久しぶりに「やられた!」と思う味にぶつかりました。実力派です。こりゃあ素晴らしい。
カレーですよ。
敢えて、なのですが。
乱暴に、とても乱暴に大御所の名前を出して(出してない/笑)スパッと書いてしまうと、これ、「上野インスパイア&チューンナップ」と感じます。(出してる/笑)「マネ」でまったくはなくてきちんとオリジナルに昇華しているすごいやつ。しかもその味の落とし所がすごくいいのです。
食べた後で、かしわカレー図鑑編集長の波木さんが教えてくれました。店主は柏ボンベイで勉強なさった方。なので「柏インスパイア&チューンナップ」が正解。波木さん、やべえな。ボンベイ周りの情報が濃いな。さすがです。となればなるほど、色々納得がいくぞ。
メニュー、まず「ミルチ」と言うメニュー名に持っていかれます。ヒンディー語の「唐辛子」 だ。いいじゃないですか、その名前。
で、黒い。黒くてさらさらなんであるよ。それはもうつまりアレだよ。こりゃあアレを思い出さざるを得ない。しかしアレではないのです。ちゃんとオリジナリティがあるんだよな。いろいろ他の要素もみえて、とても面白いカレーです。
メニューにあるカレーソースは4種。それぞれ「チキン」、「インド(辛口)」、「ミルチjr(辛口)」、「ミルチ(極辛)」となっていました。そこに具材である「ブタ」と「キャベツ」が組み合わさって構成されていました。
たとえば「インドブタ」とか「チキンキャベツブタ」とかになるわけです。いささかあのラーメン店的ですけど、なんだかんだで分かりやすいと思う。ヤサイとくればもやしメインと想像しますがカレーなら絶対キャベツオンリーの方が合うわけで、なるほどそうなってます。
さっき言った「他の要素」はこういう部分。とてもいいなあ。
例えばじゃがいものカットとサイズなどは上野や柏を思い出すし、ブタは荻窪の階段上を思い出すもの。いや、それよりも遡ってラーメンからか、そっかそうだよね。お店のシャレたシンプルな店内もどこか麺関係の最近の尖った店などと重なるところがある気がします。カッコいいのだよ。センスオブワンダーとはこのことだわ。
この日のわたしは、
「ミルチキャベツブタ」
であります。
実は焦って注文して初めに「ミルチキャベツ」を注文したんですが、やっぱりブタも欲しいよね、ということで急いでブタ追加の「ミルチキャベツブタ」となりました。ああよかったよかった。
味は辛旨いです。旨辛いのですが辛旨い。いい、それがいいぞ、そこがいい。
上野の元祖は舌の上にXとかZを刻まれるような熱辛い感覚があるのです。柏もそうだね。まあ、それがいいわけです。そいつが強い香りと共にガッとくる。その中にクセになる旨味がそっと隠れているというもの。それが、上野、柏。
しかしモトカレーのミルチは辛いが先に来ないんだよね。旨辛いんだよ。香りは浴びるほどではなく、ほどほに広がりバランスがいい感じ。口はそれほど辛くないんだけど知らぬ間に中盤、すごくたくさん汗をかかされるというね、いいスパイスの使い方。好きなスタイルです。
これだ、これだ。この感じがわたしが欲するものだわ。舌へのパンチがきちんとあるけど過ぎたものではなく、しかしスパイスが正しく仕事をして大汗をかかされる。こりゃ理想的だな。
ブタ、デカい、厚い、ちゃんとうまい。いやーいい。いうことがないです。重たいかと思いきや、ペロリといけました。キャベツは別でもうひと皿行きたくなるうまさです。その甘みが辛めのカレーソースの中で際立ちます。桜漬けが思うよりも穏やかな味で、安っぽくなっていないのもいいなあ。ホントに全部いい。
どうにもいいものでした。困ったなこりゃ。チキン、インド、共に食べてみたくなったよ。お店のお二人も感じがいい。
爆発的に好みの味でありました。
すごく楽しかったなあ。すごくおいしかった。久しぶりに夢中になって食べたし、色々なことを考えて頭が高速回転しました。
たとえば。
実はこの世界には辛くないカシミール(それでももちろん辛いけど)というジャンルがあること。上野や銀座は辛さの調整はできない(できるけど)ですが、辛くないカシミールは辛くないから辛さ調整が生きてくること、派生店の店主が上野や銀座、もしくは横浜や柏、その他で勉強した時代によってカシミールの味は違うはずであること。それがどこの店のどの味で勉強したかによって、どういうふうにいま食べているそのカシミールに似た(敢えて)料理の味に影響しているか。この視点で調べるともっと面白くなると思うのです。アイディアはあげたので、やってみてね(あたしはやらん)。
また早々に行かねば。これは通わないとだわ。
追記
旧知の友人が同日同時刻に並びで食べていたことを後で知りました。コロナの影響で一蘭方式のカウンターとなっているためお互い気が付かなかったみたい。意外な場所ですれ違って驚いたよ。