なかなか遠くて頻繁に、というわけには行かないお店なのですが、それでも、どうしても食べたくなるのです。それで千葉鴨川、江見吉浦までのショートトリップとなるわけです。
カレーですよ。
128号線沿いの崖の上にあるそのお店までの道中、毎回まったく苦にならないのです。クルマを走らせるという楽しみはわたしのなによりの好物。
そしてその先にカレーが待っているならなお言うことがないからね。
いついでも寄り道寄り道を重ねる道中なので、たちまち日が暮れます。だから
「ライバック」
には夜しか来たことがないのです。せっかくの太平洋一望というロケーションなのにもったいない、かな。でもここのカレーの味はその風景の素晴らしさなど軽々越えてくる魅力があると思っています。
食べると必ず「尊いな」と感じる料理です。キリッと引き締まった品格のようなものを持っています。西洋料理のシチューやソースを作る手法かな。いわゆるカレーライスとは違う、雑多な煮込みではないソースとして作られているびがわかります。そこに矜持や意志が垣間見える、と感じるのです。
レストラン料理の「ソース」のポジションにあたる作り。「皿に敷いてある」スタイルも西洋料理のソースの作法に見えますね。ビターで焙煎深く、香りよい。きちんと辛さも併せ持つよいもの。うっとりするな。
この夜は、
「牛すじカレー」
を注文。牛すじは別煮込みです。スタンダードなカレーライスの系譜の場合は別煮込みはどうなのよ、と思うことも多いのですが、ここの別煮込みはニュアンスが違うんです。
カレー自体がソースとしての完成度が高いため、雑多なものを一緒に煮込まない。だから別煮込み、別調理。その別煮込みの調理レベルや完成度が独立したひと皿にも匹敵。だからこれで大いに納得がいくわけです。こういうレベルで「カレーです」と公言してなにげなく出してくるからもうこっちはたまんないわけですよ。
カレーソースも牛すじ煮込みもひとくち含んだだけで「技術と経験が必要である完成品」という感がひたひたと湧き上がって堪らない気持ちになります。濃厚なのに舌の上でぐずぐずとしていない味の引きも素晴らしいな。
実はシェフ、ホテルニューオータニに40年もいらっしゃった方のようなんです。丁寧な仕事や味の向いている方向などいろいろ合点がいくねえ。
変化はすこしありました。昨今の食材高騰で価格の見直しがあったようす。楽しみにしているサラダとミネストローネも別注文となっていました(うっかり見逃して注文し忘れた!痛恨)。当然です。そして、それでも安いもの。この味この質で1000円札とあとちょっと、というのは安すぎです。
地域の値頃感もあれば客層もあるでしょう。とはいえおかしな無理をせずに、長く続いて欲しいと強く思っています。
前来た時よりも息子さんの存在感が増してたなあ。頼もしいなあ。