いつも通り、行き当たりばったりの旅なのです。なのに面白そうなお店を見つけてしまうのよね。なぜなのか。
カレーなしよ。
だから旅はやめられないんだよね。
この日はカレーなしにしました。ハンバーグ、いや、ハンバーガーであるぞ。静岡県でハンバーグとくればご存じの、
「炭焼きレストランさわやか」
となります。もういいかげん周知は隅々に行き渡っており知らぬひとがいない静岡屈指のハンバーグレストランチェーンですね。
そういうこともあって行列必須、そうなるとちょっと足が遠のくわたしなんです。予約と行列のある飲食が苦手なのよ。だから食べたことのないお店なんかは数多いです。予約だったら行かないでいいや、行列だったら牛丼やさんに行くかあ、というスタンス。知り合いの行列店の店主の皆様、本当に申し訳ありません。
で、浜松の内陸側で見つけたこのお店。お店の前にいると倒れそうになる程いい匂いがします。ハンバーガーのパティを焼く匂いだね。ここ実は「さわやか」の商品開発責任者として22年間、腕を振るってきた森藤オーナーシェフの店なのです。フランス料理のシェフ経験からのさわやかでの商品開発、その後に独立してここ、
「モリズバーガー」
をオープン。人気店なので行列はありましょうが、タイミングよくオープンすぐに入って快適に食事を楽しめました。カウンターとテーブル席があるのでひとりでも気兼ねなく落ち着ける快適な店内、居心地よいですねえ。隅のテーブル席に陣取りメニューをじっくり睨みます。
実はすごく迷ったのです。なんでかっていうとね、新メニューということで「ロコモコ」があったんです。それってつまりごはんの上にハンバーグが乗ったアレであり、つまりかなりあの店のハンバーグに近い構成なわけじゃない。ああ〜こりゃいろいろ興味深いなあ。本当はハンバーガーのパーツをバラしてパンを差し引きごはんを足した、という組み直しなわけだと思うんですけどね。でもそう感じてしまうんだよなあ。
そしてはじめからそっちにいっちゃあいかんだろう、と考え直すわけです。まずはハンバーガーショップであるこのお店のハンバーガーを知らねばいけない。そうだよね。きちんとひとつづつ焼き上げるので時間がかかりますがまったく気にならないな。むしろその時間が期待を高めてくれるわけです。さてやってきたのがこれ。
「アボカドバーガー」
まずは、肉ウマ。う〜ん、こりゃあたまらない。手仕込みの手切り肉を使ったパティはパッカパオの「ひき肉ではなく叩いた肉が正しい問題」を思い出します。手切りでたたき肉とした部分と部位とかたさによって機械ミンチも織り交ぜてバランスを作っているんです。理由あって正しく手間をかけるというのは、正義だよね。
だらだらと重い肉汁垂れ溢れまくるやりすぎのああいうやつではなく、肉汁あれど清楚な感じが素晴らしい。しつこくなくて、だからこそともすれば存在感が希薄になりそうなところをしっかりと「ここにいるぞ感」も出してきています。それ以上に全体の構成要素のひとつとしての融合感の方が強く、ハンバーグではなくハンバーガーであるから、すべてのパーツが揃ってかつ一緒に口の中に投入されるからこうあらねばというのが見えてくる気がします。
自家製のバーベキューソースの適度な甘味とそれを抑える感じに効いてくるマスタード。このマスタードの具合が実にいいんですよ。ビリリもありさわやかな酸っぱさもありで食体験をもったりさせません。バンズもこれまたオリジナル。特注で全粒粉ミックス無添加と妥協していません。茶色く艶があるバンズは大変に魅力的。チェーンハンバーガーのしょんぼりバンズとは訳が違うんだよ。
ハーブ感があるスープもよかった。おかわりもできる嬉しいもの。スープのおかわりは特にこの季節、本当にありがたいですよね。
セロリの強いスープで個性があってとても美味しい。ああ、いいなあ。
美味しいハンバーガーを食べるとき、こんなご馳走をこんな乱暴なやり方で食べるなぞなんてもったいない!コンニャロコンニャロと思ってしまうんだよね。つまらない味のよくあるハンバーガーでは全くそういうことは思わないですけど。それくらいうまいんです。
そして結局「ああ、やっぱりハンバーガーとして生まれたものはぎゅっとつぶしてがぶっといくのが幸せなのだ」と思い知るわけです。
(ナイフフォークの用意もあるのでご自由に、ではあるけどね)
大変いいものを食べてしまったなあ。
今度さわやかに行ったら必ずここの味を思い出しちゃうんだろうなあ。おもしろいなあ。