たまにわたしのところに持ち込まれるレトルトカレー・冷凍カレーがあります。いや、頻繁に、かな。レトルトカレーの方が多いですね。少しづつ、たまってゆきます。
カレーですよ。
カレーだけじゃないけど。ほかのジャンルの試食もいろいろ入ります。ただ、レトルト食品なんかだと製品の大多数を占めるのはカレーだからね。
試食だったりレビューだったりというものも多いですが、まれに開発、調整中のカレーなども混じったりします。これがなかなか面白いのだよ。
公に外に出せないものではあるのですが、なかなかにおいしいものも多いです。とは言え「わたし」がおいしいのであってコンシューマの方がおいしいかどうかというのは別問題なんであるよ。そこを考慮して感想を述べねばならない。これがお仕事。
最近ではそこそこ尖った味のカレーも受け入れられるような世の中になって、その度に自分の舌の感覚、微調整を繰り返しつつフィードバックをするのが仕事なわけです。
大体1種につき2〜3食分ほどが送られてくることが多いです。それはつまり送付先、わたしのところで調理のミスや複数回の味見等ということになった場合、何回かに分けて食べられるようにしておかないと仕事が止まってしまうから。メーカーさんもそれを見越していくつかに小分けをしてくれます。
とはいえ、わたしは自慢でもなんでもなく、それほどミスをすることが多くは無いので、おのずと冷凍やレトルトのカレーストックが溜まっていくわけです。それはそれで面白いもので、しばらくしてから食べてみると印象が変わったり、冷凍なら熟成が進んだり、味の変化が起こったりするんですよ。それもまたメーカーから言われるわけでもなくメモを書いて後日お伝えしたりもします。
いちどメーカーの若い営業マンを叱り飛ばしたことがありました。いや、正確には、叱り飛ばしたと言うよりも大きく疑問が湧いて、それを質問をしたと言うのが正解かな。なんでそういう発言になるのか、と。
彼はこういいました。「あなたがうらやましい、ランチやディナーが一食分、タダになって助かるのだから。」
彼の軽口かとも思うんですが、残念ながらそれは違う。そういうことを言ってはいけない。趣味、好みで食べたくて食べるものとそうではないものがあるから。その時に食べたいものを好きに選んで食べるのと、仕事という覚悟で口にするものとは根本的に違うのです。
仕事で食べる時はもちろん、カレーはジャンルとして好みだし積極的に食べるのですが、趣味嗜好とは違うというところで線を引いています。そりゃあ当たり前です。楽しく食べることだけだったらば大歓迎、ただもう楽しんで食べておいしかったです、ご馳走様!で終わり。レビュー、意見提出と言うのはそういうものではありません。
自分の楽しみであるところの好きな食べ物を1回分削ってやって、そのあいた場所に仕事の料理を入れてやる。人生は短く、食事の回数というものは限りがあります。非常に貴重なものだと思います。
そしてもちろんお腹に入れて終わりではないのです。そういう食事をしているときは、とにかく考えて、確かめて、匂いを嗅いで皿の中のものを突っついたりひっくり返したりして舌から頭に叩き込みます。特に外食の時は、必死。メモなど取るのはみっともないこともあるので記憶に克明に残すのです。内食の時はメモをとりながら食べることも多いですよ。時間経過などを見ながら温度の変化の中から香りの上がりの違いや熱を取り除いた時に顔を見せる、熱い時にはひっこんでいた味を、匂いを嗅ぎ分けます。食事どころではないのだよ。楽しんでる場合ではないから。
ただ、頭の中はこれを食事として摂っている時のシーンを連想せねばというところもあります。並行して手元は突き回したりメモ取ったりなんだりなのであるよ。意外と過酷なのです、カレーの試食。
仕事すべからくご縁ひとつ、だと思っています。ご縁は自分から繋ぐもの、ご縁はどこかから自然につながってくるもの。どちらも正解だと思います。
真面目な仕事をしますのでご連絡くださいね。
(写真はイメージ)