世の中にはバカな食べ物というジャンルがあるんですよ。皆さん親しみと愛を込めて「バカな食べ物」と呼びます。
カレーですよ。
世の中ではきちんとからだによくて効能も理由もある食べ物が正しいとされています。あたりまえか。良いこと正しいことだと思います。それとは別に、宝石のような贅を尽くし、技を極めた料理もありますね。どちらも同じように価値と魅力があると思っています。
そしてそれと同様に「バカな食べ物」の魅力は抗し難いものがあるわけですよ。
深夜、その「バカな食べ物」トリガーが発動されました。どうにも抗えずクルマに飛び乗って出掛けて行きました。クルマで乗り付けるようなお店じゃないです。なぜならそれは、
「富士そば」
だから。
日常に寄り添ってくれる、正しき町の立ち食いそばが「富士そば」。最近ではここ東陽町店のようにちょいとオシャレになってしまって驚かされたり気後れしたりもしますが。それでも「富士そば」は「富士そば」。いつでも気軽にそばにある立ち食いそば屋であることに変わりはないのです。
「富士そば」にはずいぶんお世話になったよなあ。サラリーマン時代にも重宝したし、西荻窪に住んでいた頃は終電でたどり着いて、どうにもそのまま帰るのがイヤで駅前でちょっと蕎麦を引っ掛けて気分を変えてから部屋に向かったりしていました。
そんな「富士そば」でたのむのが、あのバカメニュー、
「カレーかつ丼」
であるよ。以前はたしか「カツ丼カレー」のメニュー名であった記憶があるのですが、まあ些細なことです。
わたしはいつでも「カツカレー否定」を口にしますが、その理由ってのがあってね。せっかくのぱりりと揚がったカツをカレーに浸して台無しにする行為、あれがどうもダメなのであるよ。なんか、ああ〜もったいない、、、と思っちゃう。
そしてこの「カレーかつ丼」の嬉しさは、そういうおかしなこだわりを笑い飛ばすようにカツはすでに卵とじにされてべっちょり、わたしが口を挟む隙がないのです。ぱりっと揚がったトンカツ、好きなんですが、卵とじにされたものはすでに別のものに変化、そっちも好きなんです。はじめっからそうならオーケーなの。
しかもさ、愚直な感じの由緒正しきカレーライスとカツ煮の甘い出汁。これってなんであんなによく合うのだろうねえ。言ってしまえばとても乱暴な食べ物、「バカな食べ物」なのであるよ。何度も言うけど「愛を込めてのバカな食べ物」です。こういうの、どうにもたまらず食べたくなるんだよな。もともと立ち食い蕎麦屋のメニューってのはそういうもののかたまりのようなもんです。
そしてね、それに輪をかけるように例のご飯物を頼むとついてくるスープ。っていうかそばつゆ。あれをかけちゃうんですよ「カレーかつ丼」に。バカだねえ、あたしは。濃い味をもっと濃く。いかんなあ、肝臓とかに効いてくるなあ。でもやめられないなあ。これたまらんのですよ。
この「カレーかつ丼」にはありったけの愛を以て「バカメニュー」の称号を贈りたい。
「バカメニュー」「バカな食べ物」は幸せと隣り合わせなのです。
そういう幸せがわたしは好きだぞ。