カフェの試食会にお席をいただいたんです。恵比寿と代官山に店舗を持つカフェです。
カレーですよ。
快適な普段使いができるカフェでした。そうところに気持ちが持っていかれました。そういう場所だったな。
変に凝りすぎていない、でもすごく腰が落ち着くインテリアと空気感。プレオープンのがらんとした店内にすでにそういう空気があるのがすごいんですが、そこはすでに恵比寿と代官山にを持っているから、かもしれないなあ。お店の屋号も覚えやすく、自然体。
「it COFFEE」
といいます。
カレーはここ、赤坂店のみの扱い。ランチタイムメニューとしてコーヒーとセットで1300円と、カフェでくつろいでランチとコーヒーという価値としてお値打ち感を感じます。目黒の「トラットリア チャオロ」のシェフ金箱友樹氏が監修、開発を手がけたものです。鶏のバルサミコ煮込みのカレーということで、他ではあまり見かけない新しさ、面白さを感じさせます。このカレー、色々と面白いんだ。
その名を
「itオリジナルカレー」
といいます。
まずこのビジュアル。ね、正しくカレーライスらしいカレーライス、ジャパニーズスタンダードな感じでしょ。オーバルのステン皿、オールドスクールなジャパナイズドカレー。カフェでこういうプレゼンテーションはかえって新鮮に思えてきます。オールドアンドグッデイズ。
カレーそのものの作りもジャパニーズカレーライスを踏襲していると思われるんですが。が。が。
冒頭の通り、イタリアンのシェフが鶏のバルサミコ煮込みを土台にして作り上げているこのカレー。その味がね、どこでどうなったか、成田からミラノ・マルペンサ国際空港直行便に乗ったはずが、なぜかインド・ゴア国際空港経由のトランジットありになっていた、とでもいいましょうか。
つまり、ジャパニーズクラシックな中に鶏のバルサミコ煮込みが入ってるのに食べてると「あれ?ポークビンダルー?」という三カ国同時通訳的ニュアンスがあるんですなんだこりゃいいぞおもしろいぞ。しかもその味はまったく破綻なく。そしておいしいのでクセになる。おもしろいなあ、これは。
ポークビンダルーの強く汗かく酸っぱさとは違うニュアンスのバルサミコ酢の酸味がちゃんと生きる味で、なのにゴアの風がそよぐのです。繊維がバサバサせずにほぐれるこの具合も嬉しい鶏肉は大変なおいしさ。しんなりした玉ねぎも優しい食感。ガーキンピクルスがつくのも個性的です。
ドレッシングはいわゆる胡麻ドレッシングですがその濃さがなかなかに良いんだな。スリゴマのざらり食感とナッツのぽりぽり感が同時にあるのも楽しいね。カレーの酸味とドレッシング甘味の交互にくるリズムがなるほどと思わせます。
辛さではなく酸味で汗をかかされるのは新鮮な気分でありました。
コーヒーは焙煎まで店内でやっているんです。カウンターからロースターで焙煎中の豆が見えるよ。豆はオーガニック。でもそれらを大げさに喧伝しすぎない寸止め感を感じます。スマートなんだねえ。多分そういう感性がこの場所の居心地の良さを作っているのだと思います。
コーヒー、カレーによく合うんですよと案内されたんですが、おっしゃる通り。カレーの酸味を穏やかに受け止めるふくよかさと、カレーの酸味にうっすら呼応する穏やかな酸味。苦すぎずふくよかで酸味抑えめ。軽やかな印象がありました。単独で飲んでも良い感じで好みの味ですこれ。焙煎機まで置いてこだわるのが納得いく味。
カレーだけではなくサンドイッチやケーキも用意されていました。飲み物はコーヒー類だと豆も選べたり、デカフェもあったり。もちろんラテやアイスドリンクも。うれしかったのがティーメニューのこだわりと充実。紅茶が欲しい人、増えてると感じているのでいいですね。
テラス、気持ちがいいですね。2席設けてあります。ここは愛犬との散歩の途中でもお茶が飲めます。赤坂界隈、意外や犬の散歩の人がいるなあ。そういう人の止まり木にもなりえますね。嬉しいんじゃないかな、愛犬家とワンちゃんたち。
派手だったりコンセプチュアルであったりなどいう要素なく、飲食の商いをしっかりと腰を据えてやっているのかな、と感じられました。そういう場所、意外と多くないんだよな。快適で居心地がいいカフェです。ちょっと尻の置き所がない赤坂見附駅のそばにいい場所ができたよ。
覚えておかないとね。