ちょいと泣けてきた。歳をとると涙もろくなるというのは本当らしい。柏、逆井にいました。
カレーですよ。
わかってはいるんですが、近くに来ると長期休業中の「咖喱夢」に足が向きます。店頭の貼り紙になにか変化はないだろうか。もしかして再開していないだろうか。気になって立ち寄ってしまうんです。
わたしには「かしわカレー図鑑」の波木編集長という強い味方がいるんです。だから彼女に聞けば良いのだけれど。お仕事でよくここを通りかっている「タケイファーム」の武井さんにお知らせをもらうお願いをしてもいいかもしれないけれど。しかし、こういうのはいつでも自分の目で確かめたいんです。
アップダウンがある細くうねる1車線道路を辿ってゆくと、
「咖喱夢」
に辿り着きます。「あっ!」と声が出てしまった。シャッターが開いているじゃないか。もちろん営業中ではないんです。しかし、入り口のシャッターが1枚だけ確かに開いているんです。いそいでクルマを寄せてみます。店頭に奥様がいらっしゃいました。
「しばらくお休みなんですねえ」と声をかけると頷いてくれた。そうだ、という顔で電気の消えているくらい店内に入っていく奥様。すると御店主=社長が出てきてくれたんです。驚いたなあ。呼んでくださったのか。なんとうれしい!
よかった、お元気そうだ。胸を指さして「ちょっとからだこわしちゃってね」とおっしゃる。「でも、そのうち良くなったらまたお店あけるんですよね?」と期待を込めて聞いてみるとうなずいてくださったのです。こちらの胸の中でも何かがパチンと弾けて「ゆっくりでいいです。でも、ずっと待っていますから」というのが精一杯。
社長が「ちょっとまってて」とおっしゃってシャッターの中に引っ込みます。なんだろう、と思っているとレトルトカレーを持って戻ってきました。「はい、これ」と手渡してくださる。なんといっていいのだろう。とにかくうれしくて、胸がいっぱいになります。「お店にお邪魔したときにも何度かこれ、買ってます。おいしくて大好きで、、」としどろもどろになって。そうやってしゃべっていないと涙が出そうだからね。
「ありがとうございました。再開を心待ちにしています」など、やっとのことでお礼やら何やらをもごもごと口にしてクルマに戻りました。急いで発進させました。恥ずかしくて顔を見られるのが憚られたから。うれしさと切ない気持ちですごい表情をしていたに違いないから。半べそでクルマを走らせました。ただもう、うれしい。そんなに数多く通ったわけでもないはずなんだけどな、この人、この場所、この店が愛おしくて仕方がないんです。
わたしはそれからそのまま2日ほど家を空けていました。帰ってきた翌日にいただいたカレーを食べました。カレーは非常な真面目に作られたものです。
甘くしないタイプの欧風。欧風というよりも洋食レストランのカレーライスと呼びたいチューニング。きちんと必要な分だけ辛く、切れ味がある実直なやつです。牛肉エキスたっぷりでラードが厚みを作っています。肉も悪くないのが3〜4つほど入ってるな。食べ進むとトマトの存在感が強くなってくる楽しさ。満足感が高いです。
すこし辛いカレーライスらしいカレーを食べたい時にとても重宝するひと袋。よいカレーだな。
よいカレーである以上に、よい人に作られたものなのだと知って余計においしく、余計に一所懸命味わったよ。
作り手の想いのこもったものは世に数多いでしょう。しかし、受け手の「作り手の想いを拾い上げる力」も必要で。それを自身が忘れぬようにせねば、文章なぞ書けないと思っています。神はそこかしこに宿っているのが、八百万の神のいる国、ここニッポンなのだから。