はじめて入るトンカツ専門店でいきなりカツカレーを頼むのはなかなかに勇気がいるものです。いや、メニューに載っているのだから堂々としていればいいんだけどね。
カレーですよ。
誰も見ていないのに、お店の人がニコニコしているのに「お前はなにをやってるんだ。まずロースでも頼むのが礼儀だろう」など耳鳴りが聞こえるわけです。それはとても正しい。が、しかし、カツカレー。
河口湖から石和温泉に抜ける御坂あたりをちょいとそれた20号近く。あまりお店などない場所での19時過ぎ、白くて清潔な暖簾にアクセルがゆるみました。
おなか、すいたなあ。
「きっちん成田」
の建物には大きく「とんかつ」という文字がかかげてあります。トンカツの専門店のようだね。大きくてきれいな作りのお店です。座敷がメインで、その畳敷の中にひとつだけ座卓ではなくテーブルがありました。腹が出た大柄な男はこちらの方がよかろうとおかあさんが気を利かせてくれました。うんうん、ありがたい。
そして結論から先に。アタリであったぞ。オオアタリに近いと思う。カレーソースがきちんとしていたからです。大変おいしかったのだよ。
まずは前出の席に案内してくださったホールを仕切るおかあさんの丁寧な対応がとてもうれしかったのです。気持ちがゆるむようなやんわり対応、ふんわり声かけ。それでいてちょいとへったお茶への目配りなど抜かりがなくてね。
なるほど、いいお店だ。安心感があるな。さて、
「カツカレー」
がやってきました。いや、カレーがやってくる前に漬物がやってきました。そしてこの旨さたるや。
トンカツ屋の漬け物、旨いことが多いです。自店でちゃんと漬けているお店などその味に個性が出て楽しいんだよな。ここの漬け物、特筆です。なんとも優しい浅めのぬか漬けでとてもおいしい。鰹節と醤油をたらして、というのもいいし量もちょいと多いのが嬉しさ込み上げます。ああもう、なんともはや。こりゃあたまらない。
たまらなくなっているところでカツカレー登場。これまたおいしい。
まずカレーソース、すごくいいなこれ。酸味がまずくる爽やかな仕立てでスパイスが華やかに香ります。ほのかにバター、クリーム的なボリュームも感じさせてきてね。なのにあまりどろどろとさせず重くないのです。きちんとお店で作ってるオリジナルだよねこれ。これはいいカレー。
カツも当然旨いです。衣をあまりガリガリにしないタイプのロースカツ。これがいい、好みだわ。あんまりガリガリからりとさせずにこのくらいの感じがカレーにはちょうど合うと思うのです。脂身のお楽しみもちゃんとあるよ。おいしいよ。
あとね、カツがごはんの頂上にのせられているのもグッド。カツがカレーソースに浸ると浸らぬの絶妙な間合いでごはんの上に鎮座するのです。これ素晴らしい。浸すも浸さぬも、カツの行く末を客に委ねているということ。これがいいのよ。こういうのが欲しかった。
福神漬けも効果的でちゃんと役割を持ってそこにあると感じます。存在する理由があるんだよね、ぬか漬けと別の。
なかなかに理想的なカツカレーをいただくことが出来ました。
おかあさんは相変わらず最後まで優しく、自分のお店の料理にちゃんと自信を持って説明などしてくれます。ご店主もキリリとしているが腰低くにこやか。なんというか、この土地の、山梨の地場の良さを思い知る感がありました。
また立ち寄ろう。かならず。