心温まる、という感じはこういうお店に当てはまる言葉だよなあ、と思うんです。もちろんその時のわたしの心情も加えてのことだけどね。
カレーですよ。
桐生であてにしていた店に振られました。これはけっこうツラい。
群馬県みどり市。駅の繁華街から離れた街道筋。店はチェーン店ばかりの典型的な地方都市の街道風景で自由にカレー店を選べる環境ではない地方都市の夜、なわけです。
「カレー風味すずき」にはどうも振られ続けているんです。今日は何か確かめられないか、と店に近づいてみました。果たしてGoogleマップの情報は間違い。店頭に出ている看板の内容を涙ながらにマップの修正依頼フォームに書き込んで、それでもなお、Googleマップの検索窓に「カレー」と打ち込む。そんな毎日です。
そのあとに出会ったカレー専門店がありました。東武桐生線の藪塚が最寄りですが、クルマで店に向かうとどんどん街灯が少なくなり、道が細くなります。ありゃりゃ、これは。今晩2発目を喰らうのか、なんて思って覚悟していたら、小さな灯りにカレーの文字。
ああ、命拾いとなったようです。助けられた感が強いな。
「カレー アルプ」
は個人経営の小さなカレー店です。
どうにも感じがいいんだよね。20時過ぎても席に通してくださる心強さ。ご主人のご趣味かな、古いカメラや真空管のディスプレイはちょっとうれしくなるね。
メニューを眺めて気になった、
「インド風チキンカレースペシャルバージョン」
を注文します。
何がスペシャルバージョンなのかなど、野暮なことは聞きません。出てきたものこそがスペシャルバージョン、それでいいのだよ。
果たして出てきたカレー、日本のカレーライス然とした穏やかなビジュアル。しかしそこはスペシャルバージョン。大いに期待をしてスプーンを手にしました。
あ、これいい。なるほどいい。きちんと手がかけられているクラシックなカレーで好感が持てます。抜けの良い辛さと良い香り。チキンがものすごく柔らかくなっていてその食感に驚きました。こういう感じはあまり体験したことのない食感だなあ、興味深いなあ。
これはわたしの好みの日本人のコックさんが作るインド風カレーだわ。日本的なとろみを感じるカレーソース。そこにスパイスの香りが強く乗るスタイルです。来てよかった!
思い出したのが御茶ノ水のエチオピア。しっかりとカレーライスであることを認識できる姿ですけど香りが強くエキゾチックな雰囲気があります。こういう調整が一番好みで楽しいんだよね。
この「インド風チキンカレースペシャルバージョン」は日本のカレーをインドの方に少しづつ寄せていったらエチオピアに似た感じになったという風情があります。
けっこう辛いね。辛いけれど意地悪な辛さではないんです。お腹があったかくなる辛さ。むかしのスタイルの辛さ。とてもいい。このカレーにとても似合っている。
ご夫婦がお二人でやってらっしゃいました。丁寧で感じがいいです。BGMもなく、そういうの、潔くて気持ちがいいです。好きな感じです。
何を話したわけでもなく、ただ黙ってカレーを食べて出てきただけなんですが、何か伝わるものがあったよ。快適だったよ。
とても救われた気持ちです。