甘いもんが食べたい。そう思ったんです。甘いもん、カレーで摂取しようと決めました。では、と埼玉を目指すのです。
カレーですよ。
甘いカレーというジャンルがあります。それは既存のカレーのジャンル、枠組みをを一旦解体、まとめ直しするイメージかな。よくある区分け、書いてみましょうか。洋食カレー、インドカレー、タイカレー、欧風カレー、スパイスカレー、スープカレー。ごく浅くちょっと古めにざっくりとジャンル分けするとカレーの種類はこんなものでしょう。
例えばインドカレー。インド亜大陸周辺国にも日本人がカレーととらえる料理はたくさんぶら下がってきます。そして日本各地域に郷土料理があるように広大で多種多様な民族と言語、宗教が根を張るインドにおいては東西南北よりもっと細かく各地域性、民族、宗教、経済、食性などによる特徴あるカレーに準ずる料理が数えきれないほどあるわけです。
そんな中で実際、ラジャスターンあたりに行くと驚くべきことに甘いカレーも存在するんだよね。素材の甘みをなんとかどうとか、ではなく本当に意思を持って甘くしているなあと感じました。いやあ、なんだこりゃと思ったよ。実際食べて体験しました。で、地域で括らず味でくくるというやり方もあろうと考えたんです。
閑話休題。
甘いカレーと聞くと真っ先に思い出すのは欧風カレーではないかしら。それで、板橋系、高島平系以外ってのは欧風カレー、ちょっと輪郭が曖昧だなと思うんですよ。高島平系はねっとり粘度、ジャガイモ付属、シュレッドチーズごはんの上と様式が決まっています。あれはわかりやすい。そこから少し足したり引いたりするとだいたい高島平系と呼んでいい。
その太い流れが1本ね。それと並行して流れる「それ以外」。あえてそんな言い方をしたのですが「それ以外」がなかなかクセモノでね、輪郭が少し曖昧なのです。
黄色いカレーと茶色いカレー、家庭風、洋食店のカレー、カツカレー、フレンチやイタリアン派生、シチューからのアプローチ、ちょっと区分けするのが難しいかもしれない。洋食店のカレーライスはあれは洋食店のカレーライスであって欧風カレーではないと思っています。しかし洋食店がデミグラスソースやブラウンソースベースで欧風カレーを仕立てる事例もあるからね。本当にジャンル分けが難しい。
なので、わたしの場合ですが「高島平系」と「その他」としています。もっと言えば「高島平系」という言い方さえ取り方によって正解か不正解かが変わってくるとも考えているんです。
そんな中、埼玉の川越市に向かいます。鯨井の、
「カレーの健ちゃん」
がきょうの目的地。圧倒的に甘い、しかし不自然ではないカレーライスを出してくれる、わたしが大事に思っているお店のひとつです。
立派な郊外型レストラン。ちょっと南欧風の外観にラフなイラストペイントが味わい深く印象的。店内は落ち着いた雰囲気のホールにセンターの天窓から日差しが明るく入り、クリーム色の壁に濃い茶色の柱というアクセント。通路など広くとってあり、快適です。いいお店だよね。
そんな雰囲気良い店内と対照的なのがセルフシステム。入り口横の大きな壁には飾りっ気のないラミネートパウチのメニューが並びます。ここでカレーの種類や追加、ごはんの量やあまからを選んでデイシャップ兼用のレジカウンターで先に注文と支払いです。合理的でわかりやすいよね。
他の料理だったらどうかな、と思うんだけど、カレーだと「カレーライス」というカジュアルなキャラクターがそういうものを許容してくれる感じでかえって「便利でスマートだよね」という感想になります。
先ほどの天井から光が入るホールのセンターにはサービステーブルが置いてあり、水のピッチャーとプラコップ(セルフだから安全を考えての選択だと思われます。安全安心)、氷の入ったクーラーボックスが置いてありました。コップに氷を入れてピッチャーと共に自席まで持って行くという流れだな、これは。
そののち、配膳はスタッフさんがしてくれます。あとはテーブルでカレーを待つばかり。よし、やってきたぞ。
「よくばり野菜カレー エビフライトッピング ごはん大盛り 辛口」
としてみたのが写真のこれ。福神漬けではなく柴漬けなのが面白いね。
さて、エビフライカレーはいかがかな。
まずはカレーソース。ああ、これだ。この味。不思議な甘さとじわりとやってくる辛さ。甘さ強いんですが不自然ではないんだよ。はじめてのお客さんは面食らうかもしれないね。甘みと魚介の出汁からくる旨みとクセ、そしてあとからゆっくり追いかけてくるほんのりの辛さ。とてもおいしい、おもしろい。いいなあ、やっぱり。すごい好きです、これ。
具材の「よくばり野菜」も楽しいですよ。
ナス、デカすぎであるぞ。大きめナスの半身まるごとだもんね。その素揚げ、熱い。熱いけどうまい。油くさくなっておらず上出来です。こりゃおいしい。カレーにもよく合います。ほかにもカボチャ、パプリカ、ニンジン、じゃがいもなど大きめカットのまるで札幌スタイルスープカレーの野菜のような素揚げたちがごろりごろり。
そしてエビフライだよ。エビフライ、なめていました。まずはでかいんです。しかもパン粉の具合が実に良く、単独、単品で戦える実力があるなあ。
ああ、これはいい。
揚げ物をカレーに乗せる時はソースが欲しくなるわたしなんですが、ソースいらずの美味しさでありましたた。これいい、スキ。
あまり言わないように我慢してましたが、どうにもこうにも、やはり渋谷文化村のそばにあった「リトルショップ」を思い出してしまうなあ。魚介の出汁強く味わいの土台を作り、甘く仕上げた上でそのあとに辛さを乗せるような作り。今は無くなってしまったあのお店を彷彿とさせる味。そして現在これと同じようなカレーはほぼないと言っていいのではないかしら。貴重な味だと感じます。
本当に個性的な味で一度食べるとどうにもクセになってしまうんです。凝っているけど凝りすぎていない、寸止め感があると思う。だからまた食べたいがあるのかもしれないな。
とにかくスプーンが止まらないんです。
ああ、また早々に尋ねてこなければ。