2025年6月末日で町田の名店、「リッチなカレーの店 アサノ」は旧店舗を閉じることとなりました。
あの町田仲見世商店街の奥のそのまた奥にある、ほんとにこんな路地に店があるのか、といぶかしむようなカニ歩きでしかすれ違えない細い細い路地の奥に位置する「リッチなカレーの店 アサノ」はまもなくその場所に存在しなくなる、ということです。
カレーですよ。
大変にいとおしい古くて小さな店。
カウンターに5〜6人すわればもういっぱいと言う程の、狭いけれどしかし大変に快適で偉大なお店です。「日本一のカツカレー」という称号をその実力で手に入れただけのことがあると思わされます。食べればその日本一の理由が一瞬にして理解できる完成度。価値あるカレー店です。
そんな言葉ををわたしが繰り返すまでもない、素晴らしいお店。
「リッチなカレーの店 アサノ」
は移転となります。現在のお店から3分ほど、商店街を出て道の向こうのビル2階に決まっています。現店舗を稼働させながら並行して新店舗の準備が進んでいるそうです。大変なことだよ。大変なのはほかにもあって。この場所、「町田ターミナルプラザ」2階にはなんとカレー専門店がすでに3店も入ってるんですよ。「ベジ・フル・スパイス」、「ロックなカレー屋 YASSカレー 」、「和だしカレー専門店 かれいや」。大変だなこりゃあ。あ、あれ、西荻窪にあった「パパパパパイン」があるのかあ(あったのかあ/とぼけ)。
「リッチなカレーの店 アサノ」は言わずと知れた人気店であり行列必至、なのでありますが行列ギライのわたしですから頭をめぐらせるわけです。平日狙い、この場所での営業最終日は避ける、ランチタイムの終わりくらいに、という三箇条を胸にやってきました。幸い思いが伝わったのか、店内には3人ほどしかお客さんおらず。心からホッとして席につきました。実はそれは一瞬の凪の時間だったようで、そのあとすぐランチの閉店間際までお客が次々にやってきてたよ。そりゃあそうだ。そりゃあそう。
この日は3代目の純平さんとねえさんが店を回していました。浅野さんは新店の方で準備に忙殺されている様子。わたしは久しぶりにこの店のカウンターに立つ純平さんの姿をみたのですが(その前は銀座スイス旧店舗のイベントの時だった)なんというか、こなれ感が強く出ていて自然体で尚且つシャキッとしていて、なんと言おうか、カッコいいのであるよ。堂々としていて自信に溢れています。純平さん、いいじゃん、いいぞ。そうこないと。
もちろん親父さんは超現役なわけで、しかし純平さんがこんなに頼りがいのある料理人になっているのは心強かろうねえ。わたしも心強いです。これで浅野さんが引退してもわたしは死ぬまでアサノのカレーを食べに町田に通えるということが約束されたわけですから。なんとうれしいことでしょう。
迷わずに
「リッチなカツカレー」
を注文。
純平さんが考えたのであろう、知らなかったトッピングの「3種のきのこのアチャール」も追加しました。これ、すごくよかったよ。
純平さんがわたしとおしゃべりを交わしながらも手もと着実にカレーを仕上げていきます。カツが揚がってまな板に乗って。「サク、サク、サク」とリズムに乗ってカツが切られていきます。そうだよ、この「サク、サク、サク」がアサノさんのリズムにそっくりじゃないの。古参のファンとしてはついついニヤニヤしてしまうわけです。そういうのがすごく嬉しいんであるよ。
まずはいつもの漬物が出てきて、これが出てくると「アサノに帰ってきたなあ」と思うのです。
さあ、カレーの時間だ。
アサノのカツカレーの味など、わたしがいろいろ言うまでもなく多くの人が知っており、美味しいと皆さん口を揃えます。カツカレーのイメージはどろりとした粘度が高いカレーがかかったカツ乗せ、というところで多くの人がイエスと答えると思うんですが。
アサノのカレーはそうではありません。わりとさらりとした粘度低めのカレーで、大変に奥行きを感じる豊かな味わい。ジャパニーズカレーはダシが肝だよなあ、と改めて思わされる奥行き。旨み深く、まろやかで角のない酸味が特徴的。
高座豚の薄く仕立てたカツが魅力的な「リッチなカツカレー」をどうしても頼んでしまうんですが、このカレーソースだけを純粋に味わいたい気持ちもいつでも必ずあってね。いつでもチキンカレー、ポークカレーにも気を引かれてしまうのです。
そして「3種のきのこのアチャール」がかなり良かったなあ。きちんと「リッチなカツカレー」とバランスさせてあります。行き過ぎない酸味がカレーソースの酸味と上手に重なっててね。スパイスもカレーソースにちょうどいいプラスで味変アイテムではあるが逸脱がないわけです。隙がないなあ。
食べていると浅野さんが帰ってきました。ちょっとだけだけど顔を見られて二言三言だが言葉を交わせてうれしかった。わたしはきょう、この時間でこのいとおしい小さな店とはお別れだね。
新しい店が開いたら直ぐにお邪魔します。