カレーですよ5401(群馬藤岡 セリムカレー)ビター&ディープ。

宇都宮の手前、古河あたりにいたのです。例によってうまいカレーを探していたのです。いつも通りです。

 

 

カレーですよ。

 

 

最近はどうも北関東あたりは、いろいろ調べてもインド亜大陸周辺国カレーのお店が多くを占める感があります。喜ばしいことである一方、増えすぎていると感じるところもありジャパニーズスタンダードや独創的な日本人個人店の味がなかなか見つからないという感覚が強くあります。。

そんな思いと共にお店探しをしていたら、うっかりと2時間超の彼方に良さそうなお店を見つけてしまったんです。そう、現在位置は茨城県古河市。そこから2時間の彼方、群馬県藤岡市のカレー店をリコメンドしたということ、自分自身に。なので、いく。いくんだよやっぽり。

度々自分を戒めることがあります。東京が、都市部がスタンダードではないということについて。日本は広いのです。大都市部なんてのは日本全体の面積で言えばたかだか5%ほど。それ以外は地方都市と郊外なのです。あとは山林とかね。忘れてはいけないんです、そういうこと。そんな基準を自分の中で意識しながらも地方に出るとやっぱり夜が暗いと感じてしまいます。東京に生まれるとねえ、ズレるよねえ。いや、夜は暗いのがあたりまえだぞ。

 

そんな暗い夜道の向こうにぼんやりと灯りが灯り、目的地が見えてきました。

 

「セリムカレー」

 

というお店です。

欧風カレーの専門店。欧風カレー、ジャンルがもうひとつ明確ではないと感じています。洋食店のカレーと食堂のカレーと欧風カレーは違うものです。その線引きが上手くない表記をよく見かけて気になっちゃうわけです。ここは間違いなく、欧風。なにしろ、なにしろね。

おっとそんなこと言ってないで注文だ。

 

「特製黒ハンバーグカレー」

 

をお願いしました。これが抜群においしくてさ。きちんと個性的だったのですよ。

大変に驚きました。カレー、とても手がかかっていることがよくわかります。かなり焙煎を深くやっているようで、スパイスやその焙煎から来る苦味が大人っぽいドライな味わいを作り出す仕上がり。もちろんただ苦いのではないんです。奥行き、深みがあって色々と舌で感じ頭で考え、何かしらの表現をしたくなるような、そんな、なにかを引っ張られるような魅力的な味なのです。

一所懸命考えて、誰かにすんなりと伝えたくて(食べねば無理なんですが)、それで何かに例えてみたくなります。わたしならビターチョコレートのフォンデュでハンバーグを食べているような体験、なんて例えてみたりします。ただそれだけじゃなくて、そこに旨みだったり奥行き、コクなどが寄り添い太い背骨を成しているんです。これはすごいものだなあ。

ビターとくれば神田神保町の共栄堂を思い出しますが、あれともニュアンスが違うんですよね。カレーマニア諸氏は一度体験しておいた方がいいと思うぞ。

ハンバーグがまたすごくて。香り付けはクラシックなナツメグやローレルで好感を覚えてしまうんです。しかし食感と肉感。ふわんふわんで肉汁がこれでもかと綴じ込められていて圧倒的。いやこりゃたいしたもの。カレーの上にはレーズンが少しのります。テーブルにはらっきょうと福神漬け。これもクラシックでいいね。らっきょう、きちんと選んであるなあ、という味がします。わかります。

それはつまり、酸味控えめで甘み強目のらっきょうと、甘く風味強いレーズン。これがビターなカレーの中で生きてくるわけです。合わせて食べると全体が生き生きしてくる、とでも言いましょうか。落ち着いたどっしりした味体験に躍動感が出てくる感。ああ、なんと楽しい。

そしてさきほどのなにしろはなんだったのか。そりゃもう何しろ店主の山本さんはご存知ボンディでの勤務経験もある人。そりゃ間違いなく欧風カレーだよ。そりゃそうだ。

わたしが最後のお客になってしまって、美味しかったことをお伝えして、そこから楽しいおしゃべりの時間となりました。こういうの、ひさしぶりだなあ。耳を悪くしてすっかりこういうのを忘れていました。こういうコミュニケーションこそ外食の楽しみだし、こういうのがあるからまたそのお店に行きたくなるんです。

お店のおふたり、感じよかったなあ。