本当にさらば、なのか。ちょっと信じられないのです。
カレーですよ。
飲食店との別れは往々にしてそんな感情に襲われるものなんですが、西荻窪の「タリカロ」はそういう気持ちをもっと強いところ、高いところで越えてきて、とてもつらい。
少し知ってはいたのですが、自分の耳でリカさんから直接聞くまでは、と思っていました。その日、リカさんの口から「カレーはもうやらないと思います」と聞いてしまった。だから、本当に最後のタリカロです。さらば、タロさんの味、タリカロの味。
もっと行っておけば、とか今更言ってはいけないのです。ただもう黙って見送る。それでいいとおもっています。
理由も聞かない。ふんわり聞こえてくることもあるでしょうが、それはいい。いらない。ただ受け入れて、次が来ないように心を鍛えるのです。また好きなお店がなくなった時のために、心を鍛えるのです。
金も稼ぐよ、食いもんにもっと使えるようにね。好きな人にもっと使えるように、ね。
そうやって鍛えあげていって、でもこの気持ち、喪失感ははいつまでも同じなんだろうなあ。