増田社長がイオンモール幕張新都心のセンターコートで講演をすると聞きつけました。そりゃもうね、一も二もなく駆けつけることになりますよ。
カレーですよ。
千葉市経済農政局が牽引する、千葉市の事業者によって創られる「食」のブランド「千(せん)」という取り組みがあるのです。食の地域ブランドを創生しようという2020年から始まったプロジェクト。その取り組みの一環のイベントだそうです。
2日間のポップアップで同ブランドに選出された食品やアクションなどの販売や展示などがありました。そうそう、千葉はね、土地の力が強いと思っています。農水産物に銘品が多いんだよ。そうなんだけど、なにしろ東京の隣で、近すぎて割とみんな気にしないっていうか。北海道とか九州の農水産王国に目がいっちゃう人も多いんですが、千葉、侮れないんだぞ。
ここで「シタール」は地元産の食材を使ったバターチキンカレーの冷凍製品を出品していました。地域に深く根を下ろす「シタール」のストーリーやその背骨、製品への思いなどを増田社長の口から直接聴かせていただくというステージ。大変に感銘を受けました。
スライドに出てきた開店当時のお店の前に佇む増田社長と奥様の若い頃の写真がどうにもカッコよかったんだよねえ。しーさんなんかもう、すごいオーラ出してる。超かっこいい。
で、あんな美味しそうな写真を目の前のスクリーンで見せられてそのまま帰るというわけにはいかなくなるわけですよ。
もちろん覚悟してました。それで、ステージのあと
「印度料理 シタール」
へ迷うことなく向かいます。いや、少し迷ったの。とにかく人気店であるわけで、日曜のランチピークタイムを回ってはいましたが、まだまだ行列も長かろうなあ。
辿り着けば予想通り行列には10数人。うむむう。が、上手い切れ目だったのか、1人客だったからか、きっと両方だと思うんですが20分ほどで席に着くことができました。ああこりゃ嬉しい誤算だね。ありがたいです。
そして席に着くわけですが、客席の活気に圧倒されるんです。なるほど日曜の午後はこんな感じなのかあ。お客さんがみんな楽しそうで、こういう感じは悪くないねえ。前回はディナーで遅い時間に訪れたのでわりとしっとりとした空気だったから、余計このギャップに楽しさを感じます。
ホールのスタッフの皆さんが、混雑しているからこそいつも以上にかっこいいんだこれが。無駄なく、頼もしく、しかし雑にならないやんわりした接客で次々とお客のリクエストを捌いてゆきます。決まり事ではない連携ができているのが側で見ていてわかるんだよ。それがもうなんか気持ちいい。
お客の案内からオーダー、配膳、リクエストへの捌き、下げもの会計まで流れるような連携が見えました。みなさん、目がいいのだな。これはつまり飲食業のホール仕事における目配りの良さのこと、です。小気味良いとはこのことだな、と独り言。うむー勉強になるぞ。
さて、もうオーダーは決めてありました。決めてあったんですが、席に案内される前に椿事がひとつありました。今年分の運を使い切ったんだと思われます。
「シタール」の行列に並んだことがある人なら知っている「並ばせちゃってごめんなさいね」の気持ちのくじ引き。あれでいつもの野生黒はちみつのキャンディをいっこもらえたりするのがとてもうれしいんですが、何気なく引いたくじ引き、大当たり。一等賞であるよ。えええ!そうなの?
スタッフさんも「これ、1枚しか入ってないんですよ!」と驚いていました。わたしもすごく驚いたってば。増田社長のご加護であります、絶対。あ、ヤラセではないよ。本当に偶然。いやいや本当に驚いた。
それで、注文は土日祝日限定のランチメニュー、
「ホリデーセット」
でカレーをベジタブルとバターチキンで決めます。
ただでさえタンドリーチキンが2ピースついて来るボリュームあるこのセットにくじ引きで当たった宝物、
「タンドーリミックスグリルS」
がやって来るわけですよ。大変だよテーブルの上が。
SとついていますがちっともSサイズではなくてね、チキンが4ピースも乗ってくるんです。その中に大きな骨付きのものまで入っており、さらににシークケバブ2ピースとアチャールサラダ。この分量は生ビール中ジョッキ2杯、いや3杯いける分量であると推定されます。大変なことになったぞ。なんというか、1人でパーティーバーレルみたいな状態なのであるよ。
こうなるとなにもないのはちょっと手持ち無沙汰になっちょうもんねえ。あいにくのクルマですが、ノンアルコールビールがあるもんね。抜かりなく注文します。日曜の午後的なものを越えるパーティーディナー的テーブルとなっちゃいました。お大尽の食卓、食べ過ぎであるぞこれ。タンドール料理は少し手をつけつつも大半を持ち帰りに包んでもいました。ありがたや。
「シタール」の料理はやはり美味しいんです。バカみたいだね、当たり前のこと言っちゃってる。なんというのかなあ。美味しいという言葉で簡単に済ませてしまうのが勿体無いくらいそれも美味しく興味深いもので、作り手の思いこだわりがこもっているのが伝わってきます。
なかでも「シタール」のバターチキンはとにかく個性的だし美味しいし、唯一無二の味。インド料理を食べ慣れた人ほどその面白さや個性に考えをたくさん巡らせるのではないかと思っています。
「バターチキンは甘いよね」と単純に例える人も多いわけですが(間違っていない)味の要素としては甘さ、酸っぱさ、乳製品のどっしりした旨味奥行きなどが主な構成要素だと思います。もちろんここにスパイスの要素も加わるわけで。それで、よくあるバターチキンカレーはこの要素の中の甘さと乳製品を強調するのものが多いんです。だから「甘いよね」の感想になるんですね。
しかし「シタール」のバターチキンは味の構成要素をレーダーチャートにしてみると、酸っぱさとコクの方を強めにしてあって、結果、チーズ的な印象の味わい、「シタール」だけのバターチキンのバランスを作り上げているのだと思っています。これが本当にクセになってまいってしまう味わいなのよね。本当に一度自分の舌で体験してみて欲しいです。
ベジタブルカレーもいいなあ。こちらは打って変わって素朴な感じの野菜煮込みです。素朴、と書きましたがそれはバターチキンと相対してということです。バターチキンは一種ソースに近い作り込みを感じます。この皿の上ではカレーの体を成していますが、たとえば主役に肉や野菜を置いてそれに寄り添い少しかけてやるような引き立て役にもなり得るものを持っています。それくらい、強い。
ベジタブルカレーは野菜のスパイス煮込みでありニュアンスとしては味噌汁的なキャラクターを持っていると感じます。輪郭はふんわり、だから毎日食べたい、と思うようなもの。大変好みです。
サブジもよかったねえ。季節で野菜の種類が変わっていく野菜の炒め煮。良いおかずです。サラダも個性的なのですよ。ホールを仕切る若女将(増田社長のお嬢さん。シタールで彼女のポジションを考えるにこの呼び名が一番しっくりくるなあ)であるりえこさんのリコメンドでナーンにこのサラダ、アチャールサラダというマリネサラダなんですが、これを挟んでね、と。それ、大いに賛同。
わたし、実はナーンはカレーに浸して食べるスタイルをほぼしないのです。ナーンはやっぱりサンドイッチに使いたいんだよ。インドレストランでナーンの選択しかできない時は(ごはん派なのであるぞ)必ずサラダをサンドして食べます。大変に良いマッチングとなるのです。この日は豊富にあるタンドリーチキンも挟んで贅沢に。とても美味しい。
実は。あまりやる人は多くないはずなんだけどね、お教えましょう。このチキンを挟んだサンドにひと筋分、野生黒はちみつを垂らしてやるのです。これがもう最高なの。ぜひお試しを。
とにかくやはり満足感の嵐。このクオリティ、このテンションがいつ行っても同じくやってくるというのはただ事ではないと思っています。
名店と人が呼ぶ店には必ず何か理由があります。その理由を一言で言い切るのは、難しいのです(だからいつも長文)。