正直にいうと、ここのところ欧風カレーのトピックがあまりないと感じていたんです。悪いことではないのかもしれないけと。つまりそれだけ老舗、名店が安定して営業を続けてくれている証拠でもあるから。
カレーですよ。
各国料理ではなく、ニッポンのカレーライスの王としての欧風カレー。その最上にあるのがビーフカレーだと認識しています。いささか古い考え方と思うところもあるけどね、でもやはり食べるとその圧倒的な存在感にひれ伏してしまうわけですよ、ビーフカレー。それも上質なやつね。
そんな欧風カレーにトピックが飛び込んできたのです。新店情報。おどろいたよ、あのガヴィアルが、なんと麻布十番に。驚きのロケーションです。
「ガヴィアルプラス」
という名前。
「ガヴィアル」 は1982年創業。手間のかかる欧風カレーの仕込みを丁寧に丁寧に続けて今があります。本店の神保町交差点角の店とコレド室町に2店舗目。本店は一度移転を経ており、その移転でカレーの街、神田神保町のど真ん中に店を構えるというやり方、矜持のようなものを感じずにはいられません。
そして今回、
「ガヴィアルプラス」
の名前で新店舗が開くのです。ガヴィアルのホームページを見るとこんな説明がありました。
「厳選した贅沢な素材を使用し、和牛ビーフ・国産ポークを、柔らかくなるまでじっくり煮込み、アサリ・えび・ホタテは、それぞれ焼いたときに出るスープを加えており、チキンは、カリカリに焼き香ばしさを加えるなど、素材に合わせて最適な組み合わせや調理法を用いて、美味しさを引き出します。他店では味わえないガヴィアル独自の世界をぜひ一度お楽しみください。」
なんともはやワクワクとさせられるわけですが、今回「プラス」の名前が付き、ますます期待させてくれるんです。
まずはサイドディッシュがあるんだよね。フレンチシェフ特製の贅沢ミニディッシュ、ということで、「タコとサーモンと砂肝3種盛り」「魚介と季節の彩りサラダ」など選べるのはとてもいいですね。ただカレーを食べて、では勿体無いお店だから。前菜とワインなど楽しんでのちのカレーなわけですよ。デートで使えるレストランです。
さて、カレー。
この夜はトライアルであるため、レギュラーメニューの中からスペシャルな具材をこれでもかと詰め込んでくださったすごいのが出てきました。極(きわみ)メニューの2種からそれぞれほたての貝柱と極上黒毛和牛を投下。さらに野菜とエビも入ってます。うむうむ、贅沢の極みであるぞ。
カレーソース、これはいわゆる嗜好品だよねえ。デイリーで食べていたらバカになってしまいそうな、ただもう悦楽のために食べるべき享楽のカレーです。なんというか、尊さと不埒さをを同時に感じるもので、まずご存知の通り、甘いんです。
ただ甘いのではなく、口を、舌を、脳を甘やかしてくる甘さとでも言いましょうか。楽しませてやろう、夢中にさせてやろうと迫り来る嗜好品。クセにならずにはいられないのです。ああ、危険。
そして特別に具材が多いこのカレーをつまみにしつつ、強い香りと少し痺れるような酸味ふくよかさのワインで舌と脳にリセットをかけながら、至福のカレーソースを自分の気が狂わない程度に調整、少しづつ口に送り込んでやるわけです。
この幸せが終わってしまうのが目で見えるこのつらさ(お皿を見ながら食べてるからね)。本当につらくなってくる自分の心持ちが面白いわけです。好きすぎるぞガヴィアルの高級欧風カレー。
ビーフのブロックを小分けにせず口いっぱいに頬張る背徳感。ああ、と小さく声が出ちゃいます。こういうのを知ってしまうと本当に困るんだよ。後戻りできないからさ。
カレーという幅が大きく曖昧な輪郭を持つ食べ物の中において、一つの峰の頂上が多分この味。そういうものがわずか2000円切る程度で手に入ってしまうのは本当に危険で、嬉しいことです。あなたも気をつけて。
7/7、麻布十番にオープン。
「ガヴィアルプラス」の名前、忘れるべからず、です。