「なぜこれがスーパーマーケットの棚にあるのか?そう訝しむくらいの現地感」。このセリフはもう殆、書き飽きたよなあ。しかし書かざるを得ないのがレトルトカレーの名品を数々生み出し続ける高品質ブランド、36チャンパーズ・オブ・スパイスの作の製品なのです。なにしろ言葉通りなので。
カレーですよ。
とにかく同社は目の付け所がいい。センスと言ってもいいでしょう。
食品会社は「好き」で成り立っているところは少ないでしょう。当たり前です。ビジネスなんだからね。ところが36チャンパーズ・オブ・スパイス。どうもその「「好き」で成り立っている」匂いがするんだよ。もちろんそれだけでは製品の流通はままならないわけで。ましてや売れるなどおぼつかないに決まっています。「それだけ」でやってたらね。
しかしこの会社、時代を読み、風に乗り、うまく「好き」と「ビジネス」のバランスを作り上げてしまっていると感じるのです。驚くべきことだと思います。そしてこういう会社にはファンがつくんだよね。製品にファンがつくのはよくあることですが、会社にファンがつくというのは稀でしょいう。
もちろんナショナルブランドというわけにはいかないかもしれません。が、こういうものが好きな顧客をちゃんと集め、広い幅で浅い客、という従来型の当たり前の戦略を取らずに、範囲を集中させて太い客、というマーケティングで当たりを引いてゆくんです。骨太なやり方です。
レトルトカレーの新しい価値観を作り上げたといえましょう。言い換えれば、製品もそれを買うコンシューマーも含めて「仲間を作りながら進む」という歩みに見えるんです。なんとまあ、気分の良い商売だねえ。
さて、これ。荻窪の、
「馬来風光美食」
のエレンシェフのレシピになるルンダンです。これがね、恐るべき仕上がりでありました。なんだこりゃと思わず声が出ちゃったもんね。前に書いたっけか。
この香り、よくぞここまでといういい意味でのクセをがっちりと。これを普通のお客が訪れるスーパーマーケットの棚においてしまうという豪胆さ。とはいえ2023年、世の中もちゃんと進んでいます。アジアの食が身近になっている現代ニッポンは皆さんの知る通りです。
「ルンダン」
ってのはマレーシアの煮込み肉料理であります。
この素敵なオリエンタルな香り。レモングラスやガランガー(南姜。生姜のようなもの)の繊維がガリガリと入り、日本人が慣れない食感を作り出します。それがたまんない。
スターアニスがオリエンタルな香りを強く主張してきます。その中に青々しいカルダモンがスーッと入ってなんともはや、嬉しいほどにマレーシアの風が吹き抜けるわけです。
もう一度繰り返し、間違っちゃいけないのはこれはカレーであってカレーではないということ。煮込み肉料理ですね、マレーシアの。
が、カレーという言葉がきっかけで日本の食卓に入り込むことができるんです。アジアの料理はいつでもそんな感じで海の向こうからやってきます。
カレーという言葉は魔法のキーワードです。