例のグリーンカレーを食べてみたかったんですよ。三浦シェフがいろいろと試行錯誤しながら手探りしていった完成品、試さねばと思っていたのです。
カレーですよ。
タイカレーではないグリーンカレー。これは一体なんなのだろう。本当に面白いなあ。
ちょいとご無沙汰してしまっていた八丁堀の、
「ワッカ」
今や界隈の有名店です。
シックなパブのような店先。扉を開ければカレーの香り。
カウンターには若きホープ、三浦シェフの息子さん、太輝さんが動いている。おっ!顔を覚えてくれているね。有性遺伝だな、こういうのがちゃんとできちゃうのは。よっ!大活躍だね!!と声をかけるとにっこりしてくれます。程なく三浦シェフが外から戻ってきました。
さてと。
「出汁グリーンカレー&無水チキン」
を注文します。
これ、一度食べただけで語るには情報量があまりに多すぎると思ったんだよね。そう書いてみたものの、料理としての完成度と一体感はきっちりあって、破綻がありません。まとまりというものがあるんだよ。
三浦シェフが作るカレーはなんだかいつでも鬼気迫るものがあるなと感じます。前にも書いたけど、通り過ぎて振り返ったら実はすごいものであったと気がつくような、何気なさの中にすごい情報量が含まれているような、一種恐ろしさを感じるようなカレーをこちらに放り投げてきてね、それでわたしは何度も呆然としてしまうんです。
そしておもしろいのはその「呆然」がわかる人もわからない人も、等しく平等においしさで笑顔にするんだよねえ。ここだよねえ、すごさ。いつでも感じるのが「突き詰め」感。三浦シェフの思考と開発、調理のスタイルを知るにつけ、やはり凄みを感じてしまうのです。
「出汁グリーンカレー&無水チキン」は、まずは和風を感じるのはダシから。そしてタイ料理的なニュアンスを感じるのはバイマックルーの香りから。カレーらしさ、みたいなものを感じるのは程よい辛さ(これもただ辛いではなくどこからやってくるのかちょっと考え込む辛さ。チリだと思うんだけどチリの風味のほうは前に出さないんだよね。すごい興味深い)。
食べ終わると口に残る鰹出汁のよい香りがとても印象的。緑色でほうれん草の風味があって、それで海の出汁がすごく効いていて。なのにどこかからタイカレーニュアンスが少しだけ頭を出して。頭を使わされるんですよ。すっきりさっぱりはココナッツミルクが使われていないからかしら。
こういう味のもの、バランスだったり、食べての方の捉え方だったりで本当に味の幅、受け取り方が大きく変わるし変えられるとおもいます。それをひと所に落とす決断判断というものはどこから来るのだろうな、などもぐもぐとやりながら思ってしまうのです。
果たしてこれがカレーなのか、と思いながら「カレー食ったなあ」の感が残るのもおもしろいよなあ。食後感は爽やかで気持ちが良かったな、という感覚が残りました。
そしてこのカレーのレシピ、三浦シェフ自身がTwitterで公開してしまっているんだよ。あんなに手をかけて試行錯誤したのに、この潔さ、豪胆さ。投稿を見て悲鳴をあげちゃったよもう!
もちろん彼の手から生み出されるものは料理なわけですが、三浦シェフが作り出すあれらはもはやそれを越え、「事象」とも言えるものに近づいているのではないかしら。ぼんやりとそんなことを考えながら八丁堀界隈ふふらふらと歩き回りました。