
君津まで来たんですが「山麓」が閉まっていました。特に張り紙もなく、営業時間も間違っていないね。特に珍しいとは思わないです。
こんなことはよくあるからね。
カレーですよ。
豪雨の中、木更津、君津まで走ったんですが特にいろいろ思わないんですね、これが。こんなもんだろうって。とはいえ場所によってはなかなか代替えを探すのが大変、という地域があって、君津はそういう場所だったよね。


例によってヘイセイニッポン、どこにいてもインド料理ならいくらでも代替えが効くわけですが(優劣はあれど、です)、そういうものではないカレーを欲していました。それじゃ、房総半島を太平洋側に出ることに決めました。あそこだ、鴨川のあそこに行こう。
「ライバック」
の料理はいつ何時行っても期待を裏切ることはないからね。


あいにくの天気でした。夜半にかけて豪雨とは聞いていたけど、こりゃあなかなかに厳しい。カーテンのように何重にも雨の幕のようなものが強い風に揺れて視界が悪い。気をつけないとね。速度を落としつつも急ぎ足。安全運転を心がけます。つまらぬ事故でカレーがお預けは馬鹿らしいから。東京湾と太平洋岸、意外や小一時間です。

「ライバック」は鴨川・江見吉浦の海岸沿いを走る国道128号線沿い。海が目の前なのですがちっとも昼間に来ないのでその展望がどんなものかを知らないんです。まあ致し方ない。今夜は若店主が一人でした。親父さんは休んでらっしゃるのかな。若店主も腕ある男だからまったく不安がありません。


ここで気がついたんです。ああ、いかんな。ポケットの現金、少ないぞ。カード類、電子決済とか使えたっけか。トイレに行くときにレジを一瞥すると小さな端末と決済の可否がわかる表示がありました。よし、大丈夫。それで、手持ちの現金で足りる程度に控えめに頼んだ注文にサラダとミネストローネを追加します。
これで心穏やかに夜の食事を楽しめるな。カレーは
「野菜ゴロゴロカレー」
としました。これ好きなんです。

ここは素晴らしいレストラン。どのメニューも〇〇カレーと銘打ってありますが、だまされちゃいけない。これらは「カレー」という日本人が親しみやすいフォーマットを使ってカレーカテゴリーに押し込んであるだけであって、実は本来「季節の野菜ソテー ソースがけ・カレー仕立て」、などいうものではあるまいか、なぞ思うんですよ。
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実際そういう料理だし、そういう素晴らしいものです。つまりは西洋料理に端を発するスタイルとお見受けできます。なのにカレーライス価格なんだよなあ。心配になるよまったくもう。
美しくもボリュームを感じる見た目です。野菜の種類もさることながら、カットが大きく食べ応えと共に見た目からの脳への入力の強さがあると感じます。野菜を食べるのだな、とまず脳が反応。実際その量は多く、大変満足感が大きいんです。しかも野菜たち、きちんとひとつひとつに手が入っているのがわかります。ここに適切な料理方法を選んで施してある、という言い方で正解なんじゃないかな。


パプリカは大きく、身が厚いもの。食感からの満足が強いんです。しかも甘味も特筆。こりゃいいね。シイタケ、これはソテーかはたまたフライか。油はキツくなく実に風味が良いんです。もう少し、あと2切れほど欲しくなります。ジャガイモなど「これ!これが西洋料理のジャガイモ!」と膝を打つ仕上がり。


粉吹きとボイルの中間くらいのイメージかな。特筆はナス。紫色の薄皮の袋に入った液体だ、これは。それくらいとろりと仕上がって恥ずかしながら喉から唸り声がこぼれてしまう。旨い。ものすごく旨い。これはもうどれもこれも、カレーを越えて野菜料理になっているなあ。


これらをスパイシーで濃厚なカレーソースに少し浸しながら食べていくんです。もう少し何か表現できないものかともどかしくなるくらい旨いんですよ。太い旨みは西洋出汁から。そこにスパイスがきちんと機能する形でインストールされています。インストールからのインテグレート、かな。そうかも。


フォンであろう西洋出汁も、タマネギもスパイスも、突出ではなくすべての要素がこのカレーになるために仕掛けられた要素であってそれが統合されたのが結果としてのライバックのカレーソース。面倒な言い方で申し訳ない。すごいものだと思っている、ということです。

「カレー」という言葉で済ませてしまうのは危険だし、逆の角度から言えばカレーを素晴らしい地平に引き上げる役もするようなカレーソースです。そりゃあ鴨川までクルマを走らせる甲斐があるってもんだよ。今日もなんともいい時間になりました。皿に没頭できるお店はいいお店だよね。


さてあとは、嵐の深夜の山道との対峙です。そういうの、けっこう好きなんだよね。
