カレーですよ4991(荻窪 トマト)荻窪贅沢ナイト。

たまにやってくるあの方からのメッセージ。「はぴいさん、トマト、こんどいつ並ぶんですか?」いやいや、いつでもお声かけてくだされば飛んでまいりますよ。いつでもスタンバイです。

 

 

カレーですよ。

 

 

荻窪にニッポンいちの欧風カレーがあるんです。口コミサイトにそう書いてあるのは、そんなもんはどうでもよくてね。わたしがニッポンいちと考えるから、ニッポンいちの欧風カレーなんです。日本の欧風カレーの最高峰、誰の意見でもなく、わたしの中で、です。前は割と近所、自転車距離にに住んでいて、たまに食べてはそう思っていました。価値が、大事さが、尊さが違う。だからここぞの時のために大事に取ってあります。手札の中のスペシャルカードなのです。

名前はみなさんもちろんご存知のあそこ。

 

「欧風カレー&シチュー専門店 トマト」

 

ここの料理はね、食べれば誰にでもわかると思う。鬼気迫るすごいものがするっと出てきて毎度魂を持って行かれてしまうから。「心をぬすむ」とはこのことか、と毎回思うんだよ。それくらい手間をかけたものだし、手間の分、すごく美味しいのです。

カレーとはなんぞやの話しがどうしても出てきてしまうんですが、ニッポンにおけるカレーは煮込み料理。煮込み料理のすごいやつとくればフランス料理などの西洋料理のシチューの類、となります。荻窪のトマトはそういうところを土台に持っていて、それを元にものすごいものを繰り出してきます。

この晩は、オトナのいい男とメシ、というシチュエーション。ちょいと緊張するんです。素敵な女性とテーブルを囲むのともまたちがう緊張があります。ある程度歳をとってからシャキッとした大人の男性とメシを食うなんてのはなかなかに背筋伸びるもので、こちらもそれに見合うような多少の努力をせねば、なぞ思うわけです。

とはいえいつも通りのおとぼけおじさんのあたしであるからして、何をしても大した変わりはないわけです。まあ、それで良いだろう。相手だってそこらへん、お見通しなはずです。

そんなこんなで行列の待ち合わせ。荻窪のトマトは行列必須です。しかしこの日は間のいいことに17時ちょい過ぎで4人ほどしか並んでいなかった。ありゃりゃ、こういうこともあるのだね。間違いなく一巡目に入れることが決まって勇気が溢れてきます。そんなことよりおしゃべりをして楽しい人と一緒ですから時間はさらさらと流れて楽なもんです。

お店の奥様が少し早くに開けてくださって、実質50分ほど、体感では20分気分でカウンターに着くことができました。この間の3時間の死闘に比べればなんとことないですよ。

注文、せっかくなので別々のものものを、ということに。

わたしは

 

「仔牛のミルクカレー」

やはりこの間食べた時と同じ感想が改めてやってきます。これはもうカレーを超えたところにある料理でね。まずはお肉がものすごい。なんだこれは的な驚きがあります。柔らかく、舌の形に沿ってするりとまとわりついてくるようなエロティックな食感。ああたまらない。

ひと口目にフェンネルの香りが立つのが楽しいな。ミルクが強くて柔らかな感を抱くんですが旨味と輪郭の印象確かでもあるという素晴らしいお味。分厚く濃厚、舌をくすぐられるような甘みにぐいっとあちら側に持って行かれます。これはもうカレーというよりもシチューなのだね。甘さを強く感じるんですが、それがとても自然な感があって不思議なんです。少し冷めると苦味が立ってきてまた印象が変わるのも楽しい。これは凄いなあ。

そして彼の人はあれです。あれに決めたみたい。このお店の代表的味、とてもいいものです。

わたしも大好きな、ジャワカレー。ひと口分けてもらいました。

 

「和牛ビーフジャワカレー」

お店の看板メニューでもあり(メニューの一番頭に出ています)一番スパイシーなカレーがこれです。ホールスパイスが入っているのが舌でわかるよ。スパイスが香り強く抜け良く、鼻の奥から気持ちがいいんです。こういうのありそうで同じものないんだよねえ。シードやパウダーのドライなはずなんですけど、香りの立ち方が素晴らしいからか、ハーブのようなフレッシュさが感じられるんです。これ面白いなあ。

青々しく爽やかで、それに合い対する厚みある旨み、すばらしきバランスです。ビーフが本当に柔らかくてねえ、正しく高級肉がそこにあるのだなあと確認できます。心底美味い、間違いない。シチューであるけれどカレーであるというトマトの真骨頂を感じます。

 

彼の方よりワインの提案。もちろん受けて立ちます。こういういいものを食べている時に、それによく合うワインは必須ですからね。

ああ、なんかますますいい。素晴らしい。

ビーフジャワカレーはカレーらしさがしっかりあり、その奥にシチューを感じる作りなんですが、ミルクカレーは初めからカレーであることを放棄したような、でもほんの少しカレーなシチューというね、この落とし所にはいつも頷かされるのです。

 

玉ねぎの醤油漬けにも毎度頭を抱えさせられるんだよね。あれはもうなんか魔性です。おいしくて食べすぎてしまう。調子に乗って食べすぎると玉ねぎの強さに口中支配されてしまうので要注意。でも!やめられない。恥ずかしながらどんどん食べていたらお店の奥様が追加をくださいました。ビールとワインが悪さをしたのだ、と酒のせいにしてみます。

1982年創業、40年の歴史をもつ「トマト」というお店。きちんとその金額分、いや、その場所に滞在する時間分の嬉しさ、楽しさを返してくれる良い場所です。

そしてそういう価値のある店でご一緒させてもらった価値ある人物。どちらも揃っていることなぞ滅多にないことです。ありがたいことです。松尾さん、楽しい夜でした。ありがとうございます。荻窪では二度目ですねえ(吉田カレー)。