する窓口。飲食業界用語)に用意されるブッフェ形式の配膳場所。ステンの仕切り皿を手に取り、担当隊員さんの「好きなだけ盛ってください」の薦めに勇気をもらいつつ自由にカレーを盛っていきます。ああ、手が震えるわ。
さあ、海上自衛隊汎用護衛艦「たかなみ」型1番艦、DD-110 護衛艦たかなみの隊員食堂でのカレー喫食です。
これは、キーマカレー。
自衛隊の、特に海自の護衛艦はそれぞれに「船のレシピ」を持っており、このカレーも「たかなみ」の厨房が受け継ぐ独自のレシピとなっています。
カレーソースは粘りが大変に強いんです。味は甘辛の権化とも言えるもので、これは旨いなあ!甘味噌的なニュアンスと奥行きの深さを感じる仕上がりです。ほんのり苦味が残るのもいいね。まったくもって完全オリジナルで、他で食べたことがない味だったのに驚かされました。これはもう本当に本当においしい。すごい、いい。
その甘さと奥行き。それと大変に強い、よくあるカレーライスのドロドロ系の粘りとは違う感覚の粘度はちょっと忘れがたい、面白くも美味しいものでした。
ナスがダイスカットになってるのがおや、と感じます。他の食材もダイスカット、ないし小ぶりにカットされて入っており、これ、本当にキーマなわけですよ。キーマの意味の源流から考えるとヒンディー語やウルドゥー語の意味で「細かいもの」なので、これはとても正しいのです。
ひき肉カレーはキーマカレー。間違ってはいないんですが、ちょっと言葉が足りていない。本当に真実までは辿り着いていないと思うんです。このカレーは挽肉はもちろん、野菜なども「細かいもの」として調理されているのでまったくもって正しく、キーマであると感じます。色々書いてますが、とにかく美味しくてオリジナリティが強くて忘れられない味です。
副菜もよかったなあ。
サラダ。サラダは手抜きをするとたちまちそのレストランの質がわかるアイテムです。鮮魚と野菜は扱いが難しいのです。手を抜くとさっさと劣化してよろしくないものとなるでしょう。「たかなみ」のサラダは見た目美しく、野菜がシャキンとしていて背筋が伸びるサラダでした。彩り、食感共に素晴らしい。
コロッケも茹でで卵もちゃんとカレーによく合うもので、どちらもお腹にしっかり溜まって幸せになれること間違いありません。
オレンジがつくんですが、洒落たカットを皮にほどこしてあって、皮が離れやすく食べやすい。手がかかっているなあ。驚きです。
一緒に行ったのは鈴木さんと、下北沢カレーフェスを運営する西山さん、そしてゴーゴーカレー代表の宮森社長です。皆さんとても楽しんでらっしゃいました、、いや、すみません。他の方がどうしてらっしゃったか、ちっともみていません(笑)とにかく自分のことで精一杯でした。でもこの笑顔を見れば、、です!
実はこの喫食、けっこうプレッシャーがあったんですよ。わたしは食事が遅いのです(笑)。あ、いや、食べるのが遅いという話しではなくね、仕事柄とにかく写真の枚数が多いんです。その手間で自ずスピードが落ちるというわけ。隊員の皆さんとする食事、時間厳守のルール。守らねばなりません。が、それは杞憂。お気遣いだと思います。
隊員の皆さん特に海曹長と給養隊員の給仕長のお話しは興味深く、奥様の料理に影響を受けたりするなど楽しいエピソードも飛び出しました。こういうお話を聞けるのもなんとも貴重な体験です。
そして食事の途中で再び気がつくんですよ。わかっていたつもりですが、港湾内でしかも桟橋付けだけど、れっきとした海の上。しかも今日は、金曜日。そんなタイミングに護衛艦たかなみの食堂にいる。改めてぐいっと感激が押し寄せます。うむむ、なんか書いてて目尻に涙が浮かんでくるぞ、いや本当に。
さて、カレーの後は艦内を見学させていただく時間です。
乗艦したDD-110、護衛艦「たかなみ」は、たかなみ型1番艦となります。
起工は2000年、進水翌01年、竣工03年となっています。同型艦は5隻存在し、汎用護衛艦(DD)の主要艦となっている。海上自衛隊の艦艇装備の要です。
先日の観艦式で艦閲艦隊のしんがりを務めた同艦は活躍のシーンも多いのです。昨年2月、中東海域での情報収集活動のためアラビア海へも派遣されていました。2004年、スマトラ沖地震ではタイ政府からの要請で津波被災者の捜索と救援活動についています。日本を守る船ながら世界のお役にも立ってくださっており、胸が熱くなります。
そして、東日本大震災での活躍、忘れ難い。宮城県石巻にて津波により幼稚園舎で孤立した園児11人を含む135人を救助。それがこの艦、「たかなみ」であったことは今回調べて知りました。いずれもめざましい活躍です。
嬉しいことに今回、艦長にもお会いできたのです。お忙しい中、艦橋を見学する私たちのもとにわざわざきてくださった女性艦長。なかなかこんなこと、普通じゃありえないと思います。艦長、まだ着任して間もないのだと教えてくださいました。キリッとした素敵な方でした。
そののち甲板に出て、127mm54口径単装速射砲、20mmCIWS Mk15、3連装短魚雷発射管、VLS、SSM、などの艦上装備を見せていただました。広いヘリコプター格納庫なども案内いただいて驚きと感激で頭の中がいっぱいです。2機の哨戒ヘリコプターを運用できる、ちょっとしたヘリ空母的な運用ができる頼もしい艦艇でありました。
名残惜しい気持ちを甲板に残しつつ、下艦。あっという間であったねえ。ちょっともう、なんだか気持ちがいっぱいでどうしたらいいかわからないという気分でした。
このあとよこすか軍港めぐりの水上艇で40分、横須賀港を堪能しました。軍港、海、船、猿島にグルメにドブ板横丁に、と横須賀市の観光コンテンツの面白さと奥深さを知る思いです。
今回ので大いにエンジンがかかりまして、いろいろ調べてわたしの大事に思っている千葉県「陸上自衛隊 高射学校 下志津駐屯地」に後方ツアーがあるのを発見。見学会のメインに食事があって、なんと「ピーナッツカレー」というメニューがあるとの情報。これはなんとしても参加せねば!
自衛隊基地でカレーが食べられる情報(レトルトは大体知ってますのでそちらではなく)はぜひお知らせくださいね。