まず立地の凄さとアクセスの大変さから驚かされたお店ってのがたまにあります。こういう体験は純粋に驚きがあってわたしは楽しいです。その裏には理由があるのじゃないかと睨んでいるんです。
カレーですよ。
あとは、印象。クルマで動くことが多いので、実はお店の裏手を電車が走ってるのにそれに気が付かなくて、とか。お店の看板が出てるのは商店街のないがらんとしたがわ、なんとことはままあるんです。
八王子の外れにいました。腹が減っていたんですが、例によって15時をまわっていてちょっと諦め気味でした。旨いカレーは諦めるかあ。そんなことを呟きながら指先では「カレー」と打ち込んで地図を検索しています。「現在営業中」ボタンを押してふるいにかけると。おや、あきる野か。クルマなら20分だ。いってみますか。
どうやらその店、ちょっと変わった時間割で動いている様子。12時から13時半まで営業。1時間の休み時間があってその後14時半から16時半までの営業。夜はなし。なんだかちょっと気になるじゃないですか。どんな感じなんだろう。
「カレー堂」
というお店。
地図を見ながら進んでいくが、どう考えてもお店とかないだろうなあ、という場所に連れて行かれました。多摩川がふた枝に別れた秋川のそば。広い広い田んぼの中、一本道の農道を進むと少し高台が見えてきて住宅がちらほら。どうやらあそこらへんだというのですが。はてさて。
田舎の細道、という風情の坂を上がっていくと、果たしてそのお店がありました。いや、ここ?ここでいいの?うーん、いいらしい。派手な看板はありません。お店自体がオレンジ色のちょっと派手目の小屋という感じ。ちょいと簡易な感じで、でも居心地良さそうなお店です。ご店主が一人で店番をしています。
さておなかがへったよ、注文だ。それで壁の品書きを見て腰が抜けました。いやほんとに。「カレーライス 普通盛り(中辛・甘口)300円 カレーライス スリム(中辛・甘口)200円 カレーライス こども50円」ってちょっとちょっと、昭和どころの話じゃないぞこれは。
なんなのこの値段??
「カレーライス 普通盛り(中辛)」
を50円追加で大盛りにしてもらって注文しました。
どんなのが出てくるんだろう。そう思って待っていると、カレーがやってきました。ああこれ、素晴らしい。正しいカレーライスがやってきたよ。
豚肉も野菜もたっぷり!と入ったジャパニーズオーセンティックカレーライスです。こりゃあ間違いがないよな、と食べる前からわかります。厨房に赤缶が積み上がっているのが見えました。真面目に作ったカレーライスなんだねえ、きっと。
カレーソースはあまりドロリとさせておらず、脂少なめで軽やかです。うんうん実に実にいいカレーライスじゃないかあ。まったくもっておいしい良いものです。こういうのが食べたかったんだよ。
こういうタイプのカレーライスを「家庭のカレー」という言い方で片付けてしまう御仁をよく見かけるんですが、そのことを自分で疑ったりしないのかしら?家庭の味、という言い方で簡単に済ませるほどこのご店主の調理やこだわりを知っているのかな。食べながらそんなことも考えます。普遍的なものの中に個性を括り出す、こういう味は簡単ではないと考えているからね。
食後、お茶を淹れていただきました。たいへんおいしかった。ほっとしました。
ご店主とおしゃべりをしたのですが、感じのいい方です。これは安すぎだからダメです!などいうとニコニコと笑ってらっしゃったよ。そういえばおいしくて楽しくて忘れてた。なぜあの場所にお店を?と何故この価格?を聞き忘れた。次の訪問時の宿題とします。
子供時代に友達の家に遊びに行ったら友達が出かけていて「また来ますね」と帰ろうとしたら「カレー作ったんだが食べて行かないか?」と友達のお父さんに声をかけられて。
そんな気分の食体験だったなあ。