なぜこんなところに、という場所でした。入らざるを得なかったのです。秩父にいました。
カレーですよ。
秩父名物といえばわらじカツに豚みそ丼、みそポテトときます。いやしかし。
本当の名物はセメントです。武甲山の石灰岩を原料としたセメント。首都圏から一番近い鉱山であり旧秩父セメントが戦後の昭和東京の都市開発、新幹線や首都高などの建設を支えたといっても過言ではないでしょう。未だ秩父太平洋セメントがこの地にあって大正時代から続く秩父産セメントの歴史を刻み続けています。
秩父太平洋セメント本社/工場の広大な敷地の脇、踏切があるんです。察しの通り貨物線。セメントの輸送のための電気機関車が踏切に入ってくるのをこの目で見ることができました。貨物列車、好きだなあ。貨車の列はおよそ20両ほどかな。電気機関車が牽引していました。そもそも秩父鉄道の筆頭株主は秩父太平洋セメントだったはず。
さておき、路肩にクルマを停めて引き込み線や貨物列車をながめてすごし、では、と走り出します。あ、あれ?走り出してすぐ「カレー」の文字が視界に飛び込んできました。秩父太平洋セメント本社向かいにあるカレー専門店、
「カレーのすーさん」
です。うむ!迷うことなくウィンカーを光らせて店前の小さな駐車場にクルマを滑り込ませます。
小さくシンプルなお店です。うん、これで十分。落ち着いた空気があるりました。店主おひとりでまわしてらっしゃる様子。うっかりと1000円札1枚しか財布になくて、コンビニへ下ろしに行くかと思ったんですが1000円ぴったりのメニューもありました。
では今日はそれで行こうね。
「ポークカレー」
をください。
ご店主がいい感じで気楽に話しかけてくれます。こちらもぼそぼそと返してリラックス高まる感。いいな、こういう感じ。快適だな。さあ、カレーの時間だよ。
このカレーライスがすごかったんです。濃厚のひとこと。何気なく入ったお店でこういうのに当たりとびっくりするよねえ。ジャンル分けで言えば欧風ということになりましょう。ここのところあたし、欧風カレーづいています。
欧風カレーではあるのですが、向いている方向としては家庭のカレー、そう思います。おうちカレー的なアプローチで欧風方面に向かっています。意外とこういうの、見かけないのよね。いい落とし所だなあ。甘く、しかしあまり複雑になりすぎないのがいいね。楽しいバランスです。
お店の立地を考えてもこれ以上難しくしてはいけないだろうし、その中で多くの人が好きであろう方向の甘口、欧風を体現していると感じます。こういうカレーこそ価値があるんだよ。都市部でクセのあるカレーを作る、ちょいとおもしろくやっているお店にはこういう感じは考えつかない着地点じゃないかなあ。この場所に店を構えて初めて分かるんじゃないかなあ、そういうの。
最近のわたしはこういう感じのカレーライスを探し歩くことが好きなのです。
地域性を背骨に持った郊外のカレー店。大事だと思うぞ。そういうお店達を心から応援したいです。