正直驚いた。このチューニングセンスはかなりいいセン行っていると思います。古い知り合いが出したお店だから言っているんじゃ断じてない。
カレーですよ。
久しぶりに連絡をくれた顔見知り。むかしのデジタルガジェットや映像で遊んでいた仲間です。あだ名そのままの屋号が何だか彼女らしくて頷いてしまったよ。カレーの人と覚えていてくれたおかげで新規開店の前に連絡をくれたんです。
そのときは残念、都合がつかなくてプレオープンのシミュレーション営業に付き合えなかったのですけど開店2日後、さっさとお店を訪ねました。いや、なにしろ驚いたことにわたしの活動拠点、神田岩本町のデジタルキッチンから徒歩5分なんだもん。楽しい縁がまた繋がったぞ。
「タジー食堂」
というお店です。
コンセプトは日本の美味しいお米で食べるタイ料理。ここにぴたりと着地させてきています。いやまいったぞ。なんか本気度が違います。
注文したのは、
「Half&Half(コシヒカリ玄米冷茶付)」
というセット。
「野菜グリーンカレー」「野菜レッドカレー」「鋼出汁米麺」「チキンガバオ」「鋼出汁米麺」「トムヤム海老米麵」から2つを選びます。「野菜レッドカレー」と「トムヤム海老米麵」を選んだよ。
まずは「トムヤム海老米麵」。もともとトムヤム味のラーメンは日本人の発明みたいなとこがあるわけで(高田馬場が本拠地の日本のタイ料理チェーン、ティーヌンが発祥とされています)、食べれるとわかるんだけど、これは正真正銘のメイドインジャパンだよ。
まずはスープの良さに圧倒されたんです。これすごい。上品なんだよね。海老出汁の効き具合が絶妙でおかしなデコボコやエッヂを感じさせないまろやかでよいもの。タイ料理なのに出汁の表現にニッポンテイストがみえるんです。いやあ、一滴たりとも残せない美味しさだったね。日本の繊細なラーメンと似た感覚を覚えます。すごい、すごい、これはフルサイズで集中して食べたいやつだ。
使われている米麺も特筆です。農家と共同開発をした日本オリジナル、タジー食堂オリジナルなんですよ。新潟上越の蕎麦工場で別注。「亜細亜のかおり」という日本生産の米を使ってます。輸入の乾麺ではなく純国産の生米麺。ええ〜そんなの聴いたことないぞ。どうりでふんわりつるりとしているわけだよ。
カレーも面白いんです。レッドカレー。ゲーンペッと思いがちでしょ?味、作りの組み立てが違うことに食べるとすぐ気がつきます。鯛出汁と炒め玉ねぎで甘く仕上げてあるんだこれが。だから名前を「和製レッドカレー」。あの赤くて辛いタイのゲーンとは別のもの。「トムヤム海老米麵」もそうなんですが、タイ料理のエッヂをね、取り除くのではなくて丸めてやってそこに日本人の舌が喜ぶ付加価値(丁寧な出汁や素材使い、旨みなど)を与えてやっての完成。センスいいなあ。
辛くないですよ。辛くするのがもったいない味に仕上がっているからね、これでいい。
ごはんは国産インディカ米「プリンセスサリー」。炊き方で大きく雰囲気を変えるお米だと思うんですが、ちょっとこのごはんの仕上がりはね、食べ物やってる人は勉強しに行った方がいいと思うくらいすごい炊き加減だったよ。これは食べないと伝わらないと思います。
ホームページには
「タジー食堂」はアジアエスニックの進化版です!タイ料理のワクワク感×国産の素材や出汁の美味しさ×心も体も社会も元気に=アジアエスニックの進化版!」
とありました。うんうん、なるほど。食べ終わってすごく納得がいったな。タイ料理のお店と間違えてはいけないんです。そうではなく、唯一無二のこのお店の味とやりかたなんだよ。タイ料理はタイ料理店にいけばいいんです。タジー食堂の味はここでしか食べられないし、この味がいい人にこそ代えのないものだとよくわかるんです。
パッケージはカジュアルで可愛らしくやっているんですが、騙されてはいけないよ(笑)。上手に敷居を下げながら実は中身、結構なごりごり尖り具合。味を尖らせるという話しではなくて。コンセプトに忠実に、忠実すぎるくらい突き詰めて料理にぶつけてきているなあと感じます。レベル高く、ちゃんと裏打ちあるものを揃えてきているんです。
モダンインディア、ネパールモダンなどそういうものが言葉として出るような2024年なわけです。タイ料理は悪い意味でちょっと色々いじりすぎている時期が長く続いたよね。カフェ飯、アレンジ、タイカレーという言い方。ここでタイモダンと言ってしまうと使い古されてるよね、と思う輩もいましょうが、それはちょっと見識が低いというもの。新世代のタイのカジュアルモダンがここにあった。そう感じています。
まだまだスタートを切ったばかり。これからもっともっとブラッシュアップされるはず。順調に育ったら大化けするんじゃないかなあ。たとえばジャンルを作る存在とか。
楽しみに通うよ。