こんな親切なお店があるだろうか。幡ヶ谷の「スパイス」はわたしのカレーの実家であります。
カレーですよ。
いつものようにお店にスーッと入るとおかあさんが迎えてくれます。すぐに水が出てきて注文をして。いつも通りなので何も見ず、何も迷わずの、
「エッグ付きポーク&チキン」
とおかあさんにつたえます。
さてと。腰も落ち着いたところだけどそうだ、お手洗いを借りよう。声をかけてお手洗いに入ろうとすると、おや、もうカレーは完成、席に運ばれようとしているところでした。「テーブルに出しちゃってください」と声掛けをして手洗いを使い、戻ってみると。
ラップに包まれた「エッグ付きポーク&チキン」がわたしのテーブルに鎮座しているではないですか。なんということ。席を離れたその時間約1分。たったそれだけの時間なのにラップをかけてくれているのです。こんなお店ほかで見たことがないぞ。
サービスではないんだよ。カスタマーサービスなんてものではないの。これは「親切」というものであるよ。親切にしてくださったのです。
カスタマーサービスなんてのは、あれは商売だよな。ただその中に商売を越えるなにか魂があるものが時たまあったりします。きちんとしたホテルなどにもうっすら見えることがあるかな。それと、老舗や古くからやっているお店にはそういうものが宿る時がわりとあると思っています。
そういうお店をわたしはとても大事に思うし、そういうものが普通にあった時代の生き残りがわたしでもあるのです。そういうものは、いいものだよね。