取材でお邪魔をした西荻窪の新しいお店。実は、いきなりの一目惚れでした。インスタグラムでフォローしてくださって、写真見せてもらうとどうにもいい感じで、周りからもいい噂が聞こえていたので早く行かねばと思っていました。それが去年の夏だったかな。
カレーですよ。
いちどお邪魔をしてカレーを食べて、店主にご挨拶をしてちょっぴりだけおしゃべりして。思わずその場で雑誌取材の申し込みをしてしまったよ。
たまにそういうことがあるのです。たまにだけどね。
きっとお人柄やお店の空気なんだろうなあと思うんです、そういう時にわたしが動くの。そういうのになにかピンときてしまうんだよ。それがお店へのわたしの一目惚れの流れなんだよ。
「カレーショップ フェンネル」
久しぶりの西荻窪の散歩はとてもうれしかったです。取材前と後に少し歩き回りました。
西荻窪には15年ほど住んでいたことがあります。この町には独特の匂い、カルチャーがあると感じています。「カレーショップフェンネル」は、加来シェフは、その西荻窪の空気に上手に溶け込んでいました。わずか半年と少しの営業であるのに不思議なくらい「西荻窪らしいお店」としてそこにあるんです。
元西荻窪住民としてこれはなかなか大したものだと思うわけですよ。なかなかに手強い町でね、「住んでいる人」と「外から来た人」のカラーが明確に見えてしまう。そう思っています。そういう場所での商売はタフなものだと思うんだよ。
カレーは3〜4種が用意されています。
特に気に入ったのがドライカレー。いやこれまいったなあ。
スタイルとしては新宿、甲州街道の1本裏に入った路地にあった地下の店「ハイチ」のものに似る感があります。あくまでビジュアルね。今は中野とセンタービルにあるのだったかな。
あのドライカレーを思い出すんですが、スタイルは似るけどそれとは違う独自の世界観、強いオリジナリティがあります。まるで肉を一度解体(物理的、哲学的に)してペースト状に再構築したかのような、大変手間暇掛けたそれはもう尊いもので夢中にさせられました。これは明らかにクセになるもの、あと引くもので大変危険。一度試した方がいいよ。
加来店主一押しの「ポークビンダルー」もとても好き。行き過ぎにならない酸味のバランスはセンスがあるよなあ。食べ応えある柔らかなポークも特筆です。美味しい。
バターチキン、まだ未食なんですがお話しを聞くとナーンではなくごはんに合うように再チューニングされているようでこれも注目。日替わりもすごく良かったし、いいカレーばかりだよ。
お店は間口の狭い階段を上がった2階にあります。
洒落たセンスで木造の少し古い日本家屋を上手にリファインしてあって、大変居心地がいいんです。なんというか、ちゃんと「西荻窪っぽい」のだよ。変な言い方だけどさ。
その正体を言葉で言い表すのは難しいんですが、ちゃんと町に馴染んでいて、通りの空気がちゃんと店の中まで続いている、そういう感があるんだよ。
たとえば「旅の本屋のまど」然り、「オーケストラ」然り。「ハンサム食堂」や「戎」などはその範囲を越えてここが西荻!みたいな空気を逆に店から町に垂れ流し醸成しているんですが、そこまでいかずとも、そういうものが1年経たずしてあると思うのです。
間違いなく町の大事な一部になっていると思います。
いいお店です。