ハンバーグが食べたかったんである。しかしカレーも食べたいんだよ。比較的簡単に叶いそうな望みではあると思うんですが、さりとて「びっくりドンキー」でお手軽に、ではダメな日もあるわけです。
カレーですよ。
いや、びっくりドンキーは大好きなんだけどね、むしろ積極的にびっくりドンキー行きたい派なんですが。でもその日は「そうじゃあねえんだよなあ」な気分だったわけです。さて、どうするか。思い出したのはハンバーグ特化でしかもカレーがスペシャルなお店。そうだそうだ、あるじゃないすごいやつが。辛いやつでキメようそうしよう、決めた。ハンバーグと特別なカレーの異色合体。柏方面へゴーだ。
なかなかあんなスペシャルなお店はないと思います。なにしろあの黒くて辛いカレーとハンバーグが合体するんだからね。ちょっと考えてもあり得ない、やっちゃいけない画づらです。しかし柏ならそれが叶うんだよ。だってさ、ご存じ柏は「神政カシミール帝国」であるから。上野の初期発生の太古の昔を越えてカシミールカンブリア爆発が起こった地。そして向かうは北柏駅前。
「洋菜亭サァティーラブ」
は洋食のレストランです。
ここがまったくもってありがたいお店なのです。柏駅前の繁華街とは正反対の渋めのローカル駅、北柏駅の小さなロータリー。その向こう側に「洋菜亭サァティーラブ」があります。駅のデッキからその看板が見えるんですよ。南口は閑散としており駅前で頼れるお店はわずかに数軒。その筆頭がここというわけです。なのでランチどきなどなかなかに混み合う盛況ぶり。地元ローカル店の温かい賑わいを感じられてうれしくなります。
店内はむかしゴージャスな感じの喫茶店風。ボックスシートがメインとなっており、おひとり様が使いづらそうなイメージもあるかもしれません。しかし大丈夫。窓際には8人が座れる楕円形のカウンター席が用意されています。なかなかに快適な席なのよ。そこに腰を据えました。
横にある飾り棚には店名の由来と足並み揃えるようにクラシックな飴色の太めのウッドフレームが美しいウィルソンのテニスラケットが飾ってありました。とてもいい感じだなあ。
こういう場所こそわたしが知りたいお店なわけで、好みにぴたりとくるんだよ。「地元の良い店」というオーラ、いい空気が店内に流れています。いつぞやここに連れてきてくださった「かしわカレー図鑑」の波木編集長には大変な感謝をしています。
さて,注文は迷わずの、
「カシミール風ハンバーグ」
です。セットはA定食としました。ごはんとパンが選べます。こういう時は振り切ってパンを選ぶという選択もありだとは思うんですが、本日はハンバーグに正しく合わせたい白ごはんと決めたよ。
やってきた「カシミール風ハンバーグ」。うんうん、いいね。一度食べたことがあったんですが久しぶりなのでなんだか新鮮。まず洋食として正しき良きビジュアルでやってくるのがうれしいな。目玉焼きがとてもきれいにつるりと仕上がっていて感心させられます。
丸ごといっこやってくるアルミホイル包み焼きのジャガイモ、これが素晴らしいんだな。一度解体した上でうらごしして整形し直したのではないかと疑ってしまうような、口中で滑らかつややかに感じさせる舌触り。なめらかとはこれはこのことか!と叫びたい。すごい仕上がりです。バターもたっぷり喜びたっぷり。おやつでもういっこ、食後に出してほしいわ。
ほかの付け合わせの仕上がりもうれしいもの。コーンは山盛りで目玉焼きはきちんと火を通してあってとろけさせないクラシックな仕上げ。しかも大きなハンバーグを覆い尽くすサイズでね、うれしくなります。
そう、ハンバーグの大きさも特筆なんです。ケチなこと言わずにしっかり大きく肉肉しく食べ応えたっぷり。これはうまいなあ。ツナギででケチっておらず肉肉しいんです。難しくしないシンプルな味付けと相待って肉を、ハンバーグを食べる喜びひとしお。いやたまらない。
これをね、小さなソースココットに注がれたカシミールカレーに浸して食べるのですよ。なんというか、こんなことしていいのか、と腰が引けるような神(上野にいる)をも恐れぬ所業を強要されるのであるよ。ちょっとこれもう、たまらない体験だよ。
面白いのはここからです。カットしたハンバーグ、なんども黒いカレーに浸すわけですがその度にカレーソースの中に滲み出る肉汁でカシミールの辛さとエッヂが懐柔されていくんです。こういう体験は滅多にできない他にはないもの。
そしてここでは、この皿の上ではカシミールはあくまで脇役なのです。ハンバーグを引き立てるために舞台のセンターからすこしだけ横に退いてて立っているカシミール。あなたのそんな姿を初めてみたよ。ステージ中央はもちろんハンバーグ。ハンバーグを主役として立てているのであるぞ。この面白さといったらないわけです。
カシミールカレーが主役を張れない一食。こんなのはどこにもないはず。
「カシミール王朝=柏」ならではなんであるぞ。
まったく楽しい食事の時間だったなあ。さて、こっからどうしよう。どこいこう。