カレーですよ5386(蔵前 アンドシノワーズ)レストランではなく研究と編纂の場。その貴重な立ち位置。

 

やはり、良い体験ができました。レストランの話しでのっけから「体験」というのもなんだよなとは思いますが。

 

 

カレーですよ。

 

 

それはつまり、美味しいとか美しいを越えてくる体験というものがあるな、と前回と同じく感じられたから、だからそういう言い方になるのです。レストランという言い方も少し不安になるんだよな。あそこはレストランではなく、空間。移転前の場所はまさに空間であり、オフィス街にぽっかり空いたインドシナ半島、フランス領インドシナ時代につながる穴でした。いやほんとうに。

今度の場所はそれを突き詰めるためのラボという雰囲気になったと感じています。

 

「アンドシノワーズ」

 

の話しです。

予約と行列が大の苦手なだらしないわたしなのですが、友人が声をかけてくれて末席をいただきました。なんというありがたさ。「アンドシノワーズ」が岩本町から蔵前鳥越神社そばに引っ越してからはじめてのおじゃまとなりました。

古いビルが不思議なリノベーションを施されていておもしろかった。元ある古い階段の上にコンクリートを直接施工してカサ増しとでもいうのかしらねこれは、階段を地層のように厚く重ねて作ってあるんです。こんなのはじめてだなあ。別に「アンドシノワーズ」のおふたりがこれを指定したわけでもないんでしょうが、なんというか、入り口にに立つ前から「らしいなあ」とか思っちゃうんですよ。

例によってエレベーターなしの4階という環境にちょっと小さな笑いが出ます。それというのもね、これはもしかして「アンドシノワーズ」のお二人の意図なのではないか、お客のからだを少しフィジカル方面に開いてやる儀礼的なものなんじゃないだろうか、なんてね。そんなことを考えているところからして、料理の皿にたどり着く前にわたしはすでに健さんとあずささんの手のひらの上にいる、そういうことだとおもいます。もう楽しいわけです。

さて、お誘いいただいた重谷さんとも久しぶり。彼女の友人たちとは初めまして。楽しいテーブルとなりました。いつもどおり、大皿料理を取り分けるスタイルが現地のテーブルを思い起こさせます。さあ、いきましょう。

 

本日のおつまみ

インドシナの居酒屋の料理から一品をご紹介 / つぶ貝

 

カンボジア式 水蛸の前菜

シャム湾を望む海辺の漁村コッコンの味

 

南部ヴェトナム式 ゴイ・バップ・チューイ

バナナの花のつぼみの和えもの、海老、コールドポークと一緒に

 

南部ラオス式 ピンガーイ

瘤ミカン、レモングラスで香りよく焼く南国の焼き鳥

 

南部ラオス式 白身魚のラープ

ハーブと一緒にかるく茹でた魚をガランガル、葱、香菜などと和えた南部の味

 

インドシナ華僑式 蛤のスープ

レモングラス、薫製トウガラシの出汁

 

ジャスミンライス

季節のインドシナ料理といっしょに

 

ココナッツプリン生姜シロップ

どれもハーブ遣いが印象的でおもしろかったねえ。白身魚のラープなど、ごはんにあわせるわけですが見た目まるで「はっぱごはん」という体。これはちょっとなんだろう、驚きがあります。フレッシュの葉っぱをごはんに乗せて頬張る感じ。食べると未体験の味と香りの組み合わせが押し寄せてきておもしろくて仕方がないんです。目から鱗が落ちる思い。その土地の土と水と人。そこにフォーカスが絞られています。ああ、もうたのしいったらありゃあしない。

相変わらず素晴らしい料理です。でも、ただ料理とかレシピとかそういうものでななく、おふたりの研究と経験、そこからの知見を元にした理由ある料理が出てくるんです。圧倒されるよね。

できることならば対面でこの料理がどうやってわたしの手元の皿の上にやってきたかを聞きながら食べたいくらいです。そういうものが次々とやってきました。

本当に久しぶりで、前にお邪魔した時にはあまりおしゃべりができなかった園健さんと少しおしゃべりができたのが何よりも嬉しかったな。彼の冒険のスタイル、山行き、道行のスタイルがとても好きなのです。そんな話が少しできて大きな満足がありました。あずささんも変わらずテキパキで気遣いもあってカッコいい。

 

なんと快適な場所だろうなあ。