カレーですよ5537(八王子 インドラ)美しき食卓。

久しぶりに出かけて行った八王子の良店。名物女店主の想いがたくさんつまった快適なお店です。本当にずいぶん久しぶりになってしまったなあ。

 

 

カレーですよ。

 

 

白い壁と細い文字の看板。場所が変わってもイメージはきちんと踏襲されています。2015年に移転して現在の場所で早くも10年。ということは、来年で50周年ではなかったかしら。いやすごい。八王子でインド料理で50年。大変なことだと思います。

店の名は、

 

「インドラ」

 

と言います。

耳をダメにしてから見知ったお店に足を運ばなくなってけっこう経ちます。コミュニケーションがうまく行かないと自分が傷ついたりします。うーん、なかなかに難しい。じゅんこさんのお店も同じく、ね。くればお話ししたいなと思うし、そうなるとちょいと自信がなかったり。

山梨へ向かうときに散々通りかかっているのになあ。でもそういう時は時間帯が悪いんだよねえ、いつも。

それで、久しぶりの移転後のお店。いちど来てはいたはずなんですが。失礼ながらこんなに洒落ていて快適なお店だったか、と目を疑ったんです。改めていいお店だよなあ。センスが良いインテリア、派手さはなくアンティークの衝立や棚にちょっとヨーロッパ志向があったり。照明のトーンが落ち着いていてセンスよかったり。

そういう隅々まで実に居心地が良いんです。

いい加減長いこときていなかったから多分忘れられているはずで、そーっと入って静かあーに食べてすーっと帰ろうと思っていたんです。いたんですが、厨房の前を通りかかるとなんかじゅんこさんがじっとわたしの顔を見ている気がする(笑)。そーっと気が付かぬふりをして席についたよ(笑)

 

まずは注文。ランチのセットを頼むこともしました。マトンカレーと野菜カレーのセット。これがちょっと驚くくらいの個性と美味しさ。舌を巻くうまさでね。

まずやってきたその姿にうむむと声が出ます。よくあるインド料理店のそれととオーラが違うぞ。ターリのセットなのですが、まずカトリのカッコ良さ!縦長なんだよね。普通のカトリよりも縁が高く、シャープな印象を受けます。縦横比で断面は正方形に近いのではないかしら。これカッコいいなあ。なんだかスタイリッシュです。デザートのカトリだけレギュラー寸のものを使っててアクセントになってるね。

 

 

ごはんとピタはターリの上にセラドングリーンとでも言えそうな緑色のお皿を乗せてそこに配置してあります。これも個性的。「インドラ」の、じゅんこさんの美学が見てとれる構成。いい、いいなあ。

 

さてお料理。これもなんというか、「インドラオリジナルスタイル」というものがあるんです。

マトンカレー

マトンカレーに驚き。こんなにあまい味を土台にしたマトンカレーに当たったことないぞ。大変面白いしとても美味しいのです。ジャンルを分ければインド料理なわけですが、50年近くかけて八王子というこの土地とじゅんこさんの個性でインド料理という場所から進化を続けてきたのではないかと容易に想像ができます。肉もうっすらと複雑さを感じさせつつ難しくならない落とし所に仕上がっていて、スジでばらける柔らか美味しい仕上がりです。ああこれ、クセになって困るなあ。

 

野菜カレー

野菜カレーも良いもの。ココナツミルクを土台にしたものかしら。これも甘めに仕上げてあります。大きなカットの素揚げじゃがいもの美味しさに驚愕させられます。なぜこんなにほっくり、脂っこさなくしかし香ばしくできるのだろう。驚いたなあ。にんじんもカット大きく、甘く、幸せな味。満足感が高いものです。

どちらのカレーも確かに少し辛いのですが(辛さの調整可能)辛いもの、カレーを食べているというよりも欧州や東欧の煮込み料理を食べている感があります。わたしが提唱する「みたらし理論」が当てはまるのではないかしら。あまからダイスキ日本人、のあの話しです。

そしてすべからく料理というものはその土地のものであったとしてもどこか必ず他の国の料理と共通する何かを内包していると思っているんですよ。ここの料理はそれを感じさせます。

サラダも楽しいやつ。大根かな。根菜を薄い輪切りにしてあります。少ししんなりさせてあって具合が良いね。これに大瓶でやってくるドレッシングをかけて食べます。「大瓶で」「持ってきてくれる」という部分に特別感をほんのり感じさせるのもうれしい仕掛け。

ドレッシングはオリジナル。実はこの酸っぱいドレッシングをほんの少し、ちょっぴりカレーに混ぜるとなかなか楽しい味変になるんだよ。良い子は真似してはいけないぞ。

ごはんとナーン、、、かと思いきや、パンはピタでした。またもこのおもしろさ。既成概念で固まった舌と頭をほぐしてくれますねえ。ナーンじゃないんだよな。これに好きなものをフィリングして食べて、というサジェスト。ああ、なんと楽しい。

デザートがまた。

フルーツにクリームを乗せてあります。少しのジャムとトッピングにグリーンの干し葡萄。うーん、これもたまらぬ美味しさ。

これはもう、料理すべて、インドカレー、インド料理ではなく「インドラのカレー」、「インドラの料理」でありました。叩きのめられるような食体験だったな。50年近い歴史でこういう進化となるわけです。とても興味深く、詳しく、長くお話を聞いてみたくなります。

女性のスタッフ達も穏やかで気遣いがあり居心地が良いですね。ああ、そうかこの空気。確かに旧店舗から引き継がれて、前以上に磨かれていると感じます。柔らかな空気感に「磨かれる」という言葉はしっくりこないかなあとも思うけど、積み重ねが続いて良いものになっているという感覚を覚えるんです。

じゅんこさんの世界観は揺るがないんだね。だからみんな通うんだ。その気持ち、よくわかる。わたしも同じく感じています。

 

【追記】

じゅんこさんにはやっぱりバレてて(笑)帰りがけにレジで呼び止められました。うれしいなあ、もう。